“特急開発”ツールの進化系

Part 2:手づくりで再構築に挑むユーザー


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ツールを駆使して少人数で短期開発~アプリケーション資産も有効に再利用

 汎用プログラミング言語による開発に比べて習得が容易で生産性も高い。こんな最新ツールの特性を生かし、 メーカーや小売業など多業態を支える基幹系を少人数で次々と再構築してきた鈴廣蒲鉾本店と、 アプリケーション資産の再利用を実現した全国農業協同組合連合会の取り組みを紹介する。

 生産性の高いツールを駆使して、基幹系システムの独自開発に挑むユーザー企業は思いのほか多い。実例を列挙するなら、良品計画とローソンがユニバーサル・シェル・プログラミング研究所の「ユニケージ開発手法」を用いて、マーチャンダイジングと全国店舗の売上管理システムをそれぞれ独自開発(表 2-1)。ドトールコーヒーはウルグアイのアルテッチ製アプリケーション開発環境「GeneXus」を使って物流販売管理システムを構築した。アトリスの「PEXA Suite」を使ったプロジェクトも、2010年11月時点で最低4件が同時進行中である。食品卸売会社の基幹系再構築など、イスラエルのサピエンス・インターナショナル製品「Sapiens」によるプロジェクトも盛んだ。

【表2-1】主に基幹系システムを想定したアプリケーション開発環境を使って独自開発に挑むユーザー企業の例

 以下では、設計/開発からメンテナンスまで自前で取り組む小田原の鈴廣蒲鉾本店と、独自開発した基幹系システムをグループ内で横展開している全国農業協同組合連合会の取り組みをみていく。

【鈴廣蒲鉾本店】多様な業態支える基幹系を少人数で相次ぎ再構築

 「OSのバージョンアップがあろうと、すぐにシステムを手当てできる体制が整った。改修のたびに社内稟議に時間を要し、メンテナンスが後手に回ることもない」。

 こう話すのは、鈴廣蒲鉾本店で情報システム部部長を務める吉田敏之氏である。同社はGeneXusを用いて段階的に進めてきた基幹系システムの再構築を2009年10月時点でほぼ完了。GeneXusが自動生成したプログラムを再コンパイルすることで、種類やバージョンが異なるOSに基幹業務アプリケーションを移植できるようになった。加えて「プログラムの中身を情報システム部のメンバーが理解しているので、自らの手でメンテナンス可能にもなった」(吉田部長)。

 鈴廣は多様な“顔”を持つ。かまぼこや干物、地ビールのメーカーであることはもちろん、直営店の運営や通信販売を手掛ける小売業、百貨店やスーパーへ商品を販売する卸売業、さらには懐石料理を提供する外食産業にいたるまで営む事業は多岐にわたる。それだけに汎用的なパッケージソフトで全事業をカバーする基幹系システムを実現するのは難しく、以前から独自開発の方針を採ってきた。ただし、開発やメンテナンスの実作業は協力会社に依頼していた。

 同社が設計/開発からメンテナンスまで、完全な自前主義の道を本格的に歩み出したのは2008年6月のこと(図2-1)。それまでに店舗システムや受注システムの再構築で利用経験があったGeneXusを用い、情報システム部2人と協力会社2人で生産管理システムを再構築。6カ月後の12月にカットオーバーした。その後は情報システム部2~3人だけで他の基幹系システムを次々と新調し、およそ1年半後に基幹系の再構築をほぼ終えた。同時並行でグループウェアシステムも自前で開発している。

【図2-1】鈴廣蒲鉾本店における基幹系システム自社開発の経緯。2006年夏に初めて「GeneXus」を採用し、2009年以降は自社の情報システム部員だけで開発している

 短期間でいくつものシステムをカットオーバーできたのには理由がある。1つは、GeneXusの使い勝手だ。吉田部長は「3日間の研修を受けた後、簡単なシステムを作りながら使い方を身に付けた。習得するのは早かった」という。「実際に動作するプロトタイプを見せながら利用部門の意見をシステムに反映していける」(吉田部長)点も大きかった。稼働前にシステムの完成イメージを利用部門と共有できるので、プロジェクト遅延の典型的な原因である手戻りがなくなった。

 今後は利用部門が表計算ソフトで管理している業務のシステム化や情報共有基盤を自前で整備していく方針だ。吉田部長は「これからが本当に楽しみ」と語る。

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(記事提供: IT Leaders)
2011/3/22 06:00