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富士通、Data×AIによって目的志向型ビジネスを実現するプロセス&フレームワークを発表
「富士通フォーラム2019」の注目展示を紹介するデモツアーも実施
2019年5月15日 06:00
富士通株式会社は14日、人の暮らしと産業を豊かにするデータ駆動型社会の実現に向けて、データとAIの融合的利活用(以下、Data×AI)により、顧客の目的志向型ビジネスの実現を支援するプロセスおよびフレームワーク「Design the Trusted Future by Data x AI」を策定し、グローバルに7月から順次適用していくと発表した。
同日に行われた記者発表会では、「Design the Trusted Future by Data x AI」を展開する背景や概要について説明した。また、この発表にあわせて、5月17日に東京国際フォーラムで開催する「富士通フォーラム2019」のデモツアーが行われ、AIやVR、次世代モビリティなどを活用した注目の展示をピックアップして紹介した。
今回策定した「Design the Trusted Future by Data x AI」は、データやAIの利活用が実業務適用に至らないという多くの企業が抱える課題に対して、顧客の目的達成に主眼を置き、業務実装と定着化による価値創出を目指すもの。これまで同社がグローバルで顧客と取り組んできたデータやAIを活用したプロジェクトから得たナレッジと、長年培ってきた業種・業務のシステム構築ノウハウをもとに、目的志向型ビジネスの実現に向けたプロセスとフレームワークを策定したという。
富士通 AIサービス事業本部長 兼 データ利活用推進室長の渡瀬博文氏は、国内企業のデータ活用の現状について、「テクノロジーの進化とコンピューティングパワーの向上にともないデータ量は急激に増え続けているが、企業が活用できているデータは限定的であり、信頼性への懸念も存在する。また、収集したデータを効果的に分析するのは容易ではなく、現時点でAIを実装できている企業は少ないのが実状だ」と指摘する。
「一方で、世界の成長企業では、目的や解決する課題を明確にしたうえで、データやAIを利活用し、ビジネス拡大を実現しており、経営視点から目的志向の重要性が高まってきている。そこで今回、Data×AIによって目的志向型ビジネスの実現を支援するプロセスとフレームワークを開発し、『Design the Trusted Future by Data x AI』として提供する」と述べた。
「Design the Trusted Future by Data x AI」では、データやAI、様々な技術を手段として捉え、目的達成に向けたプロセスとともに、ソリューションやシステムインテグレーションに適用可能な各プロセスのサービス・製品・先端技術を、フレームワークとして提供する。
具体的には、「Design the Trusted Future by Data x AI」のプロセスは、(1)目的志向設定、(2)データ準備、(3)データ利活用、(4)業務実行の4つのフェーズで構成される。
まず、目的志向設定フェーズでは、具体的な目的や課題を明確化し「Data×AI」による効果的な実現手段を仮説設計する。次のデータ準備フェーズでは、必要なデータに的を絞り、効率良くデータを収集・流通・蓄積。データ利活用フェーズでは、データ精製・分析・効果測定により価値を追求する。そして、最後の業務実行フェーズで、業務適用・最適化・定着化を行うことで価値を創出する。
このプロセスを通じて、データの利活用だけでなく、目的・仮説設定から定着までの全フェーズを支援するとともに、一部精度に課題があっても人による判断や作業と組み合わせて業務に部分適用しながら新たなデータ収集や最適化を行い、AIを学習・成長させることで確実な定着化を実現する。
これにより、データ不足やデータ資産の分散・増大、データ準備に要する時間、部分最適なプロジェクト推進などが原因で、「Data×AI」が実業務の適用に至らないという企業の課題解決を支援する。また、業務実行するうえで要となる「Data×AI」のセキュリティやガバナンスを考慮した運用設計により、持続可能な「Data×AI」を実現する。
「Design the Trusted Future by Data x AI」のフレームワークは、目的志向型ビジネス向けの体系として各プロセスに最適なサービス・製品・先端技術などのソリューションを適用することで、「Data×AI」を実現する。各プロセスで蓄積されたナレッジをリファレンス化し、顧客の目的に応じてカスタマイズしていくという。
フレームワークは、グローバルで実績のあるソリューションも含めて体系化されており、共通フレームワークで「Data×AI」を強力に推進する。また、世界中の研究開発拠点と連携し、すでに各国で実装が進みつつある先端技術群も各プロセスに積極的に導入する。これにより、長年のデータ・AI領域における基礎・応用研究での先端技術の適用をグローバルに加速していく。
