起死回生の特効薬になるか Sunの無償化・オープンソース化



 米Sun Microsystemsが主要ソフトウェアのほとんどの無償提供を開始、さらにオープンソース化することを約束した。ソフトにとどまらず最新のマルチコアプロセッサーもオープンソース化する。この賭けとも見える戦略の勝算はあるのだろうか。


 11月30日、Sunは開発者と顧客に、同社のあらゆるソフトウェアを無償提供すると発表した。内容は、(1)「Java Enterprise System」「N1」管理ソフトウェア群および開発ツールの無償提供と、自社ソフトウェアのオープンソース化推進(2)Solaris OSをはじめとするすべてソフトウェアを統合した「Solaris Enterprise System」の構築―の2点だ。また、「Java Enterprise System」と開発ツールは、Windows、HP-UX、Linuxを含むマルチプラットフォーム環境でも無償で利用できるという。

 さらに1週間後の12月6日には、最新のマルチコア/マルチスレッドCPU「UltraSPARC T1」(開発コード名:Niagara)のオープンソース化も発表した。新たな団体「OpenSPARC project」を2006年第1四半期中に立ち上げて、推進する。SPARCの仕様は、1989年からSPARCアーキテクチャーの推進団体「SPARC International」を通じて会員に提供されているが、これをさらに広く公開する。

 これらは、今年2月のSolaris 10の無償ダウンロード提供開始、6月のソースコード公開に続く、無償化・オープンソース戦略の一環だ。

 CPUの場合、仕様を公開したからといって他メーカーがSPARCの互換チップ製造を始めるとは考えにくい。目的は、詳細な関連仕様を公開して、SPARC&Solarisプラットフォーム上に外部のソフトウェア開発者を呼び込むことだ。

 Jonathan Schwartz社長兼COOはプレスカンファレンスで、「開発者は製品を買うのではない。参加するのだ」と述べ、無償化で多くの開発者が参加することへの期待を表明した。

 だがソフトの無償化は、同社にどう影響するのだろう。


 Sunによると、Java Enterprise Systemの利用者は100万近いという。プレスカンファレンスでは、今回無償化するソフト製品から得ている収入は年間約1億ドルに上ると説明した。

 同社の2005年度通期の売上高は約111億ドルで、無償化したソフトの売り上げが占める割合は1%程度と小さい。これを無償化したとしても、既存ビジネスへの影響は小さく、決して無謀な賭けでも何でもないことがわかる。Sunの新しいビジネスモデルは、企業が導入するソフトに入り込むことで、ハードやサービスを売り込もうというものだ。

 Scott McNealy会長兼CEOは、米BusinessWeek誌のインタビューで、Solarisを無償公開してからのダウンロード数が340万にのぼっていることをあげた。「プログラマーは、なにかを作るのでなければ、エンタープライズOSをダウンロードするような手間はかけない。そして作れば、今度はそれを走らせるコンピュータが必要になってくる」と述べ、この膨大なダウンロード数が、同社のハードの需要を生み出すという考えを示した。

 そして利益をあげるモデルを、“カミソリとカミソリの刃の関係”にたとえた。すなわち「ソフトウェアはカミソリだ。そして、カミソリの刃は、サーバー、ストレージ、サービス契約、テープカートリッジ、統合サービス、コンサルティング。そうしたすべてだ」(McNealy氏)。

 Sunはサーバー市場での地盤沈下に苦しんでいる。米IDCの調査によると、Sunの世界サーバー市場でのシェア(出荷額ベース)は2004年第4四半期に2ケタを切り、2005年第1四半期には3位から4位に転落した。同第2四半期になって、シェアを11.3%、順位も3位に戻したが、前年同期比では上位5社のなかで唯一マイナス成長を記録している。Windows、Linux、x86が順調に勢力を拡大していくなか、“ひとり負け”状態だ。

 ここで、起死回生のカギになるのが無償・オープンソース化だ。同社の伝統である開発者を味方につけるという戦略をリニューアルしたものともいえる。そのビジネスモデルは、Linux関連ベンダーのものとよく似ている。これが成功するかどうかは、どれだけの開発者の参加を得られるかにかかっている。

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(行宮翔太=Infostand)
2005/12/12 09:00