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「GoogleやAWSの案件にはすべて勝ってほしい」~米Microsoftケビン・ターナーCOO
(2015/7/16 12:45)
技術への信用が揺らいでいる?
一方、米Microsoftのリーガル&コーポレートアフェアーズ担当のブラッド・スミス エグゼクティブバイスプレジデントは、「世界が技術を信用してくれるためにはどうしたらいいのか」と切り出し、ITを取り巻く現状について説明した。
2014年11月にソニー・コンピュータエンターテインメントに対するハッキングが発生したこと、攻撃の発端となった「インタビュー」という映画を、Microsoftはオンラインで配信する決定をしたこと、2015年1月には、フランスで出版社に対してテロ攻撃が行われたこと、ブラジルにおいては、Microsoftの幹部社員に対して、Skypeのデータ提出を迫り、幹部社員が逮捕されるという事件が行ったこと、エドワード・スノーデン氏による米国家安全保障局が個人情報を収集していることを告発した例などを挙げながら、「技術への信用が揺らいでいる」と語る。
「Microsoftは、言論の自由を支持している。また、CEOのサティア・ナデラは、『今後、われわれは、自分たちの価値観に基づいて行動しなくてはならない』ということを社員に対するメールのなかで語り、技術を前進させないといけないが、普遍的な価値観にのっとって前進しなくてはならないことを徹底させた。個人や組織に対して、力を与えるためには、技術に対する信頼が持てるようにしないといけない。Microsoftは、個人情報の保護と、言論の自由、そして、透明性を持つことに対して力を注いでいる。Microsoftは、これまでに3回、米国政府を訴えている。そして、ISO27001の認定を取得し、データを保護しているのは、Microsoftだけである」などとした。
米Microsoftのスティーブ・グッゲンハイマー コーポレートバイスプレジデント兼チーフエバンジェリストは、「業界の変化はこれまで以上に進展し、破壊的な変革が起こっている」と切り出しながら、いくつかの事例を紹介した。
Connected Carならぬ、Connected Cawとして、牛の足にセンサーをつけてデータを取得する取り組みについて、「牛が歩き回るのをセンサーで計測することで、生まれてくる牛の性別を分けることができる。また、牛1頭あたり最も牛乳を出すことができる国はイスラエルである。酪農業界では、イスラエルの牛のデータをクラウドに乗せて、牛の健康状態を常に監視している。ここでは、一番多く、牛乳が出せるようにするにはどんな飼育をすればいいのかといったことがわかるようになっている」とした。
さらに、「Microsoftでは、デペロッバーやISV向けに、数多くの支援策を用意している。MSDNやバーチャルアカデミー、MVPといった技術支援だけでなく、ビジネスを行う上でもさまざまな支援がある。今年は、マーケットプレイスなど、Go To Marketの領域に力を注いでいく」と述べた。
成功しているパートナーは何をしているか
米Microsoft ワールドワイドパートナーグループのフィル・ソルジェン コーポレートバイスプレジデントは、「成功しているパートナーはなにをしているか」とし、それをいくかの観点から説明した。
「売上高の50%以上をクラウドが占める企業は、そうでない企業に比べて、新たな顧客数が1.3倍であり、利益は1.4倍、利益率は1.5%高いという結果が出ている。また、EBITAは5倍高い」としたほか、「成功している企業は、独自のIP(知財)で差別化が行える企業、ソーシャルなどを活用して、新たな顧客開拓など取り組むデジタルマーケティングにたけた企業、顧客を獲得し、維持するために力を入れ、アップセル、クロスセルに力を注いでいる企業、業績測定や人材測定を通じて、インセンティブを設けている企業である。これらの取り組みが、成功を持続することにつながっている。特に、Microsoftでは、顧客の維持に対して力を注いでいる企業を評価している。会場に参加している企業は、これらの4つのポイントにおいて、自らがどの位置にあるのかをベンチマークをしてほしい。それを検証するためのシュアステップベンチマークプログラムを用意している。ぜひ、商機を獲得してほしい」などと語った。
また、Microsoft オーストラリアのピップ・マーロー マネージングディレクターは、オーストラリアにおける3つのパートナーの事例を紹介しながら、「これらの3社に共通していることは、いずれも顧客を中心に考えていること、すばらしいリーダーシップによって変革を進めていること、すばらしいパートナーシップによって、成功を収めているということ。Microsoftは、グローバルでパートナーに対する支援を行い、パートナーと一緒になって将来の姿を作ることになる」と述べた。
米Microsoft ワールドワイドパートナーマーケティング&プログラム担当のガブリエル・シュースター ゼネラルマネージャーは、人材育成に対して、さまざまなプログラムを用意していることを示したほか、顧客とのコネクションにデジタルマーケティングの活用を提案。「IDCの協力を得て、デジタルマーケティングにおけるベストプラクティスを集め、最強のデジタルマーケティングを行えるようなガイドブックを提供する」とした。
また、「これまではコンピテンシー取得にはMCPが必要であったが、Microsoft Azure関連のコンピテンシー取得においては、MCPを排除し、より簡易にコンピテンシーを取得できるようにした。この仕組みに対する評価は高い。Microsoftが用意したトレーニングプログラムや認定制度を早く受けてもらい、ビジネスに生かしてもらいたい。さらに共有したい事例があれば、ぜひMPN(Microsoft・パートナー・ネットワーク)ポータルに登録してほしい。また、MPNを通じて、補完ができるパートナー同士が結びついて新たな価値を生むこともできる」などと語った。
ここでは、パートナー企業として、NINTEXの事例を紹介。同社創業者であるブレット・キャンベル氏が登壇し、Microsoftのチャネルを活用して全世界に販路を広げた例をあげた。
最後にシュースターゼネラルマネージャーは、「Microsoftは、パートナーエコシステムに対して投資をしていく。それによって、エコシステムにかかわるコストを下げたいと考えている。その分を顧客のマーケティングに使ってもらいたい」と述べた。
サティア・ナデラCEOが登場した初日の基調講演は、当初予定を大幅に上回る3時間15分と長いものになったが、この日の基調講演も、同様に大幅に予定時間を上回り、3時間10分を超えるものとなった。だが、途中退席の参加者は少なく、最後まで多くの人たちが話を聞いていたのが印象的だった。
なお、来年のWorldwide Partner Conference(WPC) 2016は、カナダ・トロントで開催されることが発表されている。