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SAP、シンガポールにデジタルトランスフォーメーションが体験できる拠点を開設

 独SAPは8日、同社のさまざまなソリューションが体験できる拠点「SAP Leonardo Center」を、シンガポールに開設したと発表。報道陣を招いて同センターを披露した。

 SAPでは、シンガポール以外にも、インドのバンガロール、米国のニューヨーク、フランスのパリ、ブラジルのサン・レオポルドといった都市にSAP Leonardo Centerを展開しており、今回新設したシンガポール拠点は世界で5カ所目、アジア太平洋日本(APJ)地域では2カ所目となる。なお同センター以外にも、APJ内にイノベーションセンターを3カ所、SAP Labを4カ所設けているという。

SAP APJの状況

 SAPは、SAP Cloud Platformをベースに、IoT、マシンラーニング、ブロックチェーン、ビッグデータ、アナリティクス、データインテリジェンスなどを組み合わせたデジタルイノベーションシステムを「SAP Leonardo」と称している。SAP Leonardo Centerではこれを活用し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するためのソリューションを用意。業界ごとに実際の場面を想定したデモが体感できるようになっている。

SAP Leonardoとは

 シンガポールのSAP Leonardo Center開設にあたり、SAP APJ プレジデントのスコット・ラッセル(Scott Russell)氏は、「SAP Leonardo Centerでは、デジタルイノベーションの可能性が体験できるとともに、SAP Leonardoテクノロジーとデザインシンキングを通じて、トランスフォーメーションが迅速かつ効率的に進むよう支援する。APJの顧客やパートナーはもちろん、スタートアップ企業や大学など幅広い組織を対象に門戸を開く」と述べている。

SAP APJ プレジデントのスコット・ラッセル氏

 なお、SAP Leonardo Centerはグローバルで共通のフレームワークを採用しており、どの拠点においても同様の体験が可能だ。共通フレームワークには、SAP Leonardoはもちろんのこと、共同イノベーションやデザインシンキングなども含まれる。

 ただし、各拠点のマーケット状況や地域特有の業界には柔軟に対応し、それぞれの特徴に合ったセンターを用意しているとのこと。例えばニューヨークのセンターでは、金融業や保険業に注力しているという。

センター内で未来の世界を体験

 ここで、シンガポールのSAP Leonardo Centerの様子を一部紹介しよう。センター内には24件のソリューションが展示されており、すべてを体験するには最低でも数時間は必要なほど充実した内容となっている。

SAP Leonardo Centerの様子

 例えば小売業エリアでは、パーソナライズド・リテーリングと称したデモを提供。ここでは、顧客の全体像をカメラでスキャンし、マシンラーニングを駆使して肌の色や体形、現在の服装などから顧客に合う服装を提案する。

パーソナライズド・リテーリングで洋服を提案

 また、サプライチェーンのエリアでは、コーヒー豆を輸送する際、輸送の場所がリアルタイムで把握できるだけでなく、トラック内の温度や湿度まで管理できるようなソリューションを披露。これにより、より高度な品質管理が可能となる。

サプライチェーンを効果的に管理

 エンターテインメント分野でもSAP Leonardoのテクノロジーが活用されている。スマートスタジアムでは、観客が着席している座席を認識できるほか、スタジアムのゲートに向かう観客の通行量を把握し、人の流れが悪いゲートからスムーズなゲートに案内できるようなソリューションが用意されている。

スマートスタジアムで観客の状況を把握

 さらに会見当日は、SAP Leonardo Centerの重要なフレームワークのひとつとなるデザインシンキングを報道陣が体験できるワークショップも準備されていた。

 ワークショップでは、「新たな読者を獲得するには?」という課題を与えられ、数人のチームに分かれてまず読者として取り込みたいペルソナを設定。そのペルソナを読者として引きつけるにあたり、自らの好きなブランドについて考え、なぜそのブランドが好きなのかをベースとして読者を引きつける戦略を立てる手法を、全員で体験した。

 例えば、スイーツ食べ放題レストランの「スイーツパラダイス」というブランドが好きで、その理由が「さまざまなスイーツが好きなだけ食べられること」である場合、新たな読者を引きつけるには「バラエティーに富んだ記事を好きなだけ読める環境を提供する」ような戦略を立てる、といった具合だ。

 ラッセル氏は、最終的にはSAPが同センターを通じて「世界中の人々の生活を向上させるようなイノベーションを生み出すシンクタンク」となることを目指しているとし、「APJの顧客7万社以上が『インテリジェントエンタープライズ』へと変革できるよう支援していきたい」としている。

 SAPはこのほかにも、世界各地でSAP Leonardo Centerをオープンさせる予定で、今後の新たな予定地には東京も入っている。東京以外では、シリコンバレー、ドイツ、中国、南アフリカ、ロシア、韓国にて、同様の施設が開設される予定だ。