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GEヘルスケア、先端的工場のひとつ「日野工場」を公開

病院経営や部門運営を支援するデジタルサービスも発表

 GEヘルスケア・ジャパン株式会社は10日、病院経営や部門運営を支援する新たなデジタルサービス「Applied Intelligence(アプライドインテリジェンス)医療データ分析サービス」を発表した。また、東京・日野の同社日野工場の様子も公開した。

 Applied Intelligence医療データ分析サービスは、GEがグローバルで推進している産業用IoTプラットフォーム「Predix」をベースに、同社が、日本のヘルスケア分野で展開している「Brilliant Hospital構想」のひとつとして開発されたもの。日本の顧客の声を取り入れて、日本のユーザーニーズに合致するように開発された。

 「顧客が抱える課題を整理し、医療機関が保有するデータをベースに、課題解決に必要な業務指標、経営指標を可視化し、改善に向けたコンサルティングを行う。これによって医療経営の改善を倍速化できる」(GEヘルスケア・ジャパン ヘルスケア・デジタル事業本部の松葉香子本部長)としたほか、「Predixによって、様々な角度からの分析が可能になったこと、必要なアプリを時間をかけずに利用できるようになったことで、こうしたサービスが提供できるようになった。顧客がデータを取りまとめて、分析するだけでなく、アクションにつなげるところまでを支援したい」と述べた。

GEヘルスケア・ジャパン ヘルスケア・デジタル事業本部の松葉香子本部長

 「導入前のアセスメント」、「データ分析ツール構築」、「得られた示唆に基づく改善活動」の3つの段階でサービスを提供。具体的には、導入前の課題抽出や評価、分析プラットフォームの導入および導入におけるプロフェッショナルサービスを提供するほか、導入後のシステム運用、保守、改善コンサルティングも提供する。

 「データの可視化だけでなく、顧客の経営的なアウトカムを実現できるように、コンサルティングサポートも用意する。アセスメントからデータ分析ツールの構築までで、半年弱の期間を想定している」という。

 また、GEの製品だけでなく、第三者のデータソースにも対応。各種データベースやウェブサービス、CSVファイルなど、多様な形式をサポートしており、異なるデータ同士を組み合わせたクロス分析も可能にしている。

 さらに、様々な視点や角度からの参照、ドリルダウンを行うことで、直感的な分析を可能としているほか、ダッシュボードとして可視化した情報をそのままレポートとして活用でき、経営の意思決定にも生かせるという。

 すでに2017年2月から、大阪府堺市の社会医療法人生長会ベルランド総合病院において実証実験を開始している。

 実証実験では、患者の検査内容や、検査の依頼背景などから検査予約枠の組み替えを行い、CT検査の待ち時間を短縮することができたほか、検査を入院ベースで行うのか、外来ベースで行うのかといった入外比率の改善により、病院の増収に向けたヒントを得るといった効果があったという。

さまざまな関係者に新たな知見を提供するBrilliant Hosptal構想

 なお、今回のサービスのベースとなっているBrilliant Hosptal構想は、病院内の人とモノ、情報をネットワークで接続し、そこから収集したビッグデータを一元的に高度分析するインダストリアル・インターネットを医療分野において活用することで、放射線科だけでなく、医療従事者、経営者に対して、知見を提供する新たなサービス体系と位置づけている。

 日本国内においては、GEの製品が3500カ所以上の医療機関で使用されており、1万4000台の医療機器が接続可能な環境を実現。これらを活用することで、高度に最適化した医療の実現を支援することができるとしている。

 医療分野では、2025年問題と呼ばれる労働人口の減少に伴い、人手不足が深刻化すると予測されている。また、政府が推進する「地域医療構想」のもと、病院の機能分化が加速。地域社会に質の高い医療サービスを提供するために、経営および運営の効率化を迫られている。

 GEヘルスケア・ジャパンの多田荘一郎社長兼CEOは、「高齢化が進展する一方で、1人の患者が複数の疾患を抱えることも多く、より医療が複雑化している。また、医療データは急速な勢いで増大しているが、これを活用しきれていないという課題がある。さらに、業務利用への期待が低い、情報連携基盤がないという指摘もある。限られた医療資源を有効に利用し、人、モノ、情報をつなぎ、得られた示唆を迅速にアクションにつなげることで、様々な医療課題を解決できると考えている。今後は、AIによる適切な診断支援および読影補助、病院情報の統合化、テクノロジーによる仕事の自動化による作業の負担軽減など、デジタルとIT連携を通じて、つなぐことで複合的な問題解決を行う」とした。

