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富士通研究所、購入を高めるマーケティング施策など、AIが最適なアクションプランを提案する新技術を開発

 株式会社富士通研究所は13日、富士通株式会社のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」の中核技術である「Wide Learning」を拡張し、最適なアクションプランを提案するAI技術を開発したと発表した。

 富士通研究所では、たとえばマーケティングの分野では、商品を購入する見込みが高い顧客を予測するためにAIが活用されてきたが、実際の現場では予測だけではなく、購入の可能性を高めるアクションの決定にもAIを活用したいという課題があると説明。こうした課題に対し、富士通研究所が2018年9月に発表したAI技術「Wide Learning」を拡張し、購入者の割合が高く、顧客数が多いセグメントとアクションの組み合わせを抽出する技術を新規に追加した。

 Wide Learningの従来の機能で大量に算出された重要度の高い組み合わせを比較して、その組み合わせに該当する数が多く、影響が大きいデータ項目を抽出し、再度組み合わせていく。たとえば、マーケティングでは、算出された数百個から数万個におよぶ複数の購入率の高い組み合わせを比較し、購入率を下げることなく、該当人数が増加するデータ項目の組み合わせを見つけていく。これを繰り返すことで、最も該当人数と購入見込み率が高い数個に絞られた組み合わせを見つけ、セグメントとアクションを特定する。

 また、データ項目の組み合わせを絞り込んでいく際に、「購入者の割合」「該当者の数」「抽出するアクションの数」など、それぞれ条件に優先度を付加することができる。これにより、ボリュームゾーンやニッチを狙うといった、現場のターゲティングの目的に沿ったアクションの抽出が可能となる。

 開発した技術については、富士通のマーケティングにおいて、従来より使用しているマーケティングオートメーションツール内の匿名化データ(属性21項目、行動履歴49項目、アクション14項目)を使用し、購入確度の高い顧客を増やすアクションを抽出する実験を実施。マーケティングの専門家が人手でデータ分析を行った場合に、14個のセグメントで顧客の17%をカバー、購入見込み率が平均55%となる複数のアクションを抽出したのに対して、開発した技術では3個のセグメントで顧客の47%をカバー、購入見込み率が平均92%となる複数のアクションを抽出できることを確認したという。

 この新技術により、重要な顧客を判断するだけでなく、最適なマーケティング施策までも自動で決定することが可能になるため、マーケティング業務の自動化が期待される。また、マーケティング分野以外にも、製造現場での不良品を減らすための機械の自動制御や、金融分野における債務不履行を防ぐための借入限度額の自動設定、ヘルスケアでは健康を維持するための運動や食事の提案など、さまざまな業務でのアクション決定の自動化を促進するとしている。

 富士通研究所では、2019年度中に開発した技術を用いて、富士通が主催するイベントの案内や製品・サービスの情報提供を自動決定し、顧客にとって最適な情報の発信を行っていく。また、2020年度には、インターネットでの広告配信を行う「FUJITSU Intelligent Data Service AD Drive 運用型マーケティングサービス」での活用を目指す。

 さらに、マーケティング分野だけでなく、ものづくり、金融、ヘルスケア分野などで、セグメントとアクションの関係を分析することで、効率的なアクション抽出による業務改善の実践を進めていくと説明。技術を追加した「Wide Learning」を、富士通のさまざまな製品・サービスに組み込み、2020年度にZinraiソリューションとしての提供を目指すとしている。