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50社超が参加してAIエージェント標準化推進 技術的疑問と対中競争の狭間で
2025年12月15日 11:36
技術的成熟度への疑問
AIエージェント技術の標準化は重要だ。しかし、AAIFの設立にあたっては、技術的成熟度への疑問が投げかけられている。
最大の懸念は、これらのプロジェクトがLinux Foundation下のガバナンスに移行するには早すぎるのではないかという点だ。MCPはリリースからわずか13カ月、AGENTS.mdは4カ月、gooseも約1年しか経っていない。
これは、Linux Foundationが過去に受け入れてきたプロジェクトとは対照的だ。
Kubernetesは、Googleが社内でBorgとして10年以上運用したあと2014年にオープンソース化され、2016年にCNCF(Cloud Native Computing Foundation)に参加した。PyTorchは2016年のリリースから6年間のコミュニティ開発を経て、2022年にLinux Foundationの管理下に入った。いずれも標準化までに長い熟成期間を経ている。
AI関連ニュースのImplicatorは「これらの技術は、そのアーキテクチャ上の決定が多様な条件下で実証されたため、中立的な管理に移行したもの」と解説する。
特に批判が集中しているのはMCPだ。11月25日のスペックリリースで追加された非同期操作、ステートレス設計、サーバーアイデンティティといった機能は、「改良」ではなく「基盤となる機能」だとImplicatorは指摘する。コアアーキテクチャが、まだ発展段階にあることを示唆するものだ。
開発者コミュニティからも具体的な批判が出ている。マルチエージェントフレームワークAutoGenの寄稿者であるVictor Dibia氏は、MCPのドキュメントがClaude Desktop統合に偏重していると批判し、「歴史的に勝利してきた標準は、必ずしも最も強力な技術的ストーリーを持つものではなく、最も使いやすかったものだ。REST vs SOAP、データサイエンスにおけるPython vs 他の言語がその例だ」と述べている。
48万人以上の登録者を持つYouTuber、Theo Browne氏はさらに辛らつだ。Anthropicが12月に公開した「コード実行でMCPを98.7%トークン効率化する方法」というブログ記事を受けて、「MCPの作成者自身が、彼らが書いた仕様通りに使うよりも、クソなTypeScriptコードを書く方が99%効果的だと言っている」と批判した。この動画は13万回以上再生されている。
ガバナンスの実効性への疑問もある。TechCrunchの記事によると、Linux Foundationの執行ディレクターJim Zemlin氏自身が「(AAIFが)実際のインフラになるのか、それとも単なる業界ロゴ連合になるのか」という大きな疑問があると認めていたという。