クラウド特捜部

「re:Invent 2013」で発表されたAmazon Web Servicesの新サービスを振り返る (新たなゲームを作るAmazon AppStream)

新たなゲームを作るAmazon AppStream

 Amazon AppStreamは、クラウド側に置かれたGPUを使って3Dグラフィックをレンダリングし、H.264圧縮の映像として伝送することで、高品質な画像をスマートフォンやタブレットなどでも表示できるようにしたプラットフォームである。

 クライアント用ソフトを構築するSDKとしては、Windows Server 2008 R2、Fire OS(Kindle)、Android、iOS、Windows OS(クライアント)向けが用意されている。Mac OS XのSDKは、2014年中にリリースされる予定になっている。

 Amazon AppStreamが想定しているのは、高品質な3DゲームやCADサービスなどだ。開発者は、クラウド側とクライアント側のソフトを開発することで、スマートフォンやタブレット端末単体では実現できなかった、高品質な3D画面のゲームを提供できる。

 クラウド側にあるGPUで3D画像をレンダリングして、H.264圧縮でクライアントに送信するため、クライアント側では性能が高くないCPUやGPUを搭載していても、高品質な3D画面を表示できる。

 ただしゲームで利用する場合、クライアント側の操作と画面がずれてしまう遅延の発生が問題になる。Amazon AppStreamではこれを解決するため、遅延の少ないプロトコル(UDP/H.264ベースのAmazon STXプロトコル)を採用。ローカルで動作しているのと同じ使い勝手で、ゲームを開発できるようにしたという。

AppStreamは、クラウド側のGPUで3D処理を行い、クライアントの画像を転送することで、低性能のスマートフォンやタブレット端末でも、ワークステーション並みの3D映像が表示できるという
AppStreamでは、Amazon STXプロトコルを使ってクライアントと通信する。画像はH.264で圧縮されている

 なおAmazon AppStreamは、GPU仮想化を行うNVIDIAのGRIDボードをクラウド側に採用したシステムのようだ。Amazon EC2の新しいインスタンスとして、NIVIDIA GRIDが利用できる「G2インスタンス」が追加されている。AppStreamは、G2インスタンスをプラットフォーム化したものだろう。ある意味、NVIDIAが提唱していたゲームクラウドを実現するためのものが、Amazon AppStreamだといえるのではないか。

 ただし、既存のゲームや3D CADソフトをそのままAmazon AppStreamに持っていくだけでは、サービスは始められず、ある程度Amazon AppStreamベースでの開発が必要になる。このため、本格的にこれが利用されるには、もう少し時間がかかりそうだ。それでも、高品質な3Dゲームをタブレット端末やスマートフォンに届けられるようになれば、クラウドを利用したMMORPGなどができるかもしれない。その意味では、今後に期待が持てるサービスといえるだろう。2014年や2015年に、Amazon AppStreamを使った大ヒット3Dゲームが出る可能性はある。

(山本 雅史)