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日立とDFKI、作業者の身体負荷をスーツ型のウェアラブルデバイスで定量評価し、作業動作の改善点を提示するAIを開発

 株式会社日立製作所(以下、日立)とドイツ人工知能研究センター(以下、DFKI)は20日、スーツ型のウェアラブルデバイスを着用した作業者の身体負荷を定量評価し、身体の部位ごとに作業動作の改善点を提示するAIを開発したと発表した。

 開発した技術は、ウェアラブルデバイスのセンサーが計測した動作データを利用し、作業時にかかる身体への負荷をリアルタイムに認識、定量化するとともに、模範的な作業動作との違いを身体の部位ごとにフィードバックするといった支援を可能にする。

 作業者の危険防止や健康維持を支援するためには、作業中の労働負荷を把握する必要があるが、従来の固定カメラ映像を利用した方法ではカメラに写る範囲に計測範囲が限定されるといった課題があり、死角が生じる複雑な生産現場や屋外で安定的かつ定量的に作業負荷を評価することは困難だった。

AIによる作業動作認識と作業者へのフィードバックによる支援の流れ

 そこで、日立とDFKIでは、新たにスーツ型のウェアラブルデバイスにより計測した作業動作データを利用することで、作業時の身体負荷を定量評価し、動作の改善点を提案するAIを開発。日立とDFKIが2017年に開発した、眼鏡型デバイスとアームバンド型デバイスからのデータを定量化して「ネジ締め」などの作業内容を認識するAIを発展させたもので、日立の産業向け作業解析技術とDFKIのディープラーニング技術の融合により実現した。

 人間の主要な動きの識別に必要な30カ所を超える関節部位の動作を、ウェアラブルデバイスのセンサーで計測し、身体の各部位の状態認識モデルを個別に機械学習させたAIにより計測データを解析。各部位の状態が組み合わさった動作の計測データをAIにより認識することで、作業で身体にかかる負荷をディープラーニングを用いた時系列データ処理技術により定量化する。

 あらかじめ計測した模範作業の動作データと、作業者の動作データを、個別部位ごとに自動比較することで、重要な違いを生んでいる作業箇所と身体部位をAIが特定し、身体負荷への影響が大きい部位の評価のみを作業者に分かりやすく提示する。

 同技術を用いて重量物の持ち上げ動作について実験した結果、作業の身体負荷をリアルタイムに定量評価し、非模範的な動作に対しては腰や膝の動作が模範動作と大きく異なるといった情報の提示が可能なことが確認できたという。

 今後、日立とDFKIでは、技術を作業支援や危険行動防止に活用し、さまざまな現場における作業者の安全確保や健康管理、作業教育の効率化に貢献していくと説明。また、同技術は、身体の動作を測定し評価するAIとして、将来的にはスポーツ分野・エンターテインメント分野などへの応用も検討していく。さらには、これまでに開発した作業認識AIなどとも連携し、作業現場の生産性向上に貢献し、より効率的で働きやすい作業現場の実現を目指すとしている。

 また、技術については、4月1日~5日にドイツ・ハノーバーで開催される「HANNOVER MESSE 2019」のDFKIブースにおいて展示を予定する。