SNSをプラットフォームに-第2位のFacebookが新戦略



 SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は単なる流行に終わることなく、インターネット空間で確固とした地位を築きつつある。SNS最大手に君臨しているのはブームに火をつけた米MySpaceだが、5月末、2番手の米Facebookが新戦略を発表した。オープンなプラットフォーム化を狙うもので、SNSの新しいビジネスモデルを示すことができるかが注目されている。


 Facebookは5月24日、米サンフランシスコで開催したイベント「f8」で、開発プラットフォーム「Facebook Platform」およびマークアップ言語「Facebook Markup」を発表した。開発者は、これに公開済みのAPIを合わせてFacebook向けのアプリケーションを開発できるようになるという。Facebookがサンプルアプリケーションとして紹介した「Video」の場合、メンバーは自分のビデオの共有や、Inbox経由でのビデオメッセージの作成・送信もできる。

 Facebookによると、開発したアプリケーションは、同社の自社開発のアプリケーションと同じ統合レベルを持つという。あわせて同社は、65社の開発パートナーと85種類のソーシャルアプリケーションを紹介した。これには、米Microsoft、米Amazon.comなどの企業も含まれている。

 開発者は「Canvas Page」というアプリケーションページでアプリケーションを組み立てて、これらのアプリケーションを自由にプロフィールに追加できるようにする。自動通知機能を付加すれば、友人間でアプリケーションを広め、ニュースフィードに入る通知によって知ることができる。Facebookでは、このようなユーザーネットワークを「Social Graph」と呼んでいる。


 Facebookのオープン化は、SNSの新しい方向性を示している。Facebook Platformを発表した創業者兼CEOで弱冠23歳のMark Zuckerberg氏は「これまでソーシャルネットワークはクローズドなプラットフォームだった。われわれはこれに終止符を打つ」とコメントしている。

 開発者にとって、Social Graphは新しい配信チャネルとなる。また、プロフィール内のアプリケーションでは広告表示はできないが、Canvas Pageでは広告やトランザクションで収益を得ることも可能となる。

 英Guardianによると、Zuckerberg氏は開発者にこう語ったという。「(得た収益は)すべてあなたのものだ。そして、これはFacebookにとってよいことだ。すばらしいアプリケーションを作成してくれれば、それはわれわれにとっては、ユーザーに提供するサービスとなるからだ」。

 Facebookにすれば、魅力的なアプリケーションが出てくれば、ユーザーの滞在時間は長くなり、自社のサービスの価値を高めることになる。発表では、広告収益については今後共有の方向性を探るとしている。


 ティーンエージャー中心のMySpaceに対し、2004年創業のFacebookは大学生を中心に広まった。現在アクティブユーザー数は2400万人で、毎日10万ユーザーが新規加入しているという。だが、トラフィックシェアを見ると、MySpaceは79.7%、Facebookは11.47%(米Hitwise調べ)。第2位とはいいながら、MySpaceには大きく水をあけられている。

 こうした状況の下、Facebookは今回、MySpaceとはまったく違う方向性をとることを選んだ。ユーザーネットワークのSocial Graphを自社の資産ととらえ、これを活用して開発者のハブとなることを目指すものだ。

 Zuckerberg氏は、SNSはSocial Graphとその上のアプリケーションで構成されるものと考えており、Facebookはそのプラットフォームとなることを狙う。これは、MySpaceがサードパーティを制限しているクローズドなサービスであるのとは対照的だ。

 こうしたFacebookの動きを、Windowsでサードパーティ戦略をとったMicrosoftにたとえる者もいる。また、英Guardianのテクノロジー担当通信員、Bobbie Johnson氏はそのテクノロジーブログで、FacebookがAppleのような位置になる可能性を論じている。つまり、AppleがMicrosoftの後塵を拝しながらも、自社の熱心なファンを獲得して、2番手であることの強みを発揮するというあり方だ。

 Facebookは一時、米Yahoo!への身売りを検討しているとうわさされたが、Zuckerberg氏は独立性にこだわっているようだ。今回の戦略は、Facebookにとっての大きな挑戦であり、今後のSNSの発展に大きな影響を与えそうだ。

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(岡田陽子=Infostand)
2007/6/4 08:59