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「Slack」がプラットフォーム戦略強化 いま注目の企業向けメッセージ

企業コラボツールに新たな盛り上がり

 企業向けのコラボレーション、メッセージサービスは新しいものではない。だが今、SlackやAtlassianは、この分野にフレッシュな息吹を吹き込み、企業ユーザーの関心を呼んでいる。

 The Registerはこの動きを「古いIM、電子メール、さらにはExchangeやDominoなどのワークフローアプリのようなものを置き換える」と位置付ける。その上で、プラットフォーム戦略を進めるSlackとAtlassianの動きを、「その周囲でエコシステムを構築するのは、自社の将来に向けて前進するにあたって理にかなった方法」であり、「MicrosoftのYammerなど、エンタープライズ向けTwitterクローンを飛び越える」という点でも有効だとする。

 「自分がSlackだったら、MicrosoftとGoogleを恐れるだろう」と、Gartnerのプリンシパルアナリスト、Adam Preset氏は言う。Microsoftは2012年、12億ドルでYammerを買収しているが、YammerにはSlackほどの話題の盛り上がりはない。しかし、Preset氏は「GoogleとMicrosoftは確固としたインフラと才能ある開発者を擁しており、本気になればSlackのようなものをすぐに構築できる」と予想する。

 この市場の今後のいっそうの盛り上がりを予感させるのは、Slack Fundにベンチャーキャピタル6社が参加しているという事実だ。「これ以上Slackの株式を購入できないのなら、Slackのプラットフォームの支援を通じて既存の投資を確実にしようという動き」とTechCrunchは分析する。

 課題は、企業向けのメッセージ・コラボツールがアーリーアダプターからメインストリームになるか、そしてSlackやAtlassian向けのアプリ開発者が実際にメリットを感じることができるかだろう。The Registerは、肝いりプロジェクトでありながらわずか3年でその幕を閉じた「Google Wave」に触れながら、「静観する必要がある」とする。TechCrunchは「Slackユーザーが実際に有料で利用していることを考えると、プラットフォームに取り込む仕組みはとてもパワフルで収益性の高い戦略に見える」と分析した。

 IT業界におけるトレンドが必ずしも技術ありきでないことは、Google Waveをはじめとする数多くの失敗が示している。Slack、Atlassianに、より新しい企業向けリアルタイムコミュニケーションの時代が幕をあけるのか、MicrosoftやGoogleはどう動くのか――。2016年の注目ポイントの1つとなりそうだ。

岡田陽子=Infostand