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水戸市とNEC、自治体の働き方改革に向けてAIを活用した伝票処理自動化・内部統制強化の実証実験を開始

 水戸市と日本電気株式会社(以下、NEC)、NECソリューションイノベータ株式会社は16日、AIを活用し、市で取り扱う伝票処理の自動化による職員の作業効率化および内部統制の強化を図る実証実験を開始した。

 三者は、近年、自治体においては、少子高齢化に伴う歳入や労働力人口の減少などにより、業務の効率化や生産性向上が強く求められており、特に紙の伝票処理などは、これまでデータを手入力で行う作業が多く、職員にとって大きな負荷となっていると説明。また、自治体では、2020年に施行される改正地方自治法において、内部統制に関する体制整備や監査制度の充実強化などが求められることから、新制度への対応と職員作業の縮減の両立も課題となっているという。

 水戸市ではこうした課題に対し、実証によりAIを活用することで、職員の作業効率化を行うとともに、業務の全件チェックによる監査・内部統制の強化を行い、効率的でスピード感を持った行政運営、職員の行動改革を促進し、働き方改革を推進していくとしている。

 実証実験は、水戸市が保有する財務会計システムなどの業務システムで扱うビッグデータに対し、NECのAI技術群「NEC the WISE」およびNECソリューションイノベータの自治体業務ノウハウを組み合わせて、支払伝票の入力項目を自動判定するとともに、業務の全件監査を行う。

 伝票の自動入力による処理効率化では、財務会計システム入力時の人為的ミスを抑制するために、NEC the WISEの1つであるテキスト含意認識技術を活用し、財務会計システムに入力する支払伝票の件名から、市が定める費用科目や各種区分の自動判定を行う。

 自動判定により、現在職員が行っている年間の支払伝票処理(約15万件)において、職員が伝票を修正して再提出する作業や支払い手続き遅延の低減を目指す。昨年度一部のデータで実施した事前調査では、費用科目を97%の精度で、また、経験の浅い職員には判断の難しい入力項目である源泉徴収区分を98%の精度で、それぞれ判定できたという。

 全件監査による内部統制強化では、NEC the WISEの1つである異種混合学習技術などを活用し、行政事務システムのデータを分析することで、従来人手ではできなかった全件監査を実現する実証を行う。

 従来の監査業務は、紙の証跡をベースとしたサンプリング監査が中心となっていたが、これに対して実証では監査専用システムを構築し、データベース内の全会計データを日次で分析することで、処理遅延の警告や金額の異常検出などを行う。これにより、支払伝票の起票漏れや、手続きのミスを低減するとともに、財務会計データの異常検知による不正会計・不正経理の監視および抑止など、「予防的監査」や全庁業務の日常的モニタリングの実現を目指す。

 また、財務会計システムの過去データ分析による資金予測研究として、財務会計システムに蓄積された過去の支出実績データに対して時系列で分析を行い、予算編成や資金計画の精度を高める実証を行う。実証では、最新の時系列分析アルゴリズムを用いて、事業別の次年度予算額の最適値の推定や、所属別に翌月の支出額の予測を行い、事業計画の最適化を図る。

 水戸市とNEC、NECソリューションイノベータは、今後も職員の負担軽減による働き方改革と、適切な公費処理の両立を目指し、AIをはじめとする最先端のICTを活用した自治体サービスの実現に取り組んでいくと説明。また、NECとNECソリューションイノベータは、今回の実証を通じて、自治体が抱えるさまざまな行政課題を解決するソリューションの開発を推進していくとしている。