「Windowsの再創造を実現するのがWindows 8だ」~米Microsoftシノフスキー氏がその特徴を説明

Windows Developer Days基調講演


東京・芝公園のザ・プリンスパークタワー東京で開催されたWindows Developer Daysの様子

 日本マイクロソフト株式会社は4月24・25日の2日間、東京・芝公園のザ・プリンスパークタワー東京で、開発者を対象とした「Windows Developer Days」を開催。初日となる24日には、Windows OS 開発の責任者である米Microsoft Windows&Windows Live担当プレジデントのスティーブ・シノフスキー氏が基調講演を行った。

 Windows Developer Daysは、有料のイベントで、事前に2300人が登録。シノフスキー氏の基調講演には2000人以上が参加した。当初予定では午前10時から基調講演の開始が予定されていたが、殺到した参加者に受付手続きに時間がかかったため、基調講演の開始が35分遅れてはじまった。

 昨年秋に米国で開催した同社最大の開発者向けイベントBuildの参加者が2000人を下回っていたことに比べると、今回のWindows Developer Daysでの2000人以上の参加数は、同社の開発者向けイベントとしては過去最大のものとなった。日本の開発者の関心の高さを示したともいえる。


会場は長蛇の列となり、基調講演の開始が約35分遅れた

 

シノフスキー氏、Windows 8の特徴を語る

米Microsoft Windows&Windows Live担当プレジデントのスティーブ・シノフスキー氏

 立ち見がでるほどの聴衆を前に、「次世代 Windows プラットフォームの可能性」をテーマに講演したシノフスキー氏は、「Windowsの再創造(Windows Reimagined)を実現するのがWindows 8。Windows 7の基盤の上で作りこんだものである」としたほか、「2月から公開しているWindows 8 Consumer Preview版では、Windows 7の2倍も利用されている」などと語った。

 まず、シノフスキー氏は、Windows 8の特徴として、「ほしいアプリがすぐそこに」、「クラウド革命」、「Windowsストア」、「Internet Explorer 10(IE10)」、「自宅でも職場でも」、「どんなデバイスでも最高な使い心地」、「強固な基盤の上に構築」の7点をあげたスライドを示しながら、「Windows Storeを通じて数々のアプリケーションが簡単に入手できる環境は、開発者にとってもビジネスチャンスを生むことになる。また、IE10によって埋没感のある利用が可能になり、アプリケーション同士の連携も可能となっている。そして、これらの機能を、あらゆるデバイスで楽しむことができるのがWindows 8の特徴であり、妥協のないOSに仕上がっている」と語った。

 特に「強固な基盤の上に構築」という点では、Windows 7の基盤をもとにして開発していることや、Windows 7を上回る数々の機能を搭載していることを強調しながら、高い互換性を有し、Windows 7で動作するアプリケーションが使用可能であること、Windows 8上ではアプリケーションの起動を速めていること、少ないメモリでも動作させることができることなどを紹介した。


Windows 8は「Windowsの再創造」であると定義するWindows 8の7つの特徴
日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows統括本部の藤本恭史本部長

 ここで、日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows統括本部の藤本恭史本部長が登場し、マルチタッチ機能を搭載したPCを使いながら、Windows 8をデモンストレーションしてみせた。

 藤本氏は、Windows 8から採用された、ピクチャーパスワードと呼ばれる新たなログイン方式を紹介し、「好きな写真の上を、線、丸、点という動作で入力する、セキュアなログイン方式」としながら実際にログインしてみせたほか、メトロインターフェースの特徴を紹介し、「地下鉄の窓の外をみると、風景が流れていくようにみえることからついた名称がメトロ。画面サイズにとらわれずに、アプリケーションなどをタイルで表示することができる」などとした。

 また、IE10も起動してみせ、画面一杯にサイトが表示される様子などを示しながら、「表示されている画面に120%集中できるものであり、さらにセキュリティも強化したブラウザになっている」などとした。


IE10のデモンストレーションの様子。画面一杯に広がる

 加えてWindows 8の操作上の大きな特徴である「チャーム」機能についてもデモンストレーション。アプリケーションごとに異なるチャームが表示され、操作性を高めていることなどを示した。

 また、「Windows 8では、アプリケーションとアプリケーションが連携し、データを相互に受け渡すといったことが容易にできる。アプリケーションが持つ固有の付加価値を、ほかのアプリケーションが持つ付加価値と組み合わせることで、さらに新たな価値を生むことができる」とコメント。写真データを共有したい場合に、チャームから「共有」を通じて活用できるアプリケーションを選択し、用途に応じて選択できるといった使い方などを行ってみせた。

 さらに、Windows 7向けのアプリケーションを動作させることができるデスクトップモードについてもデモンストレーション。「スタートボタンはないが、Officeのアイコンをタップすると、一瞬にしてアプリケーションが起動するという特徴がある。OSのプロセスの最適化などによって既存のアプリケーションもすばやく使ってもらえる環境を実現した」という。


