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データ利活用の基盤を「Enterprise Cloud」を通じて提供する――、NTT Comがパブリッククラウド「Cloudn」を終了する理由

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は24日、2020年12月31日付けでパブリッククラウドサービス「Cloudn(クラウド・エヌ)」を終了し、企業向けクラウドサービス「Enterprise Cloud」へ統合すると発表。記者説明会にて、この詳細を解説した。

 それによると、パブリッククラウド領域では、海外のハイパースケールクラウド事業者がビジネスを伸ばしていることから、ハイパースケーラーとの協業を行うことを検討する。

 一方でプライベートクラウドについては、基幹システムのクラウド移行拡大など今後の拡大が見込めることもあり、企業のデータ利活用を可能とするプラットフォームとして、Enterprise Cloudを提供していく。

 「Enterprise Cloudでは、共有型、占有型の両方を提供し、共有型では仮想サーバーを提供。占有型ではSAP、ベアメタルサーバー、マルチハイパーバイザー対応などセキュアで高信頼な企業向けプライベートクラウドを提供していく」(NTT Com エバンジェリストの林雅之氏)。

データ利活用の基盤となるEnterprise Cloud
NTT Com エバンジェリストの林雅之氏。ちなみに、今回の発表会の会場にいたNTT Comのスタッフは、全員がCloudnのTシャツを着用して会見に臨んだ

 さらに先月発表した、データ利活用に必要な機能をワンストップで利用できるプラットフォーム「Smart Data Platform」と連携し、データ利活用を推進していく考えをあらためて強調した。

データ利活用の基盤へ

 NTT Comは、2008年、BizCityブランドでクラウドサービスをスタートしたのを皮切りに、2012年にCloudn、Enterprise Cloudブランドのサービスを提供開始するなど、現在に至るまでクラウドビジネスを広く展開してきた。

 「ビジネス開始時期から徐々にデータ利活用を中心としたサービスへと変化し、近年ではクラウドから企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支えるサービスを提供している」(林氏)。

 今回はパブリッククラウドサービスのCloudnを終了し、企業向けのプライベートクラウドサービスであるEnterprise Cloudにビジネスを集中させる。

 これは、「国内のパブリッククラウド市場は大きくなっているが、ハイパースケールクラウドを提供する海外の事業者のシェアが拡大しており、こうした事業者と協業による展開が適していると判断した」(林氏)ため。

 一方で、「国内のプライベートクラウド市場は、2017年が4223億円規模から、2022年には2兆851億円規模に拡大すると予測されている。リフト&シフトで基幹システムのクラウド移行が拡大すること、DXの基盤としての活用が増加すること、インダストリークラウド対応など、複数要因が影響している。当社はデータ利活用を可能とするプラットフォームを、Enterprise Cloudを通じて提供していく」(林氏)との戦略を示した。

現在提供中のクラウドサービス

 ただし、パブリッククラウドサービス事業を完全に行わないということではなく、OpenStackを活用したEnterprise Cloudのサービスのひとつとして、共有型クラウドの提供は行っていく。

 Cloudnは2019年12月1日で新規申し込みを受け付け終了し、2020年12月31日でサービスを終了する。Cloudnを利用しているユーザーには、Enterprise Cloudへの移行に加え、シンプルなサービスを希望する場合にはNTTPCコミュニケーションズが提供する「WebARENA」への移行も勧める。

NTT Comグループのクラウドサービスポートフォリオ(予定)
移行先の候補となる「WebARENA」

 そしてNTT Comのクラウドビジネスは、データ利活用のためのサービスを中心とする。2019年9月に、データ利活用に必要な機能をワンストップで利用できるプラットフォームとし、「Smart Data Platform」を発表しているが、この軸となる機能をEnterprise Cloudを通じて提供し、ユーザーのDXを実現するためのデータ利活用ビジネスを進めていく。

 Enterprise Cloudを通じて提供する機能としては、次のようなサービスを提供していく。

 まずデータマネジメント分野では、NTTデータの「iQuattro」を活用したデータマネジメント基盤を提供。セキュリティ分野では、NTTテクノクロスの「匿名加工情報作成ソフトウェア」を活用し、機密データの利活用を促進するクラウド型匿名加工サービスを提供する。

 またストレージ分野では、米国のオブジェクトストレージサービス事業者Wasabi Technology,Inc.との協業により、データ利活用に必要な、大容量データをセキュアに補完できる「Enterprise Cloud Wasabi」を、業界最安水準で提供するとした。

 データインテグレーション分野では、Informaticaとの協業によってデータ統合サービスを提供する。DXを進める企業に対し、さまざまなデータを統合し、システム間連携を可能にしていく。

Smart Data Platform

 さらに、今後はVMwareのメニュー強化、ERP向け機能の強化、ディープラーニング(深層学習)向け基盤強化を行うことを計画している。

 「基本的には接続、保管基盤、保管場所、データ保護などをワンポリシーで提供することが基本だが、お客さまはさまざまな種類のデータを持っている。データの種類に応じた組み合わせが必要になる。さらに、データの蓄積場所、セキュリティ対策状況などを把握する必要があるので、データの特性に応じた対応をしていくことができるプラットフォームを提供する」(林氏)と、ユーザーの要望に応じたサービスを提供できる点を強みとしていく。

今後の展開について