仮想化道場
NVMeフラッシュメモリで高いパフォーマンスを出す13世代のDell PowerEdge
(2015/3/12 06:00)
PowerEdge R630を試してみた
では、PowerEdge R630の実機を見てみよう。
1Uサーバーといえば、ストレージが数本しか搭載できないと思われるが、PowerEdge R630は、2.5インチドライブを最大10台、もしくは、1.8インチドライブなら24台搭載できる。2.5インチドライブモデルでは、2.5インチのNVMeフラッシュドライブを4台搭載することも可能だ。
これだけのストレージを搭載できるなら、2Uサーバーは必要ないと思うほどだ。熱に関しても、プロセッサが低消費電力化されているため、数世代前のPowerEdgeサーバーから考えると、信じられないぐらい低くなっている。
ただ、サーバーの内部ファンは1Uサイズの小さいモノが7つ搭載されているため、2Uサーバーに比べると音が大きくなっているように感じた。データセンターに設置することを考えれば、それほど気になるわけではないが。
PowerEdge R630の電源を入れた後、iDRACでファームウェアやOSのドライバを一括してインストールできるようになったのは、非常にうれしい。いつも、テスト環境を整えるのに、OSのインストールやドライバのインストールに時間がかかったが、iDRACのメニューに従えば、自動的にファームウェアのアップデートやドライバのインストールを行ってくれる。
今回お借りしたPowerEdge R630は、Xeon E5-2695 v3を2ソケット採用したモデルだった。このため1ソケットあたり14コア/28スレッド、トータル(2ソケット)で28コア/58スレッドを2.3GHzで動かすサーバーとなっている。
数年前だと、これだけのコア数と大容量のメモリを持つサーバーは、4ソケットなどのハイエンドのサーバーだったが、2014年には1Uサーバーで実現したことに心底驚いている。
今回もWindows Server 2012 R2をインストールして、各種のベンチマークを動かしてみた。
まず、マルチコアのパフォーマンスを測るために、CINEBENCH R15を動かしてみた。さすがに24コア/56スレッドを持つサーバーだけあって、スコアは3526と、ワークステーションやデスクトップパソコンのスコアと比べて、けた違いのパフォーマンスを示している。
もう一つ、CPUやメモリの性能を測るために、SiSoftware Sandraを動かしてみた。Xeon E5ー2600 v2シリーズで使用していたDDR3 1866MHzからDDR4 2133MHzに変更されたことで、メモリアクセスのパフォーマンスが大幅にアップしている。また、Xeon E5-2600シリーズではメモリチャンネルが4つサポートされているため、DDR4メモリと相まって、91.207GB/秒ものメモリ帯域を実現している。一方消費電力は、DDR4メモリではアクティブ時の電力30%オフ、スタンバイ時電力の50%オフを実現しているので、サーバー全体での省電力化に寄与している。
PowerEdge R630では、最大768GBのメインメモリを搭載できる。広帯域のメモリをこれだけ搭載していれば、多数の仮想環境を動かしたり、インメモリデータベースなどを利用したりすることも可能になる。
PC用のベンチマークPassMarkのPerformance Testを動かしてみると、トータルスコアはそれほど高い数字とはならなかった。個々のベンチマークを見てみると、グラフィックのスコアが悪かったためだ(特に3Dグラフィックが悪かった)。サーバーということで、それほど強力なグラフィックチップは搭載されていないため、これは仕方のないところ。
CPUのベンチマークやメモリのベンチマークを見てみると、高いスコアを示している。また、今回お借りしたPowerEdge R630はストレージにNVMeフラッシュストレージを搭載しているので、ディスクのベンチマークが高くなっている。
サーバーとしてのパフォーマンスを測るため、デルソフトウェアのBenchmark FactoryでTPC-C互換のベンチマークを行ってみた。今回は、あまり時間がかけられなかったため、それほど高い負荷をかけられなかったが、10ユーザーロードまで負荷をかけてテストを行った。
プロセッサのパワーと高速のメモリというおかげもあるが、NVMeフラッシュストレージを使用することで、高速CPUやメモリにあったストレージ環境を実現している。オンライントランザクションのパフォーマンスを測るTPC-Cでは、ストレージのI/O性能がパフォーマンスを左右するため、PowerEdge R630に搭載されたNVMeフラッシュストレージのメリットが出ている。
そこで、NVMeフラッシュストレージのベンチマークを測ってみた。Crystal Disk Markでは、シーケンシャルリードが1337MB/秒と非常に高くなっている。シーケンシャルライトに関しては、750MB/秒とリードに比べると低くなっていた。
さらに、NVMeフラッシュストレージ4台をRAID5設定にしてベンチマークしてみると、シーケンシャルリードはそれほど高くならなかったが、シーケンシャルライトのパフォーマンスがアップしている。もう一つ、512Kのランダムライトのパフォーマンスもアップした。
このほか、ディスクのベンチマークソフトIOMeterを使ってテストをすると、I/Oパフォーマンスが3936.33と、信じられないパフォーマンスを示している。
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記者発表会などでNVMeフラッシュストレージなどのメリットを説明されるが、はっきり言ってピンと来ていなかった。しかし実際にテストしてみると、NVMeフラッシュストレージの性能の高さがよくわかる。今後、サーバーのフラッシュストレージは、SATA接続のSSDから、PCIeに接続されるNVMeフラッシュストレージがスタンダードになってくるのだろう。
ただ、NVMeフラッシュストレージのコストはまだ高いため、できればデルの調達力を生かしてコストを落とし、リーズナブルにしていってほしい。また、Xeon E5-2600 v3シリーズの制限から、NVMeフラッシュストレージは4台までしか搭載できない。プロセッサの仕様が変わらない限りPCIeのレーン数が増えないので、台数を増やせないのが残念なところだ。
PowerEdge R630が搭載できる2.5インチドライブすべて(10台)がNVMeフラッシュストレージにできれば、相当高いパフォーマンスのサーバーを構築できるだろう(その分、ストレージのコストも上がるが)。
なお、今まで、日本の多くの企業では2Uの2ソケットサーバーを導入してきた。これは、2Uサーバーにおける搭載メモリやストレージの容量、用意されているネットワークの種類やポート数などが、1Uサーバーに比べると優れていたためだ。
1Uサーバーといえば、1ソケットサーバーだったり、2ソケットサーバーであっても、メモリの拡張性や、特にストレージの拡張性に制限があった。その点、13世代のPowerEdgeでは、1Uの可能性を大いに感じた。
確かに1Uサーバーでは、搭載できるストレージなどに制限がある。しかし、プライベートクラウドやパブリッククラウドなどを構築する際には、数多くのCompute部(CPUとメモリ)が必要になってくる。またI/O性能が必要な場合でも、NVMeによって高い性能を提供できる。このような用途に、PowerEdge R630はぴったりと言えるだろう。
もちろん13世代のPowerEdgeには、2Uサーバー、タワーサーバーなども用意されている。用途にあわせて、さまざまなサーバーを使い分けていけば、いろんな面で効率のよいデータセンターを実現できるだろう。