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再エネ100%で稼働する洋上浮体型データセンター、日本郵船などが実用化に向け横浜で実証実験を開始

 日本郵船株式会社、株式会社NTTファシリティーズ、再生可能エネルギー開発会社の株式会社ユーラスエナジーホールディングス、株式会社三菱UFJ銀行、横浜市が参画する洋上データセンターコンソーシアムの実証実験がスタートし、3月25日に開所式が行われた。

 この実証実験は、横浜市が保有する災害対策用のミニフロート(浮体式係留施設)上に、コンテナ型データセンター、蓄電設備、太陽光発電設備を設置し、洋上でのサーバー運用についての技術検証を行うもの。系統電力を使わないオフグリッドの環境での検証を実施する。

開所式テープカット
洋上データセンター実証実験

背景と狙い

 現在、陸上のデータセンター建設においては、以下のような課題が顕在化している。

  • 電力不足&コスト上昇
  • カーボンニュートラル推進
  • 建設コスト高騰
  • 建設長期化
  • 建設リソース不足
  • 建設への厳しい目

 洋上データセンターはこれらを解決するものだと、日本郵船 専務執行役員の鹿島伸浩氏は言う。

 コンソーシアムは2022年に日本郵船の社員が考え始めたのが起点で、2月に内閣府の日本オープンイノベーション大賞の総務大臣賞を受賞した。横浜港では1年ほどかけてさまざまな実証を行う。その後、2027年をめどにスモールスケールでの商用化を目指すという。さらにその後は、LNG自家発電を活用するBay DC、洋上風力発電施設に付帯するOcean DCなどを目指している。

日本郵船 専務執行役員の鹿島伸浩氏
Ocean DCのイメージ(提供:NTTファシリティーズ)

洋上データセンターのメリット

 現在、データセンターは東京圏、大阪圏の大都市周辺に集中し過ぎていることが問題になっている。データセンターの地方分散の取り組みが始まっているものの、どうしても大都市の近郊に集中してしまっているのが現状で、例えば東京であれば多摩地区や千葉県の印西地区にデータセンター集積地ができている。

 しかし、大都市近郊の土地には限りがあり、しかも人口密度も地方に比べれば高い。さらに、土地不足に加えて電力供給が限界となっていて、電力会社に申し込んでも数年待たなければならない状況が問題となっている。

 そこで日本郵船が目を付けたのが海の上だ。島国である日本は周りが海で、大都市からさほど離れない場所にもスペースがある。今回の実証実験を行う横浜市は、地上のデータセンターも立地している東京近郊に当たる。

 データセンターの建設段階においては、騒音や大型車両の通行が増えるなど、地域コミュニティへの負担が問題になる。しかし、洋上であれば、これらはまったく気にする必要がない。

 さらに、造船所でフロートを作り、コンテナデータセンターや蓄電設備等を設置した状態で洋上風力発電施設の近くに持って行けばよいため、現地での作業は大して必要ない。日本郵船の鹿島氏によれば、小規模のコンテナデータセンターを造船所の中で作るので、工期も短い。大規模な土地を取得し、土地造成をした上で順次構築している地上の大型データセンターに比べれば、構築の初期コストはかなり低く抑えられるだろう。

 地上のデータセンターにおいても、できるだけ現地での作業を減らすために、工場で組み立て済みの状態で搬入するプレファブを志向しており、今回の実証実験では、その意味での知見やノウハウが得られるのではないかと期待していると、NTTファシリティーズ代表取締役社長の川口晋氏は言う。

 加えて、再生可能エネルギーの発電場所にデータセンターを持って行くことで、送電コストが低く抑えられると、ユーラスエナジーホールディングス代表取締役社長の諏訪部哲也氏は言う。洋上風力発電の電力を地上データセンターで活用するには、送電線を海底に敷設する工事が必要になる。しかし洋上データセンターであれば、送電線を極力短くし、複雑な工事が不要な状態で再エネ活用が可能というわけだ。

NTTファシリティーズ代表取締役社長の川口晋氏
ユーラスエナジーホールディングス代表取締役社長の諏訪部哲也氏

技術検証内容と得られている知見・進捗

 横浜実証実験施設は非常に小規模だが、ここからは多くの知見が得られる。検証内容は、主に以下の3つだ。

①エネルギーマネジメント
 オフグリッド&再エネ100%での運用を実現する制御システムを構築済み。再エネ・蓄電池・IT消費電力に応じたエネルギーマネジメントを、1年かけて実証する。

②揺れ・振動
 振動計を設置し、長期的な揺れのデータを取得・分析。地震の急激な揺れと異なり、洋上の波の揺れはゆっくりしている。フロートに立ち入って見学中も、揺れているという感覚はない。短期間のデータは計算済みで、現時点では影響は確認されていないが、さらに1年かけた検証を行う。

③空気質・塩害
 空気はフィルターを通して取り入れる。空気質を計測・分析評価し、コンテナ内で要件を満たすことを確認する。これまでに、近海郵船の商船において実海域での空気質データを取得し、船内において空気質要件を満たしていることを確認済みで、これから実証サイトのコンテナ内を確認する。

今後の課題

 現在は、「海の上でサーバーを稼働させて問題ないのか」を検証している段階で、ネットワークは携帯キャリアの電波を使っている。しかし沖に出ると、衛星通信を使うか、海底に通信ケーブルを敷設してつなぐかといった対応が必要になる。

 また、実証実験サイトは桟橋から歩いてフロートに行けるが、本格的に洋上に展開した場合には、トラブル時の駆けつけ対応をどうするかという問題も生じそうだ。将来の商用利用の際には、これらの課題を解決する必要があるだろう。

 とはいえ、大都市に集中しているデータセンターをできるだけ分散させるというのは国家にとって重要な課題であり、既存のデータセンター事業者以外の業界から新しいアイデアが出ていることは、希望が持てる取り組みだ。