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MicrosoftはDellの敵なのか友人なのか? マイケル・デルCEOとサティア・ナデラCEOが対談

Dell World 2015レポート

MSのサティア・ナデラCEOが登場、MSは友人なのか敵なのか?

 基調講演の後半には、約25分間にわたって、米Microsoftのサティア・ナデラCEOが、ゲストとして登壇。Bloomberg Westのアンカーであるエミリー・チャン氏が、2人に質問しながら対談を進行していった。

米Microsoftのサティア・ナデラCEO
対談形式で進められた

 チャン氏は、「Microsoftが開発した強力な技術を軸に、Dellはその惑星の周りで軌道を描いているという構図だったが、DellがEMCを買収し、Microsoftが自らPCを発売しはじめたことで、関係が変わってきたのではないか。友人なのか、敵なのか」と切り出した。

 デルCEOは、「友人だ」と答えながら、「顧客にとっては選択肢が多い方がいい。また顧客のタイプもさまざまである。これまでの長年の提携関係は変わらない。MicrosoftがSurfaceで狙っているのは、新たなスペースを開拓するということ。Windowsプラットフォームを前進させようとしている。私は、その取り組みにワクワクしている。なぜならば、Windows 10のエコシステムが発展することになるからだ。Surfaceの価格はちょっと高いが(笑)、すばらしい製品だと思っている」とコメント。

 さらに、ナデラCEOが「Microsoftは、Dellのハードウェアを数多く利用している」と語ったことに対して、「MicrosoftはDellにとって最大の顧客のひとつである」とした。

 ナデラCEOも、「基本となる考え方は友人である」とし、「これは、顧客に貢献するための友情である。また、エンタープライズユーザーに対しては、さらに多くの企業を巻き込んで協業している。Windows 10におけるわれわれの目標は、エコシステムを拡大し、市場を刺激し、新たな需要を生み出すことにある。すでに、デバイスは出尽くしたという見方はあっていない。クラウドも同様であり、いまハイブリッドコンピューティングの世界が始まろうとしている。DellによるEMC買収によって、協業の範囲が広がることになる」などと述べた。

 クラウド市場における取り組みについては、「クラウドはいくつかの種類がある。現在、エンタープライズのワークロードは1億6000万件にものぼり、そのうち、1億から1億5000万件がパブリッククラウド上に乗っている。残りがオンプレミスか、プライベートクラウドである。そして、そのうちのほとんどが仮想化されている」とナデラCEOが発言。

 これに対してデルCEOは、「Dellは、Microsoft Azure向けに機器を提供したり、顧客に提供したハードウェアで、Azureを活用してもらうという例もある。どちらもメリットのある使い方だが、これを突き詰めた最終的な答えは、ハイブリッドクラウドとしての活用にある」などとした。

 AWSへの対抗については、ナデラCEOが「パブリッククラウドでは、シアトル同士の戦いのようになっているが、われわれはマージンから考えるということはない。どれだけのインパクトをもたらすかということを考えている。いま、毎月5万件のOffice 365のサブスクリプションユーザーが増えている。Skype for Businessのユーザーも増加している」とコメント。

 「かつては中小企業にサーバーを買ってもらおうと思っていたが、そうした市場において、クラウドを活用していただいている。いまはクラウドビジネスは、80億ドル以上の収益規模にまで拡大した。100万台以上の機器がクラウドで稼働しており、勢いがついている。だが、すべてがパブリッククラウドにはならない。10%がクラウドのみの企業になり、10%がオンプレミスだけを利用する企業になる。つまり、多くの人たちがハイブリッドクラウドになると信じている。800万台のサーバーが毎年出荷されているが、ハイパースケールの事業者がそのうち200万台を利用。あとの600万台のインフラに対して新たな提案が必要になる。この市場も、将来的には、ハイブリッドクラウドの世界へと移行していくだろう」とした。

 最後に、32年間にわたり経営トップとして務めてきた経験から、CEOに就任してから1年半のナデラ氏にアドバイスはあるか、と問いかけられたデルCEOは、「サティアとは、定期的に連絡を取っている。サティアからアドバイスをもらったこともあり、私からアドバイスしたこともある。これは2人のプライベートな話なので、内容は明らかにできない」としながら、「2人に共通しているのは、企業、業界に対して、長期的な視点を持っていることである」とコメント。

 ナデラCEOは、「マイケルは、Dellの創業者というだけでなく、IT業界の立役者である。引き続きすばらしいことをしている。『大胆であれ、そして正しくあれ』ということを実践している人物である」と返していた。

大河原 克行