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Tableau、新型コロナウイルスの危機からビジネスを再始動させるため、データ分析と可視化の重要性を解説

 Tableau Software(以下、Tableau)は6月17日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に関連するメディア向け説明会を開催した。この説明会の趣旨について、同社 カントリーマネージャーの佐藤豊氏は、「日本の社会や経済がより良い方向に向かって、以前より強固に成長するよう、データを用いていかにサポートできるかを説明したい。危機的状況下ではデータが頼り」と述べた。

Tableau カントリーマネージャー 佐藤豊氏

 現在、データのビジュアライゼーションは、日常的に使われている。COVID-19対策においても、地域別の感染者数、死亡者数、回復した人数といったデータをグラフなどでビジュアライズし、政府/自治体、研究機関、メディアが発表している。

 COVID-19対策の対策において、データのビジュアライゼーションは、よりコモディティ化した。感染リスクを緩和するためのソーシャルディスタンスを行動に変えるなど、データから状況を読み取り、人々のより良い行動に変えていくため、データのビジュアライゼーションが重要な役割を果たしている。

 困難な状況下において企業を強固に成長させるには、「会社の安定化」「事業の再始動」「ビジネスの成長」という3つのフェーズがあると佐藤氏は説明する。

 今回のCOVID-19感染拡大など予測しない変化が起こった際、まずはビジネスを安定させるため、従業員の健康と安全を維持し、財務を安定させ、運用上の意思決定を行うためにデータを活用することが喫緊の課題となる。

 次に事態が収束に向かい始めたのであれば、最初のフェーズで整備された新しいデジタル環境で従業員をサポートする、あるいは顧客との新しいコミュニケーションをより活用してデジタルトランスフォーメーションを実現し、ビジネスを再始動する。

 そして、デジタル化が進んだ環境で事態収束後のNew Normal(新常態)にビジネスを適合させるため、これまでになかったような社会、もしくは顧客の行動パターンを常にモニタリングしながら、新しいアルゴリズムを使ってデータを活用し、データドリブンな企業へと成長していくという。

 「いかに信頼できるデータを提供し続けることができるかが、ビジネスの持続性・継続性に重要になってくる。事業体や組織ごとに置かれている立場は異なるが、これらのフェーズを経て、短期的、あるいは中長期的な目標を設定して経済を回復していくことになるため、Tableauはこの3つのフェーズを支援していく」(佐藤氏)。

困難な状況下で企業を強固に成長させる3つのフェーズ

 佐藤氏は「Tableauは、すべてのデジタルトランスフォーメーションは、データのトランスフォーメーションであるとマーケットに訴求していく。デジタルであるものすべてはデータを生み出す。このデータを活用することで、より良いサービス、顧客とのエンゲージメント、新しい製品などを提供することができる。あらゆるデータを材料として使えるようになったとき、良質な意思決定を迅速に誰もができるようになる」と説明し、データドリブンな意思決定ができるよう支援するTableauの施策やサービスを紹介した。

データ活用でビジネスの再始動を支援

 TableauではCOVID-19による影響から企業の再始動をサポートするため、「COVID-19 データハブ」を作成し、無償で提供している。ここではTableauのテクノロジーはもちろん、業界のリーダーやテクノロジーエキスパートなどの意見や忠告、Tableauのコミュニティで作成・共有されているビジュアライゼーション ギャラリーなどが提供されているという。

 COVID-19 データハブでは、これまでTableauを導入していない企業でもすぐにデータの分析を開始できるよう、ビジネス、医療、行政など特定の事業に向けたスターターキットを公開している。これらのスターターキットは、Tableauのパートナーや顧客の協力により開発されている。また、状況に応じてスターターキットは、今後も追加していく予定であるという。

COVID-19 データハブ
すぐに分析を開始できるよう、特定の事業向けのスターターキットが公開されている

 緊急事態宣言が解除され、収束するかに思えたCOVID-19は、再び感染者を増大させている。パンデミックをはじめとする緊急時には、意思決定のスピードをどれだけ上げられるかが重要であり、そのためには企業や組織は意思決定をこれまで以上に分散化させる必要がある。中央集権化されているトップダウンのアプローチだけではなく、チームに委ねられた意思決定も可能にするには、個々の従業員がデータを活用して、状況を把握するためのツールやスキルが必要になる。そのためTableauでは、ユーザーのデータリテラシー向上を支援するため、90日間無料でeLearningプログラム「Tableau eLearning」を提供している。

 また、セールスフォースグループが展開するSalesforce Careプログラムのひとつとして、SMB向けに10ユーザーまでライセンスを90日間無償提供している。さらに、知識や知見を共有する「Tableau on Tableau」では、Tableau自身がビジネス再始動のために実際に使用したダッシュボードをもとに作成したケースを公開しているという。

