週刊海外テックWatch
現場は不信、経営は焦燥 AI導入を突き動かす「二つの不安」
2026年4月27日 11:20
浮き足立つ経営者
ベンチャーキャピタルAndreessen Horowitz(a16z)の共同創業者で投資家のBen Horowitz氏は、4月14日に開催された同社のカンファレンスで、「創業者の不安(founders’ AI anxiety)」という言葉で、テクノロジー業界の創業者の不安を説明した。「AIによって、自社のビジネスモデルや競争優位性が、一瞬にして無価値になったしまうかもしれない」というものだ。
「テクノロジー業界では、かつて優れた製品を作れば5年から10年は市場をリードできたが、いまや5週間で陳腐化する可能性がある」「これまでのソフトウェアビジネスが顧客データの保持などでロックイン(囲い込み)が機能したが、コードの複製やデータの移行は極めて簡単になった」。Horowitz氏は創業者が感じている“実存的恐怖”の背景を、こう説明する。
これはソフトウェア産業を念頭に置いたものだが、AIが何をどう変えるのかに対する不安はあらゆる業種に広がり、多くの経営者は浮き足立っている。
AltimetrikとHFS Researchが、Forbes Global 2000企業の経営幹部505人に聞いた調査では、AI導入の目標と成果の明確な戦略を持つ経営者は14%に過ぎなかった。大多数が、明確な人的監督、目的、責任の所在なしに実験を行っている状態だという。
「私はこれを『AIモーメント(the AI moment)』と呼んでいる。今すぐ何かをしなければならないという考え方だ」と、同社のチーフAIプラクティショナー、Mark Baker氏はCIO Diveに説明している。Baker氏は「コスト削減は結果であって、戦略ではない」とも述べている。
従業員はAIの有用性を知りながら、会社のAIは信じない。経営者は重要性を知りながら、戦略を持たないまま急ぐ。両者は同じ船に乗りながら、その見ている景色が全く違う。
現場の不安と経営の焦りが、まだ同じ言葉で語られていないことがAI利用の障害となっている。