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富士通、浜松市役所の支出業務にAIを活用する実証実験を実施、年間で最大約1597時間を削減可能に

 富士通株式会社は20日、静岡県浜松市と共同で、年間約30万件におよぶ支出命令伝票を確認する市役所の支出業務における決裁・審査にAIを活用する実証実験を2019年6月から12月まで実施し、支出業務に関わる市役所業務全体で年間最大約1597時間の業務時間削減が見込めることを確認したと発表した。

 浜松市役所では、事務執行に必要な現金の支払前に金額や内容をチェックする支出業務の審査において、年間1万件を超える命令の差し戻しが発生しており、その作業負荷が課題となっていたという。

 この課題を解決するため、富士通は浜松市と共同で、株式会社富士通総研と株式会社PFUの協力のもと、浜松市の過去の支出命令伝票をAIに学習させることで、AIが請求書の検出や内容分析を行い確認項目および不備を自動検出する仕組みを開発し、浜松市役所で実証した。

 実証実験では、ディープラーニング(深層学習)を用いて印鑑の印影を自動検出する富士通総研の物体検出技術と、帳票内の情報を自動検出するPFUのAI-OCR技術を組み合わせ、伝票や請求書の確認項目および不備を審査部門の確認前にAIが検出。その結果を活用して、起案直後にシステム上で起案者や決裁者に通知することで、起案部門決裁と会計課審査間での差し戻しの発生を防ぎ、決裁および審査業務を効率化する仕組みを構築した。

 実証の結果、AIが90%以上の精度で、起票された伝票と請求書の確認対象項目を自動検知することに成功。伝票起票部門での再起票や再決裁の業務が不要となり、年間約726時間の業務削減が見込まれるという。

 また、これにより、会計課の出納審査グループにおける出納審査業務においても年間約4600件の不備伝票への対応が不要となり、年間約871時間の削減が見込めるため、支出業務に関わる市役所業務全体でみると合計で年間最大約1597時間もの業務時間削減につながると説明。決裁・審査業務の一部をAIが支援することで、経験が浅い職員でも適正な起案・決裁を行うことが可能となり、不要な差し戻し作業を軽減できるとしている。

 浜松市では、検証環境で試験運用を行い、費用対効果を確認した上で導入を検討し、AIの活用による市民サービスの向上、職員の生産性向上を図っていくとしている。

 富士通では、自治体職員の働き方改革(オフィス改革、テレワーク)の第一弾として、2020年度中に公共団体向けソリューション「FUJITSU 自治体ソリューション IPKNOWLEDGE」に、今回の機能の搭載を予定する。これにより、自治体業務のさらなる電子化運用の促進を支援するとともに、技術を電子契約業務全般に応用し、顧客のデジタルトランスフォーメーションの推進に貢献していくとしている。