Infostand海外ITトピックス

「Messenger」をプラットフォームに Facebookの製品ファミリー戦略

Facebookのファミリー戦略

 送金ビジネスは利益を上げられるのだろうか? Timeは、既に送金機能を備えているVenmo、Snapchat、Squareなど、どのメッセンジャーサービスも、送金サービスから収益を得ていない、と指摘する。「送金から収益を得るには、かなりのボリューム(取引量)が必要」「兆ドル単位の取引総高と億単位のトランザクション数が必要」とIDCで決済を専門とするJames Wester氏は語っている。

 さらに、各社はユーザーから追加の料金を徴収していない。AppleはApple Payで銀行からコミッションを徴収しているが、これは例外という。451 Researchのアナリストは「(Venmo、Squareなどそれ以外の)サービスは、売り上げを上げていない」とする。

 つまり、送金機能は、製品を魅力的にするのに「必要な付加価値サービス」にすぎない、というのだ。

 Facebook自身もこれを認めており、Facebookの製品マネージャーSteve Davis氏はRe/Codeに、「支払いで収益を得るつもりはない」と述べている。Reutersは「Twitter、Googleはもちろん、SnapchatやWeChatなど新しいサービスとの競合が激化する中、FacebookはMessengerを独立して運営するサービスにすることを狙っている」と分析する。送金サービスやプラットフォーム化はそのための戦略ということだろう。

 Financial Timesは、このようなFacebookの製品戦略を深く分析する。FacebookはMessengerのほか、買収で獲得したInstagram、WhatsAppなどのサービスを持っている。その中で、今回のMessengerのプラットフォーム戦略は「(傘下の)サービスブランドから収益化を図る最初のステップといえる」というのだ。

 Facebookのプラットフォーム担当トップDeb Liu氏は「早期段階である」としながらも「Messengerは初めて大々的にローンチする新しいプラットフォームとなったが、今後、InstagramやWhatsApp向けの(拡張機能を開発する外部の)開発者が出てくる可能性がある」とFinancial Timesに述べている。

 実際、CEOのMark Zuckerberg氏はF8で、Facebookが「単一のアプリ」から「ファミリー」になりつつあり、「ここ数年で最大の戦略的シフト」になると述べている。一方で、サービスにはMessengerとWhatsAppのように重複する部分もある。重複とブランドの相乗効果をどう管理していくのかがFacebookにとっての課題となるだろう。

岡田陽子=Infostand