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富士通研究所がアイデンティティ流通技術を開発、オンラインの取引相手の信用判断に利用

 株式会社富士通研究所は4日、オンライン上の取引にかかわるサービス事業者や利用者に対して、取引相手の本人情報の真偽を判断可能なアイデンティティ流通技術「IDYX(IDentitY eXchange)」を開発したと発表した。

 第三者が本人情報の正しさを保証する分散型IDの仕組みでは、サービス事業者や利用者が悪意のある第三者と結託することで、経歴や資格の詐称を行えてしまう点が課題とされており、それを見破ることが難しいまま広く流通してしまうリスクも存在するという。

 また、この仕組みを利用するユーザー規模が膨大化していくと、サービス事業者や利用者、第三者がどのような人物であるかをさらに把握しづらくなるため、不正が行われやすくなる可能性もあるとのこと。

 そこで富士通研究所では、ブロックチェーンを用いた分散型IDの上に、「IDYX」のユーザーが取引を行った際に相手に対してお互いに行う評価と、過去の取引などから個々に構造化されていくユーザー間の関係性を使って、取引相手の本人情報の信用度と詐称リスクを分析する技術を開発した。

 「IDYX」では、取引によって発生するユーザーごとの評価を、トランザクションデータ(一連のデータ)として登録。ブロックチェーン上で、改ざん不能な分散台帳に評価を格納していくことにより、各ユーザーに対する信用情報の信頼性を向上させることができる。

「IDYX」による本人情報の流通の手続き

 また、ブロックチェーン上に共有された個々の信用トランザクションのデータから、「IDYX」のユーザー間の関係性が分かるよう、グラフ構造に変換する仕組みも備えた。これにより、何人のユーザーから信用されているか、どれくらい信用度の高いユーザーから信用されているか、といった点で重みづけを実施し、信用度スコアを付けていくことが可能。ユーザーが自らの本人情報を保証する第三者との間で、不正に評価を上げていた場合でも、グラフ構造の関係性から他のユーザーとの関係性が希薄であることなどが分かるため、詐称の可能性の特定可能という。

信用確認の画面イメージ

 加えて、ユーザーは一部の本人情報の開示だけで、それらの真偽を証明でき、取引を行えるとのこと。一方、取引相手にとっても、不必要な個人情報などを取得せずにすむので、安全かつ高信頼な取引を加速できるとしている。

 富士通研究所では、「IDYX」をデジタルビジネスを支えるアイデンティティの信用基盤サービスとして発展させ、金融をはじめとするさまざまな分野で実証を進めていく考えで、ブロックチェーン技術を用いたデータ活用のためのクラウドサービス「FUJITSU Intelligent Data Service Virtuora DX データ流通・利活用サービス」の新機能として、2019年度中の実装を目指すとのことだ。