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応対トラブル発生を早期検知しコンタクトセンターでの待ち時間を短縮、富士通研究所が新技術を開発

 株式会社富士通研究所は20日、コンタクトセンターにおける通話中の応対トラブルの発生を、9割以上の精度で検知する技術を開発したと発表した。コンタクトセンターでの顧客とオペレーターの会話を、AI技術を用いて分析することで実現しているという。

 コンタクトセンターでは、オペレーター接続の待ち時間が顧客の不満に直結することから、オペレーターの稼働率向上は重要な取り組みとなっている。しかし、クレームなどのトラブルが発生すると該当する通話の応対時間が通常より長くなってしまうため、結果として、ほかの顧客の待ち時間が長くなる問題が生じているとのこと。

 こうした事態を緩和するためには、コンタクトセンターの管理者がその応対を把握し、早期に引き継ぐなどの高度なサポートが必要となるが、これを実現するには、応対時のトラブル発生を早期に検知する必要がある。

 現在は、会話を音声認識技術によってテキスト変換して分析することで、アラートを自動的に通知する方法が用いられているものの、顧客とオペレーターの声が同時発声された場合や、言いよどみ、文法から外れた発声の際には音声認識が困難なため、的確にトラブル発生を検知することが困難だったという。

 これに対して今回、富士通研究所では、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を用いて、顧客とオペレーターの自然な会話から応対トラブルの発生をリアルタイムに検知する技術を開発した。

 トラブルが発生した際の会話では、「~ではなく」「分からない」などの否定的なキーワードが多くなる傾向にあるため、これを検出用のリストとして活用。さらに、「sou」「naku」など、音素(音声言語の最小単位)の並びの傾向を認識することで、顧客とオペレーターの同時発声時や言いよどみなどにより一部のキーワードが認識できない場合や、「そうではなく」「そうじゃなく」といった多様な言い回しがある場合でもトラブル発生を検出できるという。

応対トラブル検知の技術概要

 また、これらのトラブル発生の際に特有な否定的なキーワード発声、会話全体の声の高さや大きさなどから判断したストレス状態を会話の一部の情報として検出。事前に学習されたディープニューラルネットワークに入力することで、トラブル発生の確からしさをスコアとして算出する。

 富士通研究所によれば、トラブルが発生した際の会話では、トラブル時の会話の特徴が通話の冒頭から顕在化する傾向や、全体の会話の中でもその特徴が多くを占める傾向にあるなど、特有の時間変化パターンがあるとのこと。

 そこで、算出した応対トラブル発生の確からしさのスコアの軌跡が、これらの時間変化のパターンと近いかどうかで、トラブル有無を判定する技術を開発した。スコアだけでは、ある程度の長さの通話から算出しないと応対トラブル発生を検知できないが、パターンと照合することで、通話開始からの経過時間が短い通話途中であっても、トラブル発生を高精度に検知可能になったとしている。

応対トラブル発生の確からしさのスコアの軌跡とトラブル有無の関係

 なお、富士通研究所が行った実際のコンタクトセンターの会話データ(442通話分)を用いた評価実験では、従来技術ではトラブル検知が困難だった顧客とオペレーターの同時発声などが含まれていても、通話中のトラブル発生に対して約91%と高精度に検知できることを確認しているとのこと。

 これを、オペレーターの稼働率が高いコンタクトセンターに適用した場合を試算すると、顧客の待ち時間を平均で約2割短縮でき、顧客満足度向上への貢献が期待できるとしている。

 今回開発された技術は、コンタクトセンター用の富士通のテレフォニー基盤において、AI技術を活用した応対トラブル検知機能として実用化を目指す考えだ。