週刊海外テックWatch

現場は不信、経営は焦燥 AI導入を突き動かす「二つの不安」

「FOBO」、居場所を失うことへの不安

 AIツールが使い方次第で有用であるという認識は、広く浸透している。

 大手監査法人KPMGが米国の従業員数5000以上の組織で行った従業員調査(2025年6~7月実施)では、87%が少なくとも週1回AIを使い、51%は毎日使っていた。そして77%が、「AIで、より価値の高い仕事に集中できる」と答えた。

 KPMGは、従業員によるAI利用が想定以上に進んでいるとして、現場主導の「ボトムアップ」型の活用が広がっていると分析している。

 その一方、従業員の52%が「AIによって最終的に自分の仕事が置き換えられるのではないか」との懸念を持ち、その比率は前年から倍増していた。特にZ世代(10代~30代前半)では、10人中6人が「2年以内にAIに自分の役割を奪われるのではないか」と心配しているという。

 この数字について、同社ヒューマンキャピタル・アドバイザリーのKatie Dahler氏は「従業員はAIを活用して生産性を高めているが、その成果が自分たちに還元される仕組みが見えないのだ」と解説する。

 従業員が心配しているのは、「FOBO(Fear of Becoming Obsolete)」、つまり「気付いた時には自分の役割や技能が時代遅れになっていることへの恐怖」だ。FOBOは、テクノロジーの変化についていけないことの不安を指す言葉で2010年ごろに使われ出した。生成AIの登場で最近、再びクローズアップされている。

 従業員は単純に職場から解雇されるだけでなく、自分のスキルではどこにも居場所を得られなくなるのではないかという不安を持っているのだという。

 一方、経営者側もまた別の種類の不安を抱えている。