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「建てて、建てて、建てまくれ!」 米国AI政策の大転換
2025年8月4日 11:27
「Woke AI」の排除
AI行動計画には、規制撤廃以上に注目すべきものとしてAI開発の価値観そのものの転換がある。
前政権ではAI開発での「倫理原則」「透明性」「偏りの排除(DEI=多様性、公平性、包括性)」を重視してきた。これに対し、Trump大統領はDEIの価値観を持つAIモデルを「Woke AI(左派的覚醒主義に汚染されたAI)」と呼び、激しく非難している。
AI行動計画と、同じ日に署名された大統領令は、DEIの価値観を持つ「Woke AI」を政府調達から排除すると明言している。AI・暗号資産担当首席補佐官のDavid Sacks氏が「政府が調達するAIに“価値観の偏り”を排除する仕組みが必要」と主張したことからだという。
また、AI行動計画で直接言及されていない重要な転換もある。
AI行動計画ではデータセンターや半導体工場に優先的にエネルギーを供給するため、「次世代のエネルギー生成源」(地熱、核分裂、核融合など)を推進するとうたっている。
一方で、天候や時間帯によって太陽光や風力など変動する再生可能エネルギーは「調整可能」という要件で、事実上除外される。The Vergeは「化石燃料業界の夢で、風力・太陽エネルギーの悪夢」と評している。
また、メディアやエンターテインメント業界から数十件の訴訟が起こされているAI訓練での著作物利用についても変わる可能性がある。
大統領はイベントのスピーチで、「記事のコピーや、盗作は駄目だ」としながら、「記事を読んで知識を得ることが、著作権法への違反やあらゆるコンテンツ提供者と契約する義務を意味するわけではない」と述べ、法規制の緩和を考えていることを示唆した。