インタビュー

SSDをデータセンター市場へ訴求、日本サムスンの狙いを聞く

さくらインターネットも採用した「Samsung SSD」

岡田圭介氏

 日本サムスン株式会社は2012年10月、同社の第4世代のSSD製品「Samsung SSD 840(以下、840)」シリーズおよび「Samsung SSD 840 PRO(以下、840 PRO)」シリーズを国内で発売した。ハイエンドのコンシューマ向け製品だが、さくらインターネットの「さくらのVPS」SSDプランに前作の830シリーズが採用されるなど、データセンター向けの用途も狙っている。

 840 PROシリーズのデータセンターに向けた施策について、日本サムスン株式会社のBRAND Business Memory営業Group次長の岡田圭介氏に話を聞いた。

―― サムスンのSSDの、データセンター向けの取り組みについて教えてください。

岡田氏:サムスンでは長らくPCへのOEMを中心にSSDを販売してきて、大きなシェアを持っています。そして昨年から、国内でも一般向けにサムスンブランドでSSDを販売開始し、現在コンシューマ市場で大変ご好評をいただいております。

 実はコンシューマ向けだけでなく、同じ製品をデータセンターのサーバー向けにも販売しています。840 PROシリーズはデータセンターでもお使いいただける製品だと考えていますし、コンシューマ向けの価格帯ですのでエンタープライズ向けの製品と比べるとはるかに低価格です。「秋葉原の値段をエンタープライズに」といったところです。

―― データセンターでSSDが採用されるようになっているのでしょうか。

岡田氏:ひとつには、いま、データセンターでの電力削減が問題とされています。その中で、HDDに比べてSSDは、われわれの公称データで79%、消費電力を減らせます。実際にユーザー企業で検証したところでも、HDDの半分の消費電力になったという話をいただいています。

 数年前のSSDですと“プチフリ”などもありましたし、使い込んだ状態では性能が劣化して、サーバーで使える品質にはなかった。それに対し現在の第4世代の製品は、性能も信頼性も、消費電力も大幅に改善しています。消費電力でいうと、第1世代に比べて52%削減しています。

Samsung SSD 840 PRO
第4世代の製品は、性能も信頼性も、消費電力も大幅に改善

―― 前の世代から消費電力が改善された要因は。

岡田氏:コントローラの改良が大きいですね。SATAやSASの転送クロックを、使っていないときに止めて消費電力を減らすのですが、止めてしまうと復帰に時間がかかる。そのトレードオフを工夫しています。

HDD比で79%の消費電力削減
1世代SSD比で52%の消費電力削減

―― 実際のデータセンター側の反応は。

岡田氏:最近ではデータセンターで、SSDが使われていることが多くなっています。特に、2012年にSSDの普及が進んだようです。

 その中で、840 PROシリーズは、性能やコストは問題ないと言っていただいています。ただし、保守やサポート、サーバーメーカーの認定などは、低価格な分、エンタープライズ向けSSDのように万全ではありません。

 840 PROシリーズは、普段、SSDの検証やハードウェアの運用をサーバーベンダーにすべて任せている事業者さんで利用していただくのは難しいでしょう。主に、低コストなコンシューマSSDを独自に評価し、運用できるようなデータセンター事業者さんやSIerさんに販売していくことになります。

 さくらインターネット様の事例を見ても、VPSサービスは価格を上げにくい商品ですが、SSDによる高IOPSを売りにして、競争力を高められるのではないかと思います。

―― サーバーですとSSDの寿命を心配する声もあるのでは。

岡田氏:SSDは寿命を心配されることがありますが、840 PROは書き込み700TBぐらいまでは壊れない。ただし、保証としては数十TBとなっています。

 HDDは突然壊れることがありますが、SSDでは書き換え量により寿命が決まっています。そのため、S.M.A.R.T.情報から予測できて、HDDより信頼して使える、という声もいただいています。

―― サムスンのSSDのセールスポイントは。

岡田氏:IOPSや信頼性に自信を持っていますし、カタログスペックにはあらわれない実力もあると思っています。コントローラ、NANDフラッシュ、ファームウェアの3つを自社で開発しているのは強みです。

HDD比で267倍のデータ処理能力

―― エンタープライズ向け製品である843シリーズとの違いは。

岡田氏:保証レベルや、容量のラインアップの違いが主です。コントローラやNANDフラッシュ自体など、ハードは同じものです。そのほか、843シリーズでは、デフォルトでオーバープロビジョニングがオンになっているなど、サーバーを前提としたチューニングとなっています。

―― 840 PROシリーズと840シリーズの違いは。

岡田氏:840 PROではMLCのNANDフラッシュを、840ではTLCのNANDフラッシュを採用しています。MLCは、PCではオーバースペックなところがありますので、今後コストを抑えるためにTLCが増えていくのではないかと思います。SLCはサムスンのラインアップからは無くなりました。SATAやSASのほうがボトルネックになりますので。ただ、840 PROでもMLCをSLCモードで使うことで高速化している部分もあります。

―― 販売については。

岡田氏:国内正規販売代理店は、ITGマーケティング株式会社です。

 いま、データセンター向けに840 PROシリーズのサンプルを無償提供して試していただくキャンペーンを実施しています。これで“味見”して評価していただき、サムスンのSSDを使いこなして欲しいと思っています。

―― パートナー向けの認定やサポートの拡充は。

岡田氏:保守サポートサービスの会社は今後増やしていきたいと思います。ただ、販売のレイヤーは薄くして、コストを下げる方向でやっていく考えです。

 まずは特徴を知ってもらい、少しずつ導入実績を積み重ねていきたいです。

―― いまデータセンターでの導入事例は。

岡田氏:サービスが始まっているのは、さくらインターネット様があります。そのほか、840 PROをご評価いただいているところがいくつかあります。

―― データセンターの現場に伝えたいことは。

岡田氏:今は容量あたりのコストでHDDと比較されることが多いですが、IOPSあたりのコストではHDDを抜いています。そのあたりを考慮して、積極的にSSDを使ってほしいです。

 いま、ビッグデータという言葉が良く使われます。集める段階ですと容量の大きいHDDが有利ですが、分析する段階になればIOPSの高いSSDが有利になってくると思います。

――ありがとうございました。

(高橋 正和)