GEヘルスケア・ジャパンの代表取締役社長兼CEOの多田荘一郎氏

 さらに、「これまでは自らが経験していないものを顧客に提案することもあった。だが、今後は、自ら活用し、知見を蓄積したものを、病院運営に活用するといった提案を行っていく。効率的な人員の配置や機器の故障予知などのノウハウなども医療現場に活用できるだろう。やBrilliant FactoryからBrilliant Hospitalを目指す」などと述べた。

"Brilliant Factory"日野工場を公開

 一方、同社日野工場では、GEグループにおいて「Brilliant Factory」と位置づけられており、今回のサービス発表にあわせて、同工場を公開した。

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GEヘルスケア・ジャパンの日野本社

 日野工場は、1982年に操業し、30年以上の歴史を持つ生産拠点。CTやMRI、CTディテクタ、超音波プローブなどを製造してきた。

 GE ヘルスケア・ジャパン 製造本部長兼工場長の藤本康三郎氏は、「GEは、全世界に450カ所の生産拠点を持つが、日野工場は、7カ所のBrilliant Factoryのショーケースのひとつであり、GEグループのなかでも先端的工場のひとつに位置づけられている」という。

GEヘルスケア・ジャパン 製造本部長兼工場長の藤本康三郎氏

 また、「GEでは、リーン、先進の製造技術、3Dプリンタ、デジタルという4つのポイントから強化を図っている。Brilliant Factoryでは、どれだけデータを取得し、IoTを活用しているかというデジタルマチュリティ、リーンにおける改善ができているかというリーンマチュリティの2つの指標を用い、それぞれに5点満点中4点以上を獲得した工場をBrilliant Factoryに認定している。日野工場は、もともとリーンには強い工場であったが、デジタル化では遅れていた。専任のデジタルマネージャを登用して改善を進め、工場で働く社員はビーコンを携行し、その動きをデータ化。それをもとに最適なレイアウトに変更するなど、デジタル化を一気に進化させることができた。2016年は65%のリードタイム削減を実現したラインもある。今後は、自社で実証実験を行い、そこから生まれた知見を、医療機関に対しても提供していく」とした。

 今回公開したのは、CTガントリと呼ばれるCT装置の上の枠の部分を組み立てる生産ライン。日野工場では、年間450台(日産2台のペース)のCT装置を、500個の部品を使って生産し、日本のほか、欧米や中国、アフリカなどに出荷している。CTガントリの生産には、5人のオペレータが携わっている。

CT装置のガントリの生産ラインの様子

 キットカートと呼ぶ移動台に必要な部品を搭載。順番通りに組み立てられるように部品が置かれている。RFIDが搭載されているキットカートには、約1時間の作業分の部品が置かれているため、作業開始時間から作業終了時間を自動的に計測する仕組みとなっており、作業が予定通りに進んでいるか、遅れているかが可視化できる。

RFIDを搭載したキットカート。1時間の作業分の部品が搭載されている
キットカートの稼働時間を計測して可視化

 また、作業を行うオペレータがビーコンを携行することで、移動距離をスパゲッティチャートで表示したり、滞留時間をヒートマップで表示したりできるほか、居るべき場所に居る時間と、居る必要がない場所に滞在していた時間を計測して表示。これによってプロセスの改善につなげるといったことも行っている。

オペレータが携行しているビーコンの発信機と受信機
メッシュネットワークを張り巡らせて50cmの誤差で計測できる
人の動きをトラッキングしてスパゲッティチャートとして表示
スパゲットティチャートをもとに改善につなげた事例
滞留時間をヒートマップで表示
必要な場所に居なかった時間を赤で表示。これをもとにブロセスの改善に努める

 同工場には、多くの医療関係者が見学に訪れており、これらのデータ活用による改善事例を、病院の効率的な運用に反映させるといった提案にもつなげているという。

展示会場ではだれがどこにいるかをリアルタイムで表示。来場者への対応を迅速化。3時間で設置したという