フレームワークに体系化されている「Data×AI」のサービスおよび先端技術の一例としては、Fujitsu EMEIAが欧州で展開しているデータ利活用サービス、富士通研究所が開発した「Wide Learning」、欧州富士通研究所の新技術「LabelGear」を挙げている。
Fujitsu EMEIAのデータ利活用サービスは、ヘルスケア、セキュリティ、リーガル分野に特化したサービスで、顧客との共創を通じて定式化したデータ利活用のナレッジをもとにビジネスプロセスを高度化する。
富士通研究所の「Wide Learning」は、データから仮説をもれなく抽出することで、高精度な判断や新たな施策立案を支援する技術。欧州富士通研究所の「LabelGear」は、AI適用時に課題となるデータ整備を、データ解析を用いて効率化する技術となっている。
今後の展開について、渡瀬氏は、「今年7月から『Design the Trusted Future by Data×AI』の適用を開始し、5年後をめどに、全プロセスを適用したプロジェクト数で100件、個別サービス・製品・先端技術の提供件数で3000件を目指す。また、これに向けて、上流・プロデュース機能の強化を図り、グローバルで3000人規模の組織体制を構築していく。あわせて、エコシステムも拡充し、オープン戦略のもとスタートアップや成長企業との協業をグローバルで実施し、50社のパートナー獲得を目指す。さらに、社会課題の解決が見込まれる場合、外部連携も検討した起業推進を行い、3社を目標にスタートアップを立ち上げていく」との考えを示した。
富士通フォーラム2019の注目展示を紹介
なお富士通では、5月17日に東京国際フォーラムで「富士通フォーラム2019」を開催する。今年のテーマは「Human Centric Innovation:Driving a Trusted Future」で、展示会場では、AI、5G、製造、モビリティ、デジタルマーケティング、セキュリティなどの展示コーナーを設け、業種・業態を超えた顧客企業との共創事例を、各種テーマや業種ごとに紹介する。
発表会の後に行われたデモツアーでは、注目の展示として、「VRを活用した近未来のネットショッピング」、「デジタル店舗での買い物体験」、「AIを活用したリアル広告の効果測定」、「AIによる質量分析計データ解析」、「次世代モビリティ技術」の5つのブースが紹介された。
「VRを活用した近未来のネットショッピング」は、VRによる仮想世界とeコマースの連携による新たなネットショッピングを提案するもの。展示ブースでは、VRゴーグルを用いた仮想世界での商品紹介を行い、スムーズに購入につなげる購買導線のデモを体験することができる。具体的には、自宅のソファに座っている状態で、クマのぬいぐるみを仮想的に好きな場所に置いて、気にいればその場でECサイトに接続して購入するというデモと、セントラルパーク内を歩いている仮想空間の体験を通じて旅行を検討するというデモを紹介する。
「デジタル店舗での買い物体験」は、ICTと実店舗の融合による、消費者の新たな買い物を提案する展示となっている。デモでは、ショッピングカートにスマートフォンを設置して、アプリで商品のQRコードを読み込んで登録し、アプリに登録したクレジットカード情報でスムーズに決済する流れを体験できる。
「AIを活用したリアル広告の効果測定」は、富士通のAIを活用し、あらゆる角度から人の属性情報を把握分析することで、リアル広告の効果測定を実現する。展示ブースでは、既存のカメラ映像から、これまで測定できていなかったサイネージなどの注目媒体に対する注目度を測定し、評価するデモを行う。大型モニターを2台用意し、1台目は4パターンのCMを流し、ブースに集まった人たちを撮影した映像解析を行う。2台目は、CMを見ていた人たちの属性と、どのCMを興味深く見ていたかというデータをダッシュボードで表示する。
「AIによる質量分析計データ解析」の展示では、島津製作所が持つ質量分析装置ビジネスの課題についての知見に、富士通の持つAI技術の知見を組み合わせることで、世界初のAIによる質量分析計データ解析を実現した取り組みについて紹介する。実際に島津製作所の質量分析計を展示するとともに、日本酒など数種類の成分について自動分析しているデモを行う。
「次世代モビリティ技術」の展示では、バーチャルとリアルを連動させてシミュレーションや予測を効率的に行うデジタルツイン技術のモビリティ分野への活用を、デモや動画を通じて紹介する。具体的には、大量のIoTデータ処理を停止させることなく処理内容の追加・変更が可能な技術「Dracena」を活用し、車の位置情報や速度などの様々な情報に対して条件を指定することで、リアルタイムに交通渋滞予測を行い、その結果を地図にわかりやすく表示するデモを行う。