週刊海外テックWatch

AIを作った者が自らへの縛りを求める Anthropic CEOの異端の提言

雇用喪失は「バグではなくAIの仕様の結果」

 規制強化の提言と並んで、雇用問題を巡る発言も波紋を広げた。

 Amodei氏は2025年5月28日付のAxiosのインタビューで、AIが今後1~5年以内にエントリーレベルのホワイトカラー職の半分を消滅させ、失業率を10~20%に押し上げる可能性があると警告していた。今回のエッセイではさらに踏み込み、AIによる雇用の喪失は「人間の認知能力を広く複製する、という技術の本質的性質に起因する可能性がある」と述べた。

 Business Insiderはこの一節を「バグではなく仕様」と表現した。AIによる雇用喪失は、システムの不具合などではなく、AIという技術の構造的な帰結だという意味だ。

 AIが本当に雇用を奪うのか、経済学者たちの見方は一致していない。Wall Street Journalは6月9日、16人の著名経済学者へのアンケート調査結果を公表した。「AIは生産性を高めるか」には15人が「Yes」と答えたが、「雇用を増やすか減らすか」では意見が割れた。「喪失」5人、「変化なし」8人、「増加」2人。Harvard Business SchoolのRebecca Henderson氏は「労働者は激しく怒り、それが政治を変えることになるだろう」と予想した。Michigan大学のJustin Wolfers氏は、「批判的思考力を持ち、職場で最もAIに詳しい人間になることだ」とアドバイスする。

 Amodei氏のXへの投稿には、賛否双方が湧き上がった。「よいエッセイだ。多くの点で同意しないが、声を上げてくれてありがとう」という肯定的な声の一方、「自分が先行している間に、他社を止めてほしいと言っているだけだ」という批判もある。規制対応のコストを吸収しやすい先行大企業ほど、新規参入への壁を高くできるという懸念は根強い。

 AIという「パンドラの箱」を開けたAmodei氏自身が、今度は蓋を求めた格好だ。

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 Anthropicは6月12日、国家安全保障上の懸念を理由に、米国政府から「Fable 5」と「Mythos 5」への外国人のアクセスを停止するよう命じられたと発表した。これを受けて全てのユーザーのアクセスを一時的に停止している。

 さらに6月13日、Wall Street Journalは、政府の命令はAmazon CEOのAndy Jassy氏が、「Amazon研究者がFable 5からサイバー攻撃に利用されうる情報を取得した」と報告したことがきっかけだった、と伝えた。

 Amodei氏が求めたのは、業界が主体となって設計する「自発的な規制」だった。しかし届いたのは、政府の強制命令。蓋は、Amodei氏が望んだのと違う形で実現した。