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中堅・中小企業でも簡単・低コストで使えるIoTツールに――、AWSがクラウド活用例を紹介

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社は4日、中堅・中小製造業におけるAmazon Web Services(AWS)のクラウドサービスの活用事例について説明した。

 今回公開した事例は、経済産業省製造産業局が進める「ロボット革命イニシアティブ協議会」が募集し、「スマートものづくり応援ツール」として選定されたIoTツールのひとつ。中堅・中小製造業が簡単に、低コストで使えるものとして106件を選んでおり、AWSでは、「製造業向けのIoTツールとしてアイデアがユニークで、かつ汎用性のある事例」として、武州工業、スタイルズ、スカイディスクの3社を紹介した。

 「スマートフォンを利用した機械動作情報収集装置」および「Raspberry Piを利用した機械動作情報収集装置」を紹介した武州工業では、同社独自の統合管理システム「BIMMS」を、AWS上で提供。「出退勤、生産指示、倉庫在庫管理、工程不良管理、生産実績管理、品質管理、状況分析といった棚卸を切り口に、日々の決算ができる仕組みを構築。様々な業務がつながっているため、入力は少なくても、現場の見える化によって、さまざまな分析が可能。経営と現場に気づきをもたらすことができる」(武州工業 代表取締役の林英夫氏)とした。

武州工業 代表取締役の林英夫氏
武州工業のBIMMS on AWS

 「みんなのIoT/GPSトラッキングプラットフォーム Trackrr.io(トラッカーアイオー)」を開発したスタイルズでは、「誰でも作れて、誰でも使え、低コストにすぐに始められるトラッキングプラットフォームがTrackrr.ioだ。サーバーレスアーキテチクャで構築されており、AWSマネージドサービスを活用している。そのため、従量課金方式を採用でき、低コストでスタートでき、スケールアウトが可能。チューニングなしに1500台のデバイスからのプッシュにも成功している。中小製造業や卸売業の配送管理、長距離バスのための運行情報の公開といった利用を想定する」(スタイルズ 代表取締役社長の梶原稔尚氏)と、サービスを紹介。

 また、「今後は、汎用的で低コストなGPS/IoTデバイスへの対応、汎用アプリ対応によって誰でも利用できるユーザーインターフェースの実現、汎用的なプラットフォームによる他社間との情報連携に取り組む」とした。

スタイルズ 代表取締役社長の梶原稔尚氏
Trackrr.io

 サブギガ帯対応IoTトライアルキットを提供したスカイディスクでは、「デバイスが高価であること、システムが大規模で複雑であること、導入に時間がかかることが、中小企業へのIoT普及の阻害要因になっている」とした上で、「当社が開発したSkyLoggerは、14種類のセンサーを脱着式で利用できるのが特徴で、基盤開発が必要なく、実証実験をスピーディに行える。また、センサーデータの蓄積、分析、AI部分をAWSで構築。可用性とセキュリティを実現できる」(スカイディスク COOの金田一平氏)と、自社のサービスを紹介した。

 さらに、「当社が提供するAIは、センサーデータに特化したものであることも特徴。システム全体をワンストップで提供しており、パッケージとして提供できるため、早期導入が可能になる。すでに農業分野では収量予測やノウハウ継承に利用したり、倉庫の効率的なオペレーション検証などに活用。中部電力では、低価格なセンサーを利用して、正常および異常データのパターンを解析し、機械故障の予兆を察知し、故障する前に修理およびメンテナンスができるようになる。中部電力では、来年以降、本格導入する予定であり、当社では、このノウハウを応用して中小企業でも利用できるパッケージとして展開していくことになる」と述べている。

スカイディスク COOの金田一平氏
SkyLogger

安心して利用してもらえるプラットフォームを提供

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン 市場開発本部事業開発マネージャーの榎並利晃氏は、「リアルに起こっているものを吸い上げ、それを意味のあるものに変えていくというCyber Physical Systemの実現において、クラウドは重要な役割を果たしている。特に製造業では、クラウド活用においてセキュリティを懸念するケースが多い。しかしAWSは数多くの第三者認証を得ており、製造業においても安心して利用してもらえる。IoTでは、モニタリング、予防予知保全、作業効率・自動化、遠隔制御といった機能要件があるが、こうしたニーズに対して、AWSでは、IoTプラットフォームであるAWS IoT Solutionを提供。70を超えるサービスを必要にあわせて組み合わせて使ってもらえる。また、AWS IoTでは、安心、安全にデータを収集、コントロールできるのが特徴であり、製造業においての活用も増加している」との現状を説明。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 市場開発本部 事業開発マネージャーの榎並利晃氏
Cyber Physical System
AWS IoT Solution

 具体的な事例として、ブレインズテクノロジーでは、製造工程における異常検知システムを開発し、各工程で測定された全データを機械学習に通すことで、不良を100%検出。小島プレス工業では音データをもとに不良傾向を分析し、不良品の低減を実現。東洋ビジネスエンジニアリングなどでは、工場全体の異常や無駄を継続的に分析して全体最適を実現している例を紹介した。

ブレインズテクノロジーでの活用例
小島プレス工業での取り組み
東洋ビジネスエンジニアリングなどでの「工場設備『つながる化』ソリューション」

 また、経済産業省 製造産業局デジタル化・産業システム担当参事官の徳増伸二氏は、「生産や設計開発でのIoT活用は進行しているが、運用・保守、販売などの領域では進んでいない。また中小企業での活用が進んでいないという状況がある。技術がわかる人がいない、セキュリティに対する不安があるというのがその理由だ」との現状に触れる。

 「昨年5月に、ロボット革命イニシアティブ協議会を設立し、製造現場における革命実現のために、産学官を巻き込んだ形で、産業競争力会議や総合科学技術・イノベーション会議などにおけるAIおよびIoTの議論とも連携。IoTによる製造ビジネス変革WGによる中間とりまとめのなかに、中堅・中小企業へのITおよびIoTの浸透の重要性を盛り込んだ。今年9月に、幹事会のもとに、国際標準化、中堅・中小企業、ユースケースに関するAG(アクショングループ)を設置。これは、中堅・中小企業サブ幹事会を改組したものになる」と、昨今の取り組みを説明。

 その上で、「今回選定したスマートものづくり応援ツールは、IoTは経営や生産現場の課題を解決するためのツールであり、高度で手の届かないツールとの認識ではなく、それぞれの企業の身の丈にあった活用方法があるとの意識を共有し、生産現場における課題を解決するためのツールや工場や企業の間で情報連携をする際の課題を解決するためのツールなど、7つのユースケースをテーマとしてツールの情報収集を実施。中小製造企業の経営者の目線で審査委員会により選定した。106件を選定したが、このなかにはAWSを活用したものも多い」と述べた。

経済産業省 製造産業局デジタル化・産業システム担当参事官の徳増伸二氏
スマートものづくり応援隊の取り組み