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シスコ、2018年度の事業戦略を発表 ~日本のデジタル変革を加速
2017年10月19日 11:27
日本法人であるシスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は18日、2018年度の事業戦略説明会を開催した。
代表取締役社長の鈴木みゆき氏は、冒頭で同社の2017年度を振り返り、Cisco StartやCisco Merakiなど中堅中小企業向けビジネスは30%以上成長したこと、日本のサイバーセキュリティ対策に貢献できたこと、デジタイゼーションやIoTの推進プロジェクトが進められていることを紹介。さらに、8月に開催された米Ciscoの2018年度キックオフミーティングにおいて、日本法人が2017年度のトップカントリーアワードを受賞したことを報告した。
東京オリンピックが開催される2020年に向けたシスコの新ビジョンを、「All Connected. Anything Possible.(すべてがつながれば、なんでも可能になる)」と紹介した鈴木氏は、「あらゆる人、プロセス、データ、モノがつながることで、生活、仕事、娯楽、学習などを大きく進化させることができる。その"つなぐ"の根底にあるのはネットワークであり、シスコはネットワークの力で日本のデジタル変革に貢献していきたい」とアピールした。
2018年度のシスコの重点戦略は、「日本のデジタル変革を加速」「次世代プラットフォームの構築」「日本市場により根差した事業展開」の3つ。2017年度の飛躍的な成長を見れば、より日本市場に沿ったビジネス戦略となるのも納得できる。
ネットワークの力で日本のデジタル変革を加速させる
重点戦略の1つ目の「日本のデジタル変革を加速」では、デジタイゼーション/IoTの推進、サイバーセキュリティの貢献、そして働き方改革をリードできるイノベーションを実現していく。
デジタイゼーション/IoTの推進については、スマートファクトリーやスマートシティなどIoTプロジェクトが、いよいよ実証実験の段階から実プロジェクトの段階となっている。
2016年に提携が発表されて話題になったファナック、米Cisco、米Rockwell、Preferred Networksの4社(その後NTT、NTT Com、NTTデータが参加したため計7社)が協力して開発を進めてきた「FIELD system」は、いよいよ2017年10月2日に国内サービスを開始した。
他にもヤマザキマザック、横河ソリューションサービス、牧野フライス、オークマといった工作機器や制御装置のベンダーと協業して、スマートファクトリー実現に向けたプロジェクトを推進している。
スマートシティについては、京都の木津川市におけるスマートライティングなどの実証実験を行い、さらに京都・嵐山ではコネクテッドツーリズムと呼ばれる、慢性的な混雑状況の改善などを目的としたプロジェクトが開始している。京都以外の地方自治体からの問い合わせも多く、近々東京でもプロジェクトを開始する予定であるという。
スポーツ&エンターテインメント分野にもIoTの波が押し寄せている。2017年度、シスコは全国6カ所のスタジアムにスタジアムWi-Fiやシスコビジョンを導入してきたが、2018年度は累計で10カ所以上のスタジアムとべニュー(venue:開催地)に導入する計画があるという。
また、米国の大手イベントプロモーターのLive Nation Entertainmentとは、ライブにおけるバックステージシステムの迅速なセットアップと安定したオペレーションを実現する、「Network in a Box」のプロジェクトを推進している。
サイバーセキュリティについては、「セキュリティ Everywhere」つまり、どこでもセキュアであるべきだと考えている。また、セキュリティに対応できる人材の不足が多くの企業で深刻な問題となっていることから、サイバーセキュリティスカラシッププログラムなど、人材育成プログラム受講者を2020年までに入門コースで2000人、基礎コースで200人に増やす計画であるという。
Cisco DNAが実現する、新しい時代のネットワーク
ネットワークに接続するデバイスは爆発的に増大しているが、いまだに多くのネットワーク運用は手作業に頼っており、ビジネスの意図をネットワークに反映させるには時間がかかっている。また、サイバー攻撃の対象領域の拡大や手口の巧妙化によって、セキュリティ対策も複雑化している。この課題を、シスコは新しいネットワークによって解決するという。
2017年6月に発表された、シスコの次世代ネットワークのコンセプトは、「The Network. Intuitive.(直感的なネットワーク)」。ビジネスのインテント(Intent:意図)を理解し、自動的に反映させることができる新しいネットワークで、シスコの次世代ネットワークアーキテクチャ「Cisco DNA(Digital Network Architecture)」によって実現している。
Cisco DNAは、Opexを削減するCisco DNA Center、ネットワークの展開/変更を自動化するSD-Access、暗号化されているデータを複合化することなく脅威を検出できる「Encrypted Traffic Analytics(ETA)」、そしてデータ分析や予測を行うNetwork Data Platformなどで構成される。ただし、ETAはいまのところ、独自ASICを搭載したCisco Catalyst 9000シリーズでしか利用できない。
インテントベースのデータセンターネットワークを実現する「Cisco ACI(Application Centric Infrastructure)」は、10月12日に最新版がリリースされたばかり。「ACI Anyway(どこででも)」というコンセプトで、複雑なマルチクラウド/ハイブリッドクラウド環境におけるネットワーク管理の簡素化を実現する。
システム管理のSaaSである「Cisco Intersight」は、管理対象となるCisco UCSやCisco HyperFlexの構成や稼働状況といった情報を収集し、複雑なシステムの運用管理オペレーションを合理化する。
「Cisco Kinetic」は、多種多様なデバイスを接続してデータを取得し、そのデータを処理してから適切なアプリケーションに移動する機能を提供する分散型ソフトウェア。膨大なIoTのデータをエッジコンピューティングやフォグコンピューティングなどの中間層、クラウド、あるいはエンドポイントなど任意の場所で動作させることが可能で、複数のKineticを連携させることもできる。
日本により根差した事業展開とプロフェッショナルサービス
日本市場に根差した事業展開としては、2017年度に飛躍的な成長を遂げた「Cisco Start」や、ネットワーク管理のSaaSである「Cisco Meraki」を中心に、中堅中小企業向けのビジネスをさらに加速させていく。それに伴ってパートナーエコシステムも拡充するという。
企業のビジネス変革を支援するサービスとして、「ビジネス クリティカル サービス」と「ハイバリューサービス」という新しいサービスを展開する。ビジネス クリティカル サービスは、セキュアで安定したネットワークの運用を支援するファンデーション、自動化の適用などを中心にビジネスの俊敏性を高めるアクセラレーション、デジタルビジネスのためのアーキテクチャデザインや変革マネジメントを支援するトランスフォーメーション3つのステージでサービスを提供する。ハイバリューサービスは、Cisco以外のマルチベンダー環境での支援サービス。ネットワーク、ソリューション、ソフトウェアの全般にわたって幅広い支援を行うという。
さらに、グローバルでの経験を生かした高付加価値プロフェッショナルサービスも展開していく。ネットワーキング、データセンター、セキュリティ、クラウド、コラボレーション、IoTなど幅広い分野でスペシャリストによる支援サービスをうけることができる。
日本のデジタルビジネス支援の一環として、日本独自のキャラクター「Cisco 5」のビジュアルも公開している。それぞれのキャラクターが、エンタープライズネットワーキング、サービス、コラボレーション、セキュリティ、データセンターを表現しているという。