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政府が目指すべき「クラウド社会」のイメージは?

オープンデータとオープンクラウドが作る新しい行政サービスを議論

「自由討論:オープンデータとオープンクラウドが作る新しい行政サービスとは」の様子

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は16日、グランドハイアット東京(東京・港区)において、「Open Cloud Summit Japan」と「IBM Cloud Vision 2014」の2つのイベントを開催。それにあわせて、「自由討論:オープンデータとオープンクラウドが作る新しい行政サービスとは」を開催した。

 オープンクラウドとオープンデータ活用による新時代の行政サービス、国民サービスに関する自由討論を行う場として開催したもので、「オープンデータ、オープンガバメントへの関心が高まり、基盤となるクラウドも、標準化やセキュリティといった課題を克服し、業界を超えた社会インフラとなっている。政府のオープンデータ促進や、行政サービスのクラウド化方針を受けて、官民の意見交換を通じて、今後、政府が目指すべき『クラウド社会』のイメージを模索するのが狙い」(日本IBM 執行役員 インダストリー事業本部公共・通信事業部長の志済聡子氏)としている。

 同社では、議論の内容を日本語および英語でまとめ、Webページなどを通じて、社内外へ発信する予定だという。

 今回の自由討論の参加者は、以下の14名。

・東京大学 大学院情報学環 教授の越塚登氏
・東京大学 大学院情報学環 特任教授の石川雄章氏
・内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 企画調査官の田雑征治氏
・経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課長の江口純一氏
・総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 企画官の井幡晃三氏
・総務省 行政管理局 行政情報システム 企画課企画官の阿向泰二郎氏
・鯖江市 情報統括監の牧田泰一氏
・横浜市 政策局 担当理事の長谷川孝氏
・横浜市 政策局 政策課の関口昌幸氏
・千葉市 総務局次長 CIO補佐監の三木浩平氏
・日本経済新聞社 論説委員の関口和一氏
・米IBM Distinguished Engineer and CTO Cloud Performance, IBM Software Group担当のアンドリュー・ヘイトリー氏
・日本IBM 執行役員 インダストリー事業本部公共・通信事業部長の志済聡子氏
・米IBM Distinguished Engineer, CTO - Smarter Cityの榊原彰氏
・日本IBM 理事の井筒郁夫氏
・日本IBM 政策渉外部長の塚本恵氏

IBMの考えるOpen Dataとは

 まず、米IBMのヘイトリー氏が、「IBMの考えるOpen DataとCloud」についてプレゼンテーションを実施。「オープンデータは、最も成長が激しく、関心を集めている分野だといえる。政府と市民を効果的に結びつけており、企業に対する価値も大きい。ソーシャルデータとオープンデータを組み合わせることで、市民、企業、政府の新たな事業、新たなサービスにつながっている」と語り、ダブリン市のDublinkedの事例を示しながら、オープンデータの活用を通じて、起業が増えたことや、雇用が増えるという予想外の成果につながった例を示した。

 また、「市民をはじめすとするオープンデータを利用する人たちが、データの意味を理解することができなかったり、ほかのデータと連携したりすることができなければ、情報の価値は減少する。見せ方に対する投資していくことが必要だ」としながら、「一方で、オープンデータにアナリティクスを組み合わせると、データはサービスになる」と述べた。

 さらに、IBMが政府と連携した事例についても説明。リオデジャネイロでは、気象情報を利用して、災害、防災対策への展開、電力会社への影響度合いを推し量るといった用途に活用。また、漏水対策では、道路局、水道局のオープンデータを活用し、これに、市民のソーシャルメディアのデータを組み合わせることで、140億ドルの損失を防ぐことができたという。

米IBM Distinguished Engineer and CTO Cloud Performance, IBM Software Group担当のアンドリュー・ヘイトリー氏
ダブリン市のDublinkedの事例

 続いてプレゼンテーションを行った東京大学の越塚氏は、「オープンデータは新たな官民の連携手法になる。データ公開は官の役割であり、それを情報サービスとして活用するのが民となる。行政情報サービス提供の受け皿となる情報産業が誕生することになり、公共情報産業といえる」と話す。

 続いて、「日本は世界的にみても、行政サービスは民営化している先進国である。電気やガス、水道、道路、鉄道、バスなども民営がサービスしている。だが、これは、オープンデータにとっては裏目になる。民間企業がなぜデータをオープン化しなければならないのかという議論になるからだ。日本は民営化が進んだため、世界のオープンデータ化の流れに追随できないということにもなりかねない」と指摘した。

 また、「公共情報サービスに関しては、ダウンロードだけでなく、アップロードを含めたすべてにOpen APIを提供すべきである。また、税金で作ったデータをオープンにするならば、税金で作ったソフトウェアもオープンにすべきである」と提言。政府調達ソフトウェアのオープンソース化を推進にも言及した。

東京大学 大学院情報学環 教授の越塚登氏
あらゆる手続きにOpen APIを提供すべきという

(大河原 克行)