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シスコ、ハイパーコンバージドインフラ「HyperFlex」のオールフラッシュモデル

40Gbpsファブリックへの接続サポート、管理画面の日本語化なども

 シスコシステムズ合同会社(シスコ)は14日、同社のハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)製品「Cisco HyperFlex」において、機能拡張および新ラインアップを発表した。

 オールフラッシュの対応、40Gbpsファブリックへの接続サポート、セキュリティ強化、管理画面の日本語化などを含み、「顧客のデータセンターにおけるインフラの集約とシンプル化を、新しくなったHyperFlexでもってさらに進めていく」(シスコ データセンターバーチャライゼーション事業 部長の石田浩之氏)戦略を明らかにしている。

シスコ データセンターバーチャライゼーション事業 部長の石田浩之氏

オールフラッシュモデルを提供、40Gbpsファブリックもサポート

 HyperFlexは2016年3月にCiscoがリリースしたHCI製品群で、コンピュートノードにCiscoのサーバー製品「Cisco UCS」を搭載し、ネットワーク部分はCiscoのファブリック製品「Fabric Interconnect(FI)」が受け持つ。

 最小構成は3ノード/FI×2台で、最大8ノードまでのクラスタ構成が可能。ストレージレイヤに関しては、分散ファイルシステムのSDS製品である「Cisco HX Data Platform」がUCS上のローカルストレージを仮想的に束ね、ストレージプールを構成している。

 今回、HX Data Platformがバージョン2.0にアップデートしたことでオールフラッシュに対応可能となり、従来の「Cisco HyperFlex HX220c」「Cisco HyperFlex HX240c」にそれぞれオールフラッシュモデルが追加される。

 また、新たに第3世代のFI「Cisco Fabric Interconnect 6332」も追加されており、40Gbpsの高速クラスタネットワーク接続が可能となる。

オールフラッシュに対応したHyperFlex 220cモデル(1RU)と第3世代のFI 6332。ノード3台とFI2台がHyperFlexの最小構成となる
筐体が2RUのHX240cモデルはHX220cよりも大容量のデータ用ストレージを扱える(最大構成時で10×3.8TB SSD)

 Cisco コンピューティングシステム プロダクトグループ アニケット・パタンカー(Aniket Patankar)氏は、オールフラッシュモデルのメリットとして「従来モデル(ハイブリッドモデル)に比較してより大きなライト(書き込み)ログを扱えるようになり、IOPSで6倍、キャパシティ密度で3.2倍と、パフォーマンスや集約度が大幅に向上した。特にパフォーマンスに関しては、仮想マシンのリード(読み込み)/ライトともに、レイテンシは他社の1/3以下」と語っている。

 なお、ハイブリッドモデルとオールフラッシュモデルはコントローラのデザインも基本的には同じだが、リードキャッシュを必要としないオールフラッシュでは、キャッシュ部分にチューニングを施しているという。

オールフラッシュ対応によるメリット。より大きなライトログが扱えるようになり、低レイテンシとと高いIOPSを実現
Cisco コンピューティングシステム プロダクトグループ アニケット・パタンカー氏

 「新しくなったHyperFlexはハードウェアとソフトウェアの両面で大幅な技術革新を実現し、より“フラッシュフレンドリー”な製品としてパワーアップした。パフォーマンスや集約密度、既存のUCS環境との共存、さらに管理ツールのGUI改善や日本語サポートなど、どれも競合他社製品と比較して大きく優位にある」(パタンカー氏)。

CiscoによるHyperFlexと競合他社製品の比較。特にパフォーマンスに関しては絶対の自信を持つ
HyperFlex管理ツールの日本語化も今回のアップデートのひとつ

UCSベースのHCIである強み

 ハイパーコンバージド製品は各社から提供されているが、HyperFlexの最大の特徴はやはりCisco UCSという「全米ではNo.1、ワールドワイドでは世界2位のシェアを誇るサーバー」(石田氏)をベースにしたプラットフォームという点だろう。

 2009年の最初のリリース以来、UCSはそのスケールアウトのしやすさから米国を中心に急速にシェアを拡げ、ネットワークベンダーとしてのイメージが強いCiscoに、新たにサーバーベンダとしてのブランドを確立させた製品でもある。

 すでに自社データセンターにUCSを導入してプライベートクラウド環境を構築しているユーザーは、UCSと共有ストレージアレイ(もしくはクラウドストレージ)を組み合わせてコンバージドシステムを構築するだけでなく、既存の環境をHyperFlexでスケールさせることも可能となる。「既存のUCS環境をディスラプトしない」(パタンカー氏)ことから大幅なTCO削減効果も期待できる。

既存のUCS環境とHyperFlexを組み合わせることも可能。ネットワークファブリックがあらかじめ搭載されていることもHyperFlexの強み

 また、HyperFlexはクラスタネットワーキングが実装されていない旧世代のHCI製品とは異なり、最初からUCSと共通のネットワークファブリックであるFIが搭載されているのも、大きな強みのひとつだ。

 「競合他社のHCIに比較して、コンピュート、ストレージ、ネットワークの各コンポーネントが緊密に統合されているので、アプリケーションのパフォーマンスが高いレベルで安定する。したがってSAP HANAやHadoopといったビジネスアプリケーションにもHCIを適用しやすくなる」(パタンカー氏)というメリットもある。

コンピュートとネットワークファブリックを統合したUCSの登場はサーバ業界に大きなインパクトをもたらした。HyperFlexはUCSの延長線上に開発されたHCIであり、はじめからファブリック搭載という点が他社と一線を画する

 旧世代のHCIは、仮想デスクトップ(VDI)など比較的軽量なワークロードに使われがちだったが、そうした制約から解放され、低レイテンシと高IOPSが要求されるクリティカルなワークロードへの適用も可能になる。

 「サーバー(コンピュート)とネットワークを統合したUCSは、複雑化したインフラ環境をシンプルに集約することを可能にした。HyperFlexはそのUCSをさらに進化させたプラットフォーム。Ciscoがデータセンターアーキテクチャとして提唱する“ASAP(Analyze/Simplify/Automate/Protect)”を、シンプル化という面から推進する存在」(石田氏)。

 HyperFlexは提供開始から1年で、すでにワールドワイドで1000社以上の導入実績を持つ。

 国内でも長崎県立大学の事例が新たに発表され、「大学が落雷が多い地域にあるため停電が起こりやすく、そのたびに外付けディスク→物理サーバ→仮想サーバとシステム再起動に数時間を要していたが、HyperFlex導入により仮想サーバーを含めて十数分で立ち上げが可能になった、という報告をいただいている」(石田氏)と、可用性およびパフォーマンスの向上に大きな効果があったとしている。

 HCIの分野では後発だったCiscoだが、オールフラッシュ対応モデルの追加でHyperFlexブランドのさらなるシェア拡大を目指す。

長崎県立大学のHyperFlex事例。パフォーマンスや可用性に加え、ハードウェアの選択肢が多いことやコスト削減効果も採用ポイントだったという