デスクトップモードの様子短時間に複数のアプリケーションを起動させてみせた

 

Windowsを持ち出せる「Windows To Go」

Windows To Goをデモンストレーションする藤本業務執行役員

 続いて、藤本氏がデモンストレーションしたのが「Windows To Go」の機能だ。これはUSBメモリのなかにWindows 8のユーザー環境を格納。Windows 7搭載PCでも、このUSBを差し込むだけで、Windows 8環境でPCを利用でき、さらにUSBを抜くと、60秒後には自動的にシャットダウンする。「リモートワークなどにも適した機能でありWindows 7のPCであっても、USBだけでWindows 8の環境でPCを利用できるようになる」などとその利便性を語った。

 再び、シノフスキー氏が登壇し、アプリケーションについて言及。「アプリケーションこそが、Windows 8の中核になる」とし、Windows 8に標準搭載されたアプリケーションや、アプリケーション同士の連携による相乗効果、メールやカレンダー、SkyDriveなどのマイクロソフトが提供するアプリケーションの強みなどを紹介してみせた。


Windowsプラットフォームを解説

 さらにシノフスキー氏は、Windows 8のプラットフォームについて解説。「信頼性の高いWindows Core OS Servicesをコアに開発したのがWindows 8。その上にWinRT APIが用意されており、これがセキュアで信頼性の高い環境を実現することにつながっている。開発者は、好きな開発ツールや言語を使って開発することができる。Webコンテンツの開発者はC♯を活用したと考えるだろうし、Visual BasicやJava Scriptも活用できる。ビューの部分には、HTMLやCSSだけでなく、XAMLも利用できる」と語った。

 また、「x86およびARMで実行できるクロスアーキテクチャであること、既知の知識を活用できるようにさまざまなツールを利用できること、アプリケーションの展開も迅速にできる環境が整っていること、分離されたアプリコンテナにより、高いセキュリティが実現できること、Windows App Contractsによるアプリケーションの統合が可能になることなどが、Windows 8で実現されるメトロスタイルのアプリケーション開発の特徴といえる」などと語った。


日本におけるWindows市場規模は、ほかのOSの合計を超える世界市場においても同様の結果だという
Windows Storeの様子

 Windows Storeについては、利用者にとってアプリケーションを見つけやすく、わかりやすい承認プロセスを有していること、開発収益を最大化できること、売れ行きだけでなく、製品品質などについても分析できる機能を提供していることなどをあげた。
「日本のWindows市場は2970万台に達し、AndroidやiOSを足した市場よりも規模が大きい。これは世界市場でも同様であり、Windows 8を出荷した途端に5億台の市場でこのOSが利用できるようになる」などと、Windowsプラットフォームの市場規模の大きさを強調した。

 ここであらためて藤本業務執行役員が登壇し、Windows Storeを紹介。さらに、ゲームソフトを含むいくつかのサードパーティー製のアプリケーションをデモンストレーションしてみせた。また、このなかでは、Microsoft Dynamicsもデモンストレーション。「タイル型の表示によって、ダッシュボード機能として情報のサマリー表示でき、情報を一覧で把握できるようになる」などと、Windows 8環境ならではの特徴を示した。

 藤本業務執行役員は、「日本独自のアイデアにあふれたアプリケーションが登録されることを期待している」と、基調講演を聴講している日本の開発者に対してエールを送った。


Microsoft Dynamicsではタイル表示によって、サマリーを一覧できる

 

6月第1週に、Windows 8のRelease Preview版を公開

 最後にシノフスキー氏は、「Windows 8はタブレットやラップトップ、オールインワンPCなど、どんなデバイスでも最高の使い心地を提供し、タッチ、マウス、キーボードといった入力デバイスもそのまま利用できる。各社から多くのデバイスが登場することになり、さまざまなアーキテクチャに最適化したOSになる」と語りながら、壇上に展示されたハードウェアを紹介。さらに、サプライズの発表として、2012年6月第1週に、Release Preview版と呼ばれる次期マイルストーンを公開すると発表。「これはWindows 8の開発が順調に進んでいることの証明」などとした。なお、Release Preview版の詳細については言及しなかった。

 シノフスキー氏は、「これから大きなチャンスがある。マイクロソフトでは、デベロッパーキャンプやセミナーを通じて、Windows 8に関するさまざまな情報を提供し、トレーニングを行っていく考えだ。今回のイベントを通じてWindows 8に関する知識を共有してほしい」と呼びかけ、基調講演を終えた。


数々のハードウェアも紹介。これらはWindows 7搭載のタブレットやPCなどだシャープのBig PadにもWindows 8を搭載し、自らデモンストレーションした
壇上に展示されていた数々のハードウェア新たなマイルストーンとしてRelease Preview版を発表
関連情報