Office Open XMLとODF、オフィスフォーマット標準化の動き



 ワープロや表計算などのオフィス製品ファイルのフォーマットが、標準化へ向けて動きだした。うまくいけば、各フォーマット間の互換性が確保され、ユーザーにとっては朗報となるが、果たしてそのとおりになるだろうか? この市場で最大のシェアを持つ米Microsoftとその対抗勢力の動きをまとめてみよう。


 Microsoftは11月22日(フランス時間)、次期Officeの「Office 12」(開発コード名)のファイル仕様「Microsoft Office Open XML Format」を、スイスに本拠地のある国際標準団体Ecma Internationalに提出することを明らかにした。Microsoftは、Ecmaがその後国際標準化機構(ISO)に承認を得るよう求めたいとしている。

 Office Open XMLは、Office 12のWord、Excel、PowerPointの標準ファイルフォーマットで、今回のオープン化により、Officeで作成したファイルを他のアプリケーションで読み込んだり編集できるようになるという。Microsoftはこのほかにも、サードパーティがソリューションやサービスを開発・提供しやすくなるなどの利点を挙げている。古いOffice文書との互換性を確保するツールも提供する計画で、ファイルを長期間にわたって活用できるようになる。

 米Apple Computer、米Intel、英Barclays Capital、東芝、大英図書館などの企業・機関が、このEcma提出を支持しており、共同してEcmaでの標準化作業にあたることになる。Microsoftは、Ecmaでの作業は約1年を要すると予想しており、来年後半のOffice 12の正式発表に合わせたいとしている。


 これまで独自フォーマットを貫いてきたOfficeの方向転換の背景には、政府・公共機関を中心にオープンな文書ファイルフォーマットを求める動きが高まっていることある。

 現在、いくつかの政府機関がOfficeからオープンソースのOpenOffice.orgへ移行を進めており、欧州を中心に始まっているデスクトップにおけるMicrosoft離れの焦点の一つとなっている。Microsoftはすでに今年6月、Office Open XMLをロイヤルティーフリーでライセンスする計画を発表しており、Ecmaへの提出は、これをさらに進めたものとなる。

 文書ファイル標準化の動きでは、もう一つ、今年5月に国際団体OASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)が開発した「OASIS Open Document Format for Office Applications(ODF)」がある。ODFは米Sun Microsystems、米IBM、米Novellなどの支持を得ており、OASISはすでに同仕様をISOに提出済みだ。

 11月4日にはODFを推進するカンファレンス「ODF Summit」がニューヨークで開催された。IBMとSunのオープンソース担当幹部は事前に書簡を発表してODFの重要性を説き、カンファレンスへの参加を呼びかけた。結局、このカンファレンスには、Sunと提携関係にある米Googleを含め13社が参加した模様だ。

 ODFをサポートする製品としては、米Sunの「StarOffice 8」、オープンソース版の「OpenOffice 2.0」があり、デンマークなどいくつかの政府・公共機関がODF支持を明らかにしている。

 中でも、米メディアの注目を集めているのが米マサチューセッツ州だ。同州のIT部門は今年9月、州の公式文書のフォーマットをODFとするというポリシーを発表し、Microsoftを排除する動きを示していた(MicrosoftはODFの動きに対し、ODFを自社製品に取り込むことなく、サードパーティのツールを通してサポートすることを表明しており、この点がマサチューセッツ州の不採用の理由となっていた)。

 今回、MicrosoftがOffice Open XMLをEcmaに提出すると発表したことを受け、同州は態度を軟化させた。Microsoftの新仕様は、自分たちの求めるオープンなフォーマットの基準を満たすと「楽観している」と述べている。

 ODFもOffice Open XMLも、XMLをベースとした仕様だ。両陣営の今後の動きが、対立ではなく協調となるかどうかが注目される。

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(岡田陽子=Infostand)
2005/12/5 09:00