12年越しのWine ついにベータ版に



 Wine Projectは11月9日、「Wine 0.9.1」をリリースした。Wineは10月25日のバージョン0.9のリリースをもってベータフェイズに入っており、デスクトップLinuxを後押しする技術として再び注目を集めている。Wineのこれまで、そして今後を見てみよう。

 Wineは「WINE Is Not an Emulator」の略で、GNU(GNU is Not UNIX)と同様、再帰的な略による名称だ。その歴史は古く、1993年にさかのぼる。Windows 3.1アプリケーションをUNIXで動かすことを目的に始まり、スイスのAlexandre Julliard氏がプロジェクトの調整役を務めている。

 Wineは米Microsoftのコードを一切利用していないWindows API実装だ。WindowsソースコードをターゲットOSにポーティングするための開発ツールキットで、プログラムローダーで構成されている。これにより、Windows OSなしでWindowsアプリケーションを動かすことが可能となる。

 Wine Projectは、バージョン0.9の段階でコアのアーキテクチャ開発はほぼ完了したと述べている。バージョン0.9の主な特徴は、設定ツールの「winecfg」を完成させ、開発者はアプリケーション設定と初期化のためのファイルを作成する必要がなくなった。また、DLL(Dynamic Link Libraries)をフルで装備し、MicrosoftのDLLのダウンロードが不要になった。このほか、インストーラーをサポートし、Windowsアプリケーションの多くでスムーズにインストール作業ができるという。

 このほか、最新の9.0.1では、レジストリエディタにおけるFind機能サポートなど、いくつかの機能強化が加えられている。Wine ProjectのWebサイトにある互換性アプリケーションデータべースには、Webブラウザの「Internet Explorer」、資産管理の「Microsoft Money 2004」から、「The SIMS」「Diablo」などのゲームまでが並んでいる。

 Wine Projectを支援している米CodeWeaversも、Wineベータ版のリリースと同時に、Wineをベース技術とする製品「CrossOver Office 5.0」を発表した。LinuxでWindowsアプリケーションを実行するためのソフトウェアだ。

 最新版では「Microsoft Office 2003」など主要Windowsアプリケーションをサポートしたほか、“Bottles(ボトル)”という新機能を搭載、CrossOver Officeで認定されていないWindowsアプリケーションのカスタムパッケージを作成できる仮想環境を提供するという。

 WineはPOSIX互換環境を対象としてスタートしたが、12年の月日が流れ、当時初期段階にあったLinuxが、現在ではサーバー分野でのメインストリーム技術になった。さらにデスクトップ分野への進出を図っている。そのため、Linux推進派がWineのベータ版入りを大いに歓迎している。

 Wine Projectでは、Linuxデスクトップにおけるアプリケーションが少ない、OSのシェアが低いという2つの問題を“卵と鶏はどちらが先か”だと説明。その問題を解決するのがWineであるとしている。

 Wineは、いよいよ完成間近となった。遅すぎた登場となるのか、絶好のタイミングとなるのか、もうすぐ分かるだろう。

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(岡田陽子=Infostand)
2005/11/14 12:16