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「建てて、建てて、建てまくれ!」 米国AI政策の大転換
2025年8月4日 11:27
「AI依存」で世界を囲い込み
AI行動計画は、米国のAI政策の大転換となる。それは「EU AI法」でリスク管理と消費者保護を重視するEUとも、国家主導で「世界の主要なAIイノベーションセンター」を目指す中国とも大きく異なる。「市場原理主義型グローバル覇権追求タイプ」とも言うべき内容だ。
焦点となってきたAIチップの扱いも変わりつつある。米国は第1次Trump政権の2018年からAI関連装置の輸出規制を進めてきたが、Trump氏は5月にこれを撤廃した。「革新を阻害する」という理由からだ。
AI行動計画では、米国製チップとソフトウェアを敵対国への流出を防ぎながら、同盟国に輸出して世界の需要に応えると述べている。「あらゆる種類のアメリカのAI輸出を急速に拡大」して、各国のAIを中国企業ではなく米国企業に依存させる戦略だ。
AI覇権争いの相手である中国はどう考えているのだろう。AI行動計画発表から3日後の7月26日、中国は上海で開催された「世界人工知能会議(WAIC)」で対抗的な提案を行った。
この場で李強首相は「テクノロジーが少数の国と企業の『独占的なゲーム』になるリスクがある」と警告し、AI分野での世界的な協力を促進する新たな組織の創設を提案した。さらに「中国はAIをオープンに共有し、すべての国や企業が平等にAIを利用できることを望んでいる」と述べ、「開発の経験や製品を他の国、特にグローバルサウスと共有する用意がある」とも付け加えた。
米国のAI行動計画は、AIがアメリカに「産業革命」「情報革命」「ルネッサンス」を同時に起こすと強調している。AI覇権争いのこの新たな局面を、世界はどう見るのだろうか――。