SMB向けに10ユーザーまで90日間無償のライセンスが提供されている

データ活用によるビジネスの再始動事例

 実際にTableauによるデータ活用が、どのような効果をもたらすのかについては、国内外の事例がいくつか紹介されている。

 例えば小売業であれば、購買者、購買行動、市場動向などをトラッキングしてダッシュボード化したり、消費自体をカテゴリーに分類して営業施策のインサイトを得たりといった活用がされている。ある日本の小売業では、COVID-19の影響によって店舗を2カ月間閉店せざるを得ない状況に追い込まれ、社内業務の多くもテレワークにシフトしたという。しかし、Tableauによって可視化されたデータ分析によって、施策をこれまで以上にデジタルにシフトさせ、オンラインショップの売り上げを2倍以上増大させているとした。

 Slalom社は、病院のリソース管理をサポートするスターターキットを開発している。COVID-19の陽性患者数、感染を感染を調査中の患者数、医療リソースの利用状況などをビジュアライズすることで、適切な意思決定を可能にするという。「これは、シカゴ大学医療センターにおけるSlalom社との共同開発事例で、日本の医療機関でも参考にできる。現在患者が集中治療室にいるのか、手術中なのかなどCOVID-19の感染者が病院内のどこで治療中なのかを正確に把握できる。また、病院の各ユニットにおいては、利用可能な病床数。必要な看護師数、対応可能な看護師数、割り当てられていない看護師数など医療リソースの状況も追跡できるようになっており、医療状況の改善に貢献している」(佐藤氏)、

Slalom社は、病院のリソース管理をサポートするスターターキットを開発

 一般市民に情報を提供する必要がある公共行政機関での活用としては、米国カリフォルニア州保健福祉省の事例が紹介されている。同省では州単位・郡単位でのCOVID-19 の症例に関する統計を表示。さらに、州の医療システムに関するデータを表示するダッシュボードも作成し、感染を抑止するためステイホームの指示をだすかなど意思決定を行うために役立てているという。

カリフォルニア州保健福祉省での活用事例

 100年以上の歴史をもつ信用組合であるSt. Mary's Bankは、COVID-19の感染拡大において全支店での銀行業務を停止せざるを得なかったという。しかし、危機的状況においては政府もさまざまな施策を打ち出しており、連邦資金による中小企業向け助成金が提供されることになったことから、商業ローン申請量が爆発的に増大。そこでSt. Mary's Bankは、Tableauを使って、申請者の全体的な財務関係を一目で把握できるビューを作成し、迅速にサポートできるようにした。その結果、窓口のドライブスルー化を実現し、ソーシャルディスタンスを維持しながらの窓口業務を実現している。

St. Mary's Bankでの活用事例

 国内の大型事例としては、ヤフーのCOVID-19に関する取り組みを、同社 執行役員 CDO テクノロジーグループ データ統括本部長 佐々木潔氏が紹介した。100を超えるサービスを運営しているヤフーでは、日々さまざまなカテゴリーのデータが膨大に生成されている。また、これらのデータを活用し、オススメのニュース提供、興味のある分野や商品の広告配信など、次のサービスの提供にもつなげており、データが事業のベースとなっている企業でもある。

ヤフー 執行役員 CDO テクノロジーグループ データ統括本部長 佐々木潔氏

 アナリストやデータサイエンティストによるCOVID-19に関するレポートを、2か月で30以上公開しているヤフーは、4月3日に東京23区の往来者数推計データ・オープンデータとして期間限定公開し、次いで4月20日に47都道府県・主要都市のデータをオープンデータとして公開している。このデータによって、自粛要請や緊急事態宣言によって、実際に人の往来は上がったのか下がったのか、想定通りになっているのかなどの状況を把握することができるようになっている。

 さらに、より多くの人にこのデータを使ってもらえるよう、Tableau Doctorの支援をうけてビジュアライズし、Tableau Publicに「都道府県における往来量分析」ダッシュボードとして公開している。このダッシュボードでは、都道府県別の「往訪(go out)」「来訪(come in)」情報を視覚的に把握可能で、平日や祝休日でのフィルタリングもできるようになっている。このダッシュボードは多数のメディアで取り上げられたほか、SNSでも多くの反響が寄せられたという。

 また、Tableauとの取り組み以外でも、ヤフーはデータソリューションとして、生活者の興味関心を可視化する「DS.INSIGHT」や、より深い分析を実施する「DS.ANALYSIS」といったサービスも提供している。

 DS.INSIGHTは、ヤフーの保有する行動ビッグデータ(検索と位置情報)を分析できるデスクリサーチツールで、時系列キーワード(指定したキーワードの前後に検索しているワード)を可視化できるという。例えば「DIY」を調べている人は、2カ月前に「キャンプ」や「ストーブ」関連について検索している傾向があり、2カ月後には「木材」や「工具」関連が検索されていることから、すでに何かを作り出していることが想定される、といったことを読み取れるとした。

 DS.ANALYSISは、ヤフーのビッグデータをデータサイエンティストが分析し、企業や自治体の課題を解決するサービスだ。都道府県や政令指定都市には期間限定で無償提供しており、政策や状況確認に利用されている。すでに対象自治体は90%以上の申し込みがあるという。