枯れたOSの称号を得た「Windows Server 2003 R2」が見せた異例の出足の良さ



 Windows Server 2003 R2が2月3日から出荷され、約1カ月を経過した。

 マイクロソフトでは、「マイナーバージョンアップでありながらも、初期1カ月の引き合いは、当社の予想を大きく上回っている。Windows Server 2003の発売時と出足は変わらないほど」と、その好調ぶりを示してみせる。

 社内でも「枯れたOS」という代名詞がついているほど、安定性、信頼性、管理性という点では高い評価を得ているOSだけに、ユーザー企業の導入もスムーズに進んでいるといえそうだ。

 実際、マイクロソフトでも、「社内のアプリケーションソフトを対象に検証したところ、Windows Server 2003 SP1環境と100%の互換性があった。その実績からも安心して使ってもらえるOSであることがわかるはず」と語る。

 Windowsに対して、初めてついた「枯れたOS」という称号。Windows Server 2003 R2は、多くの人が予想する以上に、ユーザー企業にスムーズに浸透することになりそうだ。


Windows Server 2003 R2が担う役割とは

Windows Server 2003 R2のパッケージ

 Windows Server 2003 R2には、技術的な進化とは別に、ひとつの役割がある。

 それはひとことでいえば、初めて行われることになった「リリースアップデート」であるという点に尽きる。

 マイクロソフトは、サーバーOSのロードマップを提示し、4年ごとのメジャーリリース版の投入と、メジャーリリースから2年目に行われるリリースアップデート製品の投入をコミットしている。

 今回のWindows Server 2003 R2は、そのコミットを発表してから最初のリリースアップデート製品になるのだ。

 マイクロソフトがサーバーOSのロードマップを明確化している背景には、いくつかの理由がある。

 ひとつは、企業のIT投資計画の立案および計画遂行を行いやすくすることだ。

 企業の情報システム部門は長中期的な視点を踏まえて投資計画を立案するが、マイクロソフトのサーバーOSの進化は、それを大きく左右する。基幹系にもWindows Server OSが利用されるようになったことで、サーバーOSがどのタイミングで、どういった進化が図られるのかといったロードマップを明らかにすることが、全世界の主要なユーザー企業から求められていたのだ。

 そしてもうひとつの理由は、ソフトウェアアシュアランスの無料アップデートを含むライセンス契約に対応する、という点である。この契約を履行するためにも、リリースアップデート製品となるWindows Server 2003 R2の投入は不可欠だったのだ。


メジャーリリースやSPとの違いは何か?

サーバー製品のロードマップ。メジャーリリース版であるLonghorn Serverの名前も見える

 では、Windows Server 2003 R2で開始されたリリースアップデート版とは、メジャーリリース版、そしてサービスパックとはどこが異なるのだろうか。

 マイクロソフトは、Windows Server 2003の発売から4年後となる2007年には、メジャーリリース版としてLonghorn Serverと呼ばれるサーバーOSを投入する計画を明らかにしている。

 このメジャーリリースバージョンアップでは、アーキテクチャーそのものを変更することになり、まさに文字通り、大きな進化を遂げることになる。これまでの例でいえば、既存アプリケーションや周辺機器との互換性といった点で問題が発生しやすく、情報システム部門は慎重な対応が求められる。

 一方、リリースアップデートとは、従来のサーバーOSと同じアーキテクチャーをベースに、新たな機能を追加するというものだ。パッチに関しても、従来のOS向けにサービスパックで提供されたものと同一のものが提供されることになる。

 リリースアップデート版とメジャーリリース版との差はその点にあるのだ。

 では、リリースアップデートとサービスパックとの違いはなにか。

 サービスパックの場合は、セキュリティパッチや修正パッチの提供など、一般的に、修正モジュールの提供という狙いを持ったものだ。そのため、サービスパックを導入すると、その時点で、OSのほぼすべてが、最新モジュールに書き換えられることになる。それに対して、リリースアップデートとなる今回のWindows Server 2003 R2では、ひとつの例外を除くと、すべての機能が追加で提供され、ユーザー側で選択して利用できるようになる。

 ここでいう唯一の例外というのは、マイクロソフト管理コンソール(MMC)が、従来の2.0から、3.0へと自動的にアップグレードされる点だ。

 これは、Windows Server 2003 R2で追加される新たな機能のベースとなる役割を果たすため、強制的にアップグレードしている。

 つまり、これを除けば、ユーザー側の判断でアップグレードの可否ができる。そこが、サービスパックとの違いということになる。


ライセンス形態にも差が

 また、ライセンス形態も異なる。

 メジャーリリースでは、ソフトウェアアシュアランス契約以外は、アップグレードパスが用意されず、新規のライセンス契約が必要であるのに加え、クライアントに関するCALも新規の契約が必要となる。だが、サービスパックでは、新規ライセンス契約も、CALの新規契約も必要はない。そのまま適用できるのだ。

 これに対して、リリースアップデートの場合、メジャーリリース同様にアップグレードパスが用意されないが、CALに関しての新規契約が不要となる。この点でも、メジャーリリースとサービスパックの中間的な位置づけといっていいだろう。


枯れたOSとしての真価を発揮

Windows Server 2003 R2の“5つの特徴”

 ところで、Windows Server 2003 R2は、ストレージ管理の効率化、ID&アクセス管理の拡張、ブランチサーバーの管理、バーチャライゼーション、Webアプリケーションプラットフォームという5つの特徴があるとされている。

 その機能とメリットについては、すでに多くの記事で触れられているので別稿に譲るが、これらの機能を活用することで、管理者、エンドユーザーには大きなメリットが享受されるのは明らかだ。

 また、これまではWindows Server 2003をファイルサーバーOSとしての活用だけにとどめていたユーザーに対しても、リプリケーション機能や、FSRM(ファイルサーバーリソースマネージャ)で新たに提供される管理機能によるマルチパーパスOSとしての強みをあらためて提案できる。

 さらに、Windows Server 2003 SP1で提供されていた.NET Framework 1.1は、Windows Server 2003 R2では同2.0へと進化。これによって、x64プラットフォームとしての環境が提供されるとともに、Visual Studio 2005もx64環境へと進化。開発環境からエンド・トゥ・エンドで64ビット環境が実現される。

 Webアプリケーションのパフォーマンスも2倍以上へと向上し、Webアプリケーションプラットフォームとしての位置づけが、Windows Server 2003 R2では強化されることになる。

 ファイルサーバーとしての利用が多いとされるLinuxとの差はここにもあると、マイクロソフトでは訴える。

 こうして見ると、Windows Server 2003 R2は、信頼性、安定性の高さ、そして管理性といった点で、まさに枯れたOSとしての特徴を備えている。

 来年のLonghorn Serverの投入を控えながらも、Windows Server 2003 R2への移行を図るユーザーが多いのは、まさに「枯れたOS」としての進化が受け入れられているからだといえる。

関連情報
(大河原 克行)
2006/2/28 00:00