「Intelは恥知らず」途上国向けノートPCめぐりNegroponte氏怒る



 「世界のすべての子供たちがノートPCを持てるように」というプロジェクト「One Laptop per Child(OLPC)」は、いよいよ普及に向けた重要な段階に入っている。だが、そこに思わぬ競争相手が現れた。世界最大の半導体メーカー、米Intelが対抗するモデルを推進しているのだ。プロジェクトの発案者で、マサチューセッツ工科大学(MIT)教授のNicolas Negroponte氏は最近、同社を公然と非難している。


 OLPCは、途上国の貧しい子供たちにノートPCを配布するためのプロジェクトだ。Negroponte氏が、カンボジアの村の学校を訪問した際に着想を得たという。プロジェクトは、国連の後押しや、米Google、米Red Hat、米AMDなどの協力を得て、新タイプのノートPCを開発。独特の無線LAN機能を内蔵し、堅牢で、長時間駆動ができ、生活レベルやインフラ環境にかかわりなく利用できるものに仕上げた。

 こうやって出来上がったOLPCパソコン「XO」はテスト利用が行われ、現在、各国政府の発注待ちという重要な段階にある。価格は1台あたり175ドルで、100ドルという目標には及ばなかったものの、相当抑えた。今後、利用が広まって生産台数が増えることで、さらに下げられると期待している。


 だが、OLPCはここにきて、大きな問題に直面した。子供のための学習用ノートPCを各国政府に売り込みだしたIntelが、プロジェクトの競争相手として立ちはだかったのだ。

 「Classmate PC」と名付けられたIntelの学習用パソコンは、同社のプロセッサ、チップセットを採用し、7インチ(800×480ドット)の液晶画面を搭載する。HDDの代わりにフラッシュメモリを内蔵し、OSはWindows XPまたはLinuxで駆動する。価格は約200ドル。OLPCパソコンより少し高い。

 米CBSの人気インタビュー番組「60 MINUTES」が5月20日、OLPCの話題を取り上げた。それによると、Intelは最近、メキシコのある学校で、クラスの全生徒に「Classmate PC」を配布。さらに、「XO」と比較して「Classmate PC」の優位点を列挙したマーケティング資料を用意し、各国政府関係者売り込んでいるという。

 Negroponte氏はこれを、自分の努力をつぶそうとするものだと考えている。番組のインンタビューに対し「Intelは恥じるべきだ。まさに、恥知らずな行為だ」「Intelは私のミッションに大きなダメージを与えた」と怒りをあらわにした。一昨年、IntelのCraig Barrett会長がOLPCパソコンを「おもちゃ」(gadget)と酷評したことも忘れてはいない。


 一方、Intel側は、Barrett会長がインタビューに答え、OLPCを妨害する意図はないと説明している。Barrett会長は「若い人たちに可能性をもたらそうとしているだけだ」と語り、いろいろな点で協力もできると述べた。OLPCと自社製品の比較については、「社内の人間がClassmate PCと同じ市場で提供されている他の製品と比較している。これは、われわれのビジネスではよくあることだ」としている。

 Intelが力を入れる背景には、OLPCに参加しているAMDの対立もあるという。Negroponte氏は両社の争いに巻き込まれたと考えているようだ。が、Intelの動きは、途上国がパソコン業界にとって重要な市場であることを示したものだろう。OLPCは10億人の子供たちにノートPCを届けることを目指している。超大手企業が参入するのは、ビジネスとしては当然のことだ。

 動機はどこにあるのであれ、そこに参入者が現れ、競争が発生するのは避けられない。Negroponte氏はこのことを軽視していたのかもしれない。今回の騒ぎに対して、ブログなどでは、「競争によってよい結果がもたらされる」とする意見も多い。子供たちの不利益にならないようにしていくことが最も大事なことだろう。

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(岡田陽子=Infostand)
2007/5/28 09:02