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注目のスタートアップのCEO辞任 画像生成AIのStability AIの舞台裏は

新CEOの手で浮上を期待

 伝えられるStability AIの一番の問題は資金だ。Forbesによると、Stability AIは、支出が収入をはるかに上回る資金不足に直面しているという。

 辞任発表後となる3月29日付記事では、2023年の予想コストが計1億5300万ドルなのに対し、予測収益はわずか1100万ドルで、「1年間で稼いだ額よりも毎月の赤字の方が多い状況」と伝えた。入手した内部資料によるものだ。また、昨年後半には、買収先も探したという。

 Financial Timesも3月31日付で、CEO辞任と同社の状況を取り上げた。その中で、Mostaque氏には「先見の明がある」というものと、元従業員などからの「信頼できないリーダー」といった相反する評価があると紹介している。また、Forbesの一連の報道を受けて、投資家たちが同氏のリーダーシップに懸念を抱くようになったとも伝えている。

 一方で、Mostaque氏が辞任したことで、新しい展開を期待する関係者もいるという。

 ある投資家は「(Stability AIの)製品は本当に特別で差別化されている。Mostaque氏が指揮をとっていたときは、経営がうまくいっていなかっただけだ。新CEOなら一新できると楽観視している」とFinancial Timesに語った。

 実際、同社はCEO辞任のあとも、作曲AIの新バージョン「Stable Audio 2.0」や、テキスト生成モデル「Stable LM」の120億パラメーター版を相次いでリリースして、潜在力を見せている。

 AIビジネスは依然、過熱中だ。そしてAI業界はOpenAIのCEO解任劇に見られるように、ゴタゴタが起こりやすい環境にある。

 投資家を欺いたとなると大罪だ。だが、実現が疑わしいような大きな夢を語る“大風呂敷”は、スタートアップの経営者には珍しくない。従業員の出入りが多いのも普通で、まして、異常な人材獲得戦が繰り広げられているAI業界なら当然ともいえる。Mostaque氏には同情すべき点もあるかもしれない。

 YouTubeチャンネルで、「辞任した今、どんな気持ちか?」と尋ねられたMostaque氏は、「大きな安堵感」だと答え、こう続けた。「私は、優れた研究リーダーであり、戦略家だったと思う。しかし、他の分野では適切なコミュニケーションをとらなかったり、適切なリーダーを雇うことをしなかった」

 CEOでいるのは、大変らしい。