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米IBMの在宅勤務廃止報道は誤り? 米国も日本的なオフィスと在宅併存勤務スタイルに

 米IBMが在宅勤務制度を止めるというニュースが、日本で波紋を呼んでいる。

 日本では、政府が働き方改革を推進していることもあって、新たに在宅勤務制度を取り入れる企業が増えている。先行して在宅勤務を取り入れたIBMが制度廃止を決定したことに対して、SNSなどでは「在宅勤務制度はデメリットの多い働き方なのか?」と受け止めた人がいたからだ。

 しかし、日本IBMの広報部門に確認してみると、「これは米国の話。そもそも、在宅勤務廃止は誤り」との答えが返ってきた。「むしろ、日本で実施している在宅勤務の形態に近くなった」という。

 IBMが新しい勤務形態を採用した狙いはどこにあるのだろうか?

ビジネススタイルにも“アジャイル”が求められる

 今回の報道は、「在宅勤務廃止」といわれているが、IBMによれば、「これは誤り」だという。

 「これまでオフィス内に自席を持たずに勤務してきた社員に、席を設けた。在宅勤務廃止は誤りで、日本で実施しているオフィスで働く日もあるが在宅勤務もある、という業務スタイルと似た形態を採用することとなった」(日本IBM・広報部門)

 米国は国土が広いこともあって、かなり以前から在宅勤務、サテライトオフィスの利用といった勤務スタイルは当たり前のものとして定着しているという。そのため米国IBMの社員の中には、勤務するオフィスを定めず、オフィス内に自席を持たない社員が存在していた。

 しかし、今回の制度変更によって勤務するオフィスを定め、そのオフィス内に席を設けることとなった。必要な場合は、オフィス内で働くことが求められるようになったため、オフィスを特定せず、100%リモートワークを実施してきた人にとっては大きな勤務形態変更となる。こうしたことから、センセーショナルに報道されることになったようだ。

 では、米IBMは何故、勤務形態の変更を行ったのか。

 「米国の広報部門からは『アジャイル!』という答えが返ってきた。開発手法がウォーターフォールからアジャイルとなったように、IBMのビジネススタイルもアジャイル、つまり迅速な対応が求められるようになっている。そのためには同じオフィス内で勤務する方が適していると判断したようだ」

 迅速な判断を行うためには、同じオフィス内でスタッフが勤務する形態が適していると判断したという点が興味深い。確かに複数のスタッフで迅速に物事を決定するためには、全員が同じ場所にいた方がスムーズという経験をしたことがあるので、納得できる変更だ。

 ただし、「現段階ではオフィスに席を持つことが最適と判断したということで、このスタイルを永遠に続けていくということではない。状況に応じて、最適な働き方を採用していく。今回はオフィスに席を置くことが適していると判断した」というから、今後も状況に応じて働き方を変えていくことが前提ということのようだ。

 なお、日本IBMは米国とは勤務スタイルは異なり、所属するオフィス、席がない社員は存在しない。在宅勤務に関しては育児や介護などを行う社員を対象としたものからスタートし、1999年には全社員を対象としたe-work制度を実施している。この時点では、上司の了解があれば、週の何日かを家で勤務する内容だった。これを2009年に刷新し、入社間もない社員など一部例外はあるものの、制限なく在宅勤務ができる「ホームオフィス制度」として現在も運用している。

 日本のこの制度については、「現在のところ、変更する予定はない」という。ホームオフィス制度を利用することで、効率的に働くことができるという実感もあるようだ。

 もっとも日本法人でも、「米国本社同様、働くスタイルは時代、状況に合わせて変更することが前提なので、正解はこれしかないとは考えていない」とフレキシブルに変更を行っていくという前提はあるようだ。企業にとっては働き方を一つに固定せず、最適なスタイルを模索していくことが求められる時代になっている。