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本当に作られるのか? Apple製自動車

「憶測にはうんざり」とも

 Apple Carを5年間追い続けてきたというテックジャーナリストのLance Ulanoff氏は「憶測にはもう疲れ果てた」というタイトルの個人ブログで、「Appleブランドの車」は現実的ではないと主張する。

 それによると、消費者が自動車ブランドを選ぶ理由は「評判と機能」であり、消費者がAppleブランドに魅力を感じるかは疑問だと言う。また、「Apple Car事業の立ち上げには数年はかかる」とした上で、何とか参入できたとして、その頃には電気自動車市場の競争は激化しているとみる。

 「長年の自動車販売の経験を積んでいる自動車メーカーから、低価格の多くの選択肢が提供されるはず」「Appleもこれを理解しているはずだ。だから、Apple Carの計画はないと考える」とUlanoff氏は結論づけている。

 とはいえ、Appleが自動車分野に興味を持っていることは確かだ。CEOのTim Cook氏は2017年のBloombergのインタビューで、「自動車の自律システムの開発に注力している」と発言している。そこで、Ulanoff氏は、同社の運転支援サービス「Apple CarPlay」をみることが、この問題への正しいアプローチだと考えている。

Teslaと競合へ

 自動車業界参入における難しさの1つにサプライチェーンがある。

 Reutersは、Appleが自動車の製造を外部のパートナーに委託する可能性があるとしている。だが、そのためには、一つの生産拠点に対し、「年間10万台あるいは、それ以上」の発注をしなければ成立しない、との業界に詳しい人物のコメントを紹介している。

 Appleは以前、「(主要自動車メーカーに部品を供給しているカナダの)Magna Internationalと自動車の製造について話し合いを進めていたが、Apple側の計画が明確でないために破談になった」という。評価額2兆ドルのAppleにとっても、自動車業界の新規参入障壁は高い。

 それもあって、Apple Carの騒動は“先輩”にあたるTeslaにも目を向けさせた。同社は新規参入で電気自動車ビジネスを確立し、人気を獲得している。

 そのTeslaのElon Musk氏は、Reutersの報道の直後、Appleとの裏話を暴露した。Musk氏が2018年、「AppleにTeslaの売却を持ちかけたが、Cook氏はとりあわなかった」というのだ。額は現在の評価額の10分の1だったという。

 またMusk氏は、焦点になっている新しいバッテリー技術にも言及。「Teslaは既にリン酸鉄リチウムを導入済み」「モノセルは最大電圧が低すぎて電子化学的に不可能」「奇妙だ」などと述べ、否定的な見方を示した。

 Apple Carの報道は、Tesla株の下げにつながるなど、Musk氏にはありがたくない話だった。一言、クギを刺したくなったとしても無理からぬことだろう。