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NEC、従来比2倍の空調効率を実現するデータセンター向け冷却技術を開発
インド南部のデータセンターで性能実証を実施、総電力量を20%削減
2018年6月29日 14:19
日本電気株式会社(以下、NEC)は29日、データセンターにおけるサーバーの冷却効率を2倍にさせる、低圧冷媒を用いた圧縮放熱技術を開発したと発表した。
開発した技術は、液体から気体に変化する(相変化する)際に大きな熱が移動する現象を利用した冷却技術である、NEC独自の「相変化冷却システム」を高度化するもの。地球温暖化係数(GWP)が小さいとされる低圧冷媒を用いて、サーバーラックから排出された熱を、外気温が高温でも、直接屋外に輸送し放熱できる流路設計技術で、PCやプロジェクターなどの電子機器で培った冷却技術の知見を、空調システムに応用した。
低圧冷媒は、高圧冷媒と比べて安全性が高い一方、潜熱や圧力勾配が小さいため体積流量が大きくなり、冷媒をスムーズに流す配管設計が非常に難しいとされている。NECでは、低圧冷媒の物理現象を把握し、円滑に流せる緻密な流路技術を開発。これにより、冷媒をサーバールーム内に引き込み、サーバーラックからの排気熱がサーバールーム内に拡散する前に吸熱させ、建屋外まで運んで放熱することを可能にした。従来必須であった空調機のファンが不要となり、空調電力の大幅な削減を実現しました。
また、低圧冷媒は体積流量が大きくなるため、データセンター内に敷設する配管(配管径)が太くなることから設備工事が困難となり、さらには冷媒温度を上げるための圧縮機が大規模化する課題があった。この課題に対し、既存の施設にも敷設しやすい複数本の細い配管(細径銅管)を適用し、長さを変えた流量の調節などにより、冷媒を均一に分配させる流路技術を開発。これにより、従来の小型圧縮機を複数台、同じ負荷での並列運転が可能になることで、システム全体の小型化を実現した。
この技術により、他の空調機を設置することなく、「相変化冷却システム」だけでデータセンター内のサーバーを高効率に冷却することができるため、電力効率指標PUEの向上に貢献する。また、空調機の追加が不要となるため、既存のデータセンターにも導入しやすくなるとしている。
NECでは、インド南部のデータセンターにおいて、通常のデータセンターのラックより2倍の発熱量となる7.5kWのラックにて実証を実施。開発した技術により、外気温35℃の状況で、既設の空調機と比べて空調電力を半減させ、実証ラックの総電力量を20%削減できたことを確認した。
NECでは今後、開発した技術の向上を行い、2020年度までに製品化を目指すとしている。