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富士通、ストリームデータ処理基盤「Stream Data Utilizer」で自動車ビッグデータの活用を加速

 富士通株式会社は8日、商用車やコネクテッドカーから収集可能なデータをサービス化する際に利用できるストリームデータ処理基盤「Stream Data Utilizer」の提供を開始した。

 これまではサービスごとに別個に開発されてきたシステムを、各社で利用できるシステム基盤として提供する。

 2018年に富士通研究所が開発した、データ処理を継続しながら処理内容の追加や変更ができるストリームデータ処理技術「Doracena(ドラセナ)」を実装。開発側にとっても運用する側にとっても煩雑な、ストリーミングデータ処理をスムーズにしている点が優位点となっている。

 自動車会社、保険会社、交通情報提供会社などをターゲットに、日本だけでなく北米、欧州なども対象としてビジネスを進める計画だ。

モビリティデジタルツインを実現するシステム基盤

 富士通では新サービスを開始する背景として、マルチセンサーを搭載したコネクテッドカーが急増し、自動車発信で上がってくるデータが急増していること、さらに自動車メーカーのデータ連携により活用できるオープンデータも増加しており、これらを活用して予測データとするなど、CASEサービスとしての価値が拡大していることなどを挙げている。

 富士通 Mobilityシステム事業本部プラットフォーム事業部 シニアディレクターの野村祐司氏は、「当社が提案しているのは、刻々と変化する車両、道路など実世界の情報を集め、デジタル世界上にリアルタイムに再現し、分析、予測といった活用を進める『モビリティデジタルツイン』。現在、モビリティサービスは故障検知や運転診断、バッテリー劣化といったAutomotive DX、交通管制や事故解析などMobility DX、まちづくりやエネルギー、公共サービスといったUrban DXと大きく広がっている。それをリアルタイムサービスとして、質を上げて提供する」と説明した。

富士通 Mobilityシステム事業本部プラットフォーム事業部 シニアディレクターの野村祐司氏
モビリティサービスの広がり

 新サービスのStream Data Utilizerは、こうした提案を実現するシステム基盤だ。車両から上がってくるデータに加え、信号など各データとその関係性をリアルタイムに処理し、さらに新たに処理内容を追加、変更することができる。

 「オープンソースなどで自動車データなどを活用するシステム基盤はほかにもあるが、ストリーミングデータは作る側にとっても、運用する側にとっても処理が煩雑になる。その煩雑さを感じずに利用できるシステム基盤であると同時に、プラグインを途中からでもアドオンできることが、Stream Data Utilizerならではのメリットとなる」(富士通 Mobilityシステム事業本部プラットフォーム事業部 シニアマネージャーの井上大悟氏)。

富士通 Mobilityシステム事業本部プラットフォーム事業部 シニアマネージャーの井上大悟氏
Stream Data Utilizerが実現するモビリティデジタルツイン
Stream Data Utilizer

 ベースとなっているのは、富士通研究所が開発し昨年発表したストリームデータ処理技術のDracaena。車両1台、歩行者1人などを1単位としてオブジェクト管理が可能で、オブジェクト単位にてデータ処理を定義・管理することができる。オブジェクト同士の関係性から、新たなオブジェクトの生成を行うことや、プラグインを組み合わせることで効率的な開発が可能となる。

 この技術的な特徴から、オブジェクトのデータ管理では、実世界の人やモノごとにデータを管理。例えば自動車のIDをキーに、そこからさまざまなセンサーのデータを項目として追加することができる。

 データ処理のプラグインは、オブジェクト単位にデータ処理プログラムを定義することができる。例えばハイブリッド車というグループの平均的な速度を算出するといった使い方が可能となる。さらにプラグインの発展系として、道路別データとしてその道路を走る車の平均速度を算出するといった使い方できる。

データ管理(オブジェクト)
データ処理(プラグイン)

 新たなオブジェクト生成として、実世界のデータからほかのオブジェクトの状態を生成。車両情報から周囲の状況を再現することができる。

 プラグインの組み合わせによるパイプライン処理として、あるサービス向けに作ったプラグインを、ほかのサービスでも利用することができる。例えば保険会社が活用するために作成した、「急ブレーキをかける頻度」というプラグインを、道路保全を行う自治体などで急ブレーキが多い道を割り出すために活用するといった使い方ができる。

新たなオブジェクト生成
プラグインの組み合わせ

 プラグインの追加、変更は、データと同様にストリームデータとして配信できる。タイミングを合わせることで、サービスを無停止で切り替えすることが可能だ。

無停止でのプラグイン追加・変更

 「これまでは1つのシステムは1つのサービスに利用するものだったが、プラグインを柔軟に追加し、新サービスを作ることや、プラグインを組み合わせることで複数サービスを効率的に実現することが可能となる。オブジェクト同士の関係性の抽出も容易で、個々のオブジェクト情報からさまざまな観点で仮想オブジェクトを生成してサービスとして活用することも可能となる」(井上氏)。

デジタルツイン活用によって得られる価値
デジタルツイン活用によって得られる効果

 提供形態は、データ量に大きな違いがあることから、事前に要件定義サービスを実施する必要があり、そのための費用が100万円(税別)からとなる。

 さらにStream Data Utilizerのセットアップ料金が100万円(税別)から。プラグイン開発は富士通側で請け負うことも可能だが、ユーザー側で独自に行うこともできる。その後、基盤機能サービスをデータ量に応じて月額10万円(税別)から、プラグインサポートサービスは個別見積もりとなる。

 想定されるユーザーは自動車メーカー、保険会社、交通情報提供会社など。利用するデータは、現段階では商用車に搭載されているデータを活用しているが、今後、自動車メーカーからコネクテッドカーのデータを活用することも計画している。

 また、「富士通自身でサービスを提供することも可能だとは思うが、まずは自動車会社などでサービスを提供することを想定している」(野村氏)という。