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インテル、FPGAを統合したプロセッサ「Xeon Gold 6138P」発表 一部のベンダーに提供開始
2018年5月21日 12:20
インテル株式会社は17日、同社のデータセンター事業に関する説明会を開催。FPGA(Field Programmable Gate Array) Arria 10を統合したXeonスケーラブルプロセッサ「Xeon Gold 6138P」を、一部のベンダーに提供開始したことを発表した。
米Intel データセンター事業本部副社長 兼 インテルXeonプロセッサ/データセンター・マーケティング事業部長のリサ・スペルマン氏は、同社のデータセンター事業の推進力となっているのは、「クラウドコンピューティングへの移行」「ネットワークの変革」「AIやアナリティクスの普及」により、HPC(High-Performance Computing)への需要が高まっていることにあると説明。「540億ドルというデータセンター市場において、Intelは35%のシェアを占めている」と述べた。
クラウドによってデータセンター事業の成長が加速
近年、PCの需要が伸び悩む中で、Intelは事業構造を大きく転換している。2018年第1四半期の業績は、売上が前年同期比13%増の約161億ドルと順調な伸びを示しているが、その内訳は、PCを中心とする事業領域が3%増と微増なのに対し、データセンター事業は25%増と順調な伸びを示した。すでに売上全体の50%はデータセンター事業となっている。
特にクラウド分野での需要拡大が、データセンター事業の業績に大きく影響している。クラウドサービス事業者向け製品、特にXeonへの置き換えなどによって45%増となった。次いで通信サービス事業者分野でも売上を伸ばしており、5Gのインフラ整備による重要の拡大によって33%増となっている。
スペルマン氏は、「今度もクラウド分野などデータセンター事業への投資は継続する。PC中心のビジネスから、データを中心としたビジネスへとシフトしていく」と説明した。
「Intelがプロセッサビジネスに多大な投資をしていることは広く知られているが、実はストレージ、ネットワーク、ファブリック、その他のアクセラレーションテクノロジーにも投資しており、今後もその投資は継続していく」と述べたスペルマン氏は、さまざまなテクノロジーに投資することで、バランスの取れたシステム・アーキテクチャを実現していくと説明した。
データセンター事業の基盤となるXeonスケーラブル・プロセッサ
とはいえ、プロセッサが今後もIntelのメイン領域であることは間違いない。スペルマン氏は、「データセンター事業においては、Xeonスケーラブル・プロセッサがすべての基盤となり、ワークロードを最適化してデータセンターを刷新していく。また、ソフトウェアベンダーとの協業によって包括的なエコシステムを構築していく」と説明。
また、Xeonスケーラブル・プロセッサによって、ハイブリッドクラウドのパフォーマンスは、4~5年前の製品と比較すると最大で4.28倍、ネットワークはデータプレーン開発キットL3の利用もあわせて最大で2.7倍、AIやアナリティクスにおいては3年前の製品との比較して推論で198倍、trainingで最大127倍という結果が出ているという。特に、最近成長著しい分野でもあるAIやアナリティクスにおいては、高コストなアクセラレータへの投資が抑えられるとアピールした。
さらに、IntelはXeonプロセッサのアクセラレーションオプションとして、アルゴリズムによって多用途のワークロードに対応できるFPGA、暗号化と圧縮処理に特化した「Quick Assist」テクノロジーを提供している。
FPGAでは、多用途性とワークロードへの最適化、低レイテンシ、広帯域を提供するという。
このようなビジネス背景からIntelが提供を開始したのが、FPGA「Arria 10 GX 1150」を統合したXeonスケーラブルプロセッサ「Xeon Gold 6138P」だ。FPGAを統合したXeonスケーラブル・プロセッサとしては初の量産製品であり、スペルマン氏は「2015年に買収したAlteraのテクノロジーによる大きな成果」と述べている。
Xeon Gold 6138Pは、ソケット当たり最大160GbpsのI/O帯域と、高速に連携したアクセラレーションのためのキャッシュコヒーレントなインターフェイスを提供する。搭載されているArria 10 GX 1150は、独立したキャッシュ領域に加えて、IntelのUPI(Ultra Path Interconnect)バスを介してプロセッサとメモリを共有する。UPIではデータの所在地(コアキャッシュ、FPGAキャッシュ、メモリ)を問わず、データへのシームレスなアクセスを可能にする。
さらに同日、富士通との協業拡大により、IntelのXeon Gold 6138Pを富士通のPRIMAGYシリーズの製品に採用することが発表された。
なお、FPGAアクセラレーションがない環境との比較において、Xeon Gold 6138Pはスループットは3.2倍に向上し、レイテンシは半減したという。また、仮想マシンのホスティングも2倍になるという。
スペルマン氏は「FPGAは何年も前からあるテクノロジーだが、プログラム開発が難しいという難点があった」とし、これを解決するために、FPGAの知識がなくても処理をオフロードできる開発環境を提供したと説明。「FPGAは特定の用途で利用するだけではなく、汎用性のある製品となった」と述べた。
なお、スペルマン氏は、多様なワークロードに対応し、必要なハードウェアやソフトウェアの導入を簡素化/高速化する「Intel Selectソリューション」についても触れ、2017年の発表以来さまざまソフトウェアベンダーやOEMベンダーと協力し、ポートフォリオが拡大していることを紹介した。富士通もシミュレーションやモデリング用途向けのHPCソリューションでSelectソリューションを採用したという。
メモリやストレージの分野にも積極的な投資を実施
前述したようにIntelはPC中心のビジネスから、データ中心のビジネスへとシフトしており、ストレージやメモリのテクノロジーに対しても積極的な投資を行っている。
データセンターを中心に加速度的にデータが増加している現状について、スペルマン氏は、「膨大なデータから以下に価値を引き出すかというのは、大きな挑戦でありチャンスだ」述べた。
またスペルマン氏は、データを「ホットデータ」「ウォームデータ」「コールドデータ」の3つに大きく分け、このうちコールド/ウォームデータに対応するストレージとして、3D NAND技術を使ったSSDを紹介。既存のHDDと比較すると面積比で2倍の容量、45%の消費電力を実現するため、既存のHDDの置き換え需要に対応できるとした。
次いでウォームデータ向けに、より高速な3D XPoint技術による「Optane SSD」を紹介した。速度比では8倍、QoSで60倍、レイテンシで40倍高い性能を発揮するという。
最後に紹介されたのは、2017年11月に発表した次世代の高速不揮発性メモリ「パーシステントメモリ(Intel Persistence Memory)」だ。
3D XPoint技術によって実現するパーシステントメモリは、従来の高コストなDRAMを置き換える技術として注目されている。スペルマン氏は「メモリにおける過去25年で最も大きな進化」というIntelのブライアン・クルザニッチCEOのコメントを引用した上で、「パーシステントメモリの登場によって、従来の高コストDRAMからストレージにデータを移動させるというアーキテクチャは再検討する必要があるだろう」と述べた。
なお、パーシステントメモリの一般提供は2018年中に開始する予定であることが発表された。現在は一般提供に向けて、SAPやMicrosoftといったパートナーと一緒に、エコシステムへの取り組みを行っている最中であるという。