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デル テクノロジーズが機械学習専用サーバーを発表、アクセラレーテッドコンピューティングを実現

 デル株式会社とEMCジャパン株式会社(デル テクノロジーズ)は4日、機械学習専用のサーバー「Dell EMC DSS 8440」を発表した。同日より販売を開始する。

 DSSシリーズは、デル テクノロジーズの汎用サーバー「PowerEdge」と基礎的な開発情報を共有しつつ、コンサルティングに基づいて、限定された顧客に販売されてきたものだ。これまでは一部の大規模スケールアウトユーザーに向けて提供してきたが、新製品のDSS 8440は、国内すべてのユーザーを対象に1台から販売する。

PowerEdgeとDSSの違いについて

 デル テクノロジーズ(デル株式会社) 執行役員 インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 製品本部 本部長の上原宏氏は、同サーバーを「機械学習用のモンスターマシン」と呼ぶ。それは、IDCが定義するところの「アクセラレーテッドコンピューティング」を実現したマシンであるためだ。

 そのアクセラレーテッドコンピューティングとは、CPUが担ってきた処理の一部を、GPUやFPGAなどの隣接するシリコンサブシステムへ委譲することで、アプリケーションやワークロードを高速化する手法のこと。上原氏は、「デル テクノロジーズでは、コンピューティング領域においてこのアクセラレーテッドコンピューティングに注力していく」と述べている。

デル テクノロジーズ 執行役員 インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 製品本部 本部長 上原宏氏
アクセラレーテッドコンピューティングについて

 DSS 8440は4U筐体の2ソケットサーバーだが、最大10基の「NVIDIA Tesla V100」が搭載可能となっている。Tesla V100は、画像認識や自然言語処理、気象モデルなどの機械学習で幅広く利用されているGPU。デル テクノロジーズ(デル株式会社) インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 製品本部 シニアシステムエンジニア 谷本剛氏は、このアクセラレーターにより「機械学習の処理能力を加速させ、学習時間が短縮できる」と説明する。

DSS 8440の製品概要
デルテクノロジーズ インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 製品本部 シニアシステムエンジニア 谷本剛氏

 2019年後半には、GPUとは別に、英Graphcoreの開発するAI専用プロセッサのIPU(Intelligence Processing Unit)にも対応する予定だ。IPUモデルは、最初は特定ユーザーに対して個別に提供する。なおDell Technologiesは、Graphcoreへの出資を4月に発表している。

 システム全体も機械学習に最適化されている。ストレージには、最大10本のNVMe SSD、SAS/SATA SSDが搭載可能で、内蔵ストレージのボトルネック化を抑止。また、最大8本のPCIe x16スロットが利用可能で、InfiniBandもサポートしている。

 冷却と廃熱にもこだわっており、10GPU構成でインテルXeonプロセッサの上位モデルを2基搭載しても、一般的なサーバー製品と同様、室温が35℃の状態でも動作可能だ。

 谷本氏はDSS 8440について、「機械学習やハイパフォーマンスコンピューティング分野で圧倒的な処理性能を提供する。利用状況に応じてGPUのスケールアップ構成が可能で、ストレージやアダプターの構成も要件に応じて選択の自由度が高い」と述べている。

DSS 8440の価値

 DSS 8440の価格は、最小構成となるXeon Silver 4116 プロセッサ×2、32GBメモリ、480GB SATA RI SSD×1、NVIDIA Tesla V100(PCIe、32GB)×4で、1940万7219円(税別)となる。

 なお、これまでDSSシリーズは米国が中心となってサポートしていたが、今回新たに日本にもDSSの専任担当者を設けることになった。その責任者は谷本氏が務めるといい、直販はもちろん、パートナーと協業した上で販売することも検討しているという。最適な提供方法は議論中だが、上原氏はDSS 8440の販売目標を「年間100台」としている。

 上原氏は、「DSSシリーズのように、顧客のきめ細やかなニーズに対応できるサーバーへの需要が今後ますます高まる」としており、「これからもデル テクノロジーズでは、汎用用途のPowerEdgeと専用用途のDSSとの二刀流サーバー戦略を推し進めていく」と述べた。