「Microsoftのスマートフォン」 MWC直前のうわさ総括



 世界最大級のモバイル関連イベント「Mobile World Congress(MWC) 2009」が2月16日からスペイン・バルセロナで開催される。多くの新製品、新技術、新サービスがお披露目される場で、今回、最も動向が注目されているプレーヤーがMicrosoftである。「iPhone」「Android」など後発のスマートフォンに押されている同社が、どう反撃するのかが興味を集めているのだ。事前にさまざまなうわさが飛び交った。


 最近では2月5日ごろ、「Microsoftが、まもなく自社スマートフォンを発表」と報じられた。調査会社Broadpoint AmTechのアナリストDoug Freedman氏の調査レポートがきっかけである。このなかでFreedman氏は、MicrosoftがNvidiaのマルチコアプロセッサ「Tegra」をベースとしたスマートフォンを開発しており、MWCで正式に発表すると述べている。

 Appleの「iPhone」、Googleの「Android」が話題をさらい、携帯最大手のNokiaもオープンソース戦略に注力するなど、スマートフォン市場は大きく動いている。Windows Mobileでメーカーにプラットフォームを提供してきたMicrosoftも、いよいよ直接、この市場に乗り出すのではないかという見方が何度も浮上している。こうしたなかで、メディアが調査レポートに飛びついたのだ。

 また、携帯音楽端末「Zune」とWindows Mobileを統合した音楽プレーヤー兼用の携帯電話“Zune Phone”は、iPhoneの発売以前から、何度か取りざたされてきたが、ここに至って改めてうわさが再燃している。

 ほかに、Microsoftがモバイルでオープンソース戦略をとるといううわさや、「Windows Mobile」を「Windows Phone」と再ブランディングするという話もある。


 Microsoftが自社ブランドのスマートフォンに乗り出すという憶測は、過去にもたびたび持ち上がっている。前回は昨年秋で、年明けの「Consumer Electronics Show (CES)」で発表といわれていた。だがふたを開けてみると、そんなスマートフォンは登場せず、OSアップデート(Windows Mobile 6.5)もなかった。

 Microsoft側は、うわさや憶測に対して今回、あっさりと否定している。同社のWindows Mobile担当者は、CNETやInternetNews.comの取材に対し、「携帯電話を開発する予定はない」とコメントしている。

 さらに、高名なMicrosoftウォッチャーであるMary Jo Foley氏が、くすぶるウワサを一刀両断した。Foley氏はまず、「MWCでは、Microsoftブランドの携帯電話もMicrosoftブランドのZuneフォンも登場しない」と断言。そして、Microsoftはスマートフォンのレファレンス実装を開発しており、Nvidiaのプロセッサはその1つであると説明する。Microsoftのモバイル戦略は、PCでの戦略と同じであり、PCでもレファレンス実装を開発してメーカー各社を奨励しているのだという。また、Zuneについては、Zune対応モバイル端末の可能性はあるが、Microsoft自身が製造することはない、としている。

 とはいえ、Microsoftが何もしないでMWCを迎えるはずはない。Foley氏のブログ記事と同じ2月6日、モバイルサービスの分野で新しい“証拠”が見つかったと報じられた。Windows Mobileユーザー向けクラウドサービスと予想される「SkyBox」のサイト(getskybox.com)がライブになっていることをEngadget Mobileなどが、発見したのだ。Engadgetは年始めから、SkyBoxについて報じてきた。

 その後、getskybox.comは閉鎖され、「Microsoft My Phone beta」というサイトにリダイレクトされるようになっている。サイトでは、「携帯電話とWebを同期する」とうたっており、バックアップ・復旧、アドレス帳やカレンダー機能へのアクセス、写真の共有が可能としている。「Find out more(詳しい情報はこちら)」をクリックすると、無料容量は200MBといった詳細な情報も見られる。

 今度は、MicrosoftもSkyBoxのサービスを用意していることを認めた。それだけでなく、ZDNetなどに対し、当初招待制のベータとして提供すること、MWCで詳細を明らかにする計画などを明らかにしている。さらに、The Wall Street Jounralは、「SkyMarket」という名を挙げている。Appleの「App Store」やGoogleの「Android Market」に対抗するモバイル向けのアプリケーションマーケットだという。


 MWCでは、このSkyBox、SkyMarketなどのサービスが発表されることになりそうだ。先のFoley氏の記事も、これらに触れており、「次期版Windows Mobile 7は、SkyMarketや『Zune Mobile』『Zune Video』などを実現するプラットフォームとなり、XboxやMP3プレーヤーとも連携するものになる」と予想している。

 これまでメディアの伝えた内容からまとめると、WMCでMicrosoftの自社スマートフォンが発表されることはなく、その代わりにモバイルのサービスが打ち上げられるらしい、ということになる。あとはふたを開けたときのお楽しみだ。

 Microsoftのモバイル関連のうわさが活発となっている背景には、不況の中でもスマートフォン市場が比較的好調であること、その中でMicrosoftの動きが遅いことが関係あるだろう。英Canalysによると2008年第3四半期のスマートフォンOS市場で、Microsoftは最大手のSymbianのみならず、Apple、Research In Motionにリードを許し、4位に甘んじている(シェアは13.6%)。

 MicrosoftはMWCの初日にイベントを予定しているほか、2日目の基調講演ではCEOのSteve Ballmer氏が登場することになっている。

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(岡田陽子=Infostand)
2009/2/16 09:04