クラウド特捜部
「re:Invent 2013」で発表されたAmazon Web Servicesの新サービスを振り返る (VDIを実現するAmazon WorkSpaces)
(2014/1/8 06:00)
VDIを実現するAmazon WorkSpaces
では、個別のサービスを見ていこう。
もっとも注目が集まったAmazon WorkSpacesは、Windows 7相当の仮想デスクトップ(VDI)環境を低価格で提供するサービスだ。
利用可能なスペックは、月額35ドルの下位版「スタンダード」インスタンスで、1vCPU、3.75GiBメモリ、50GBのストレージ。月額60ドルの「パフォーマンス」インスタンスでは、2vCPU、7.5GiBメモリ、100GBのストレージへと強化される。
いずれも、Adobe Reader、Adobe Flash、Firefox、IE9、7-Zip、Javaなどのアプリケーションがすでにインストールされている。また、月額15ドルを追加した「スタンダードプラス」「パフォーマンスプラス」であれば、Microsoft Office Professionalと、セキュリティソフトのTrend Micro Worry-Free Business Security Serviceが利用できる。
クライアントとしては、Kindle、iPad、Androidなどのタブレット、WindowsやMacなどのPCが利用できる(専用のアクセスソフトが用意されている)。これだけのデバイスがサポートされていれば、いつでもどこでもAmazon WorkSpacesを利用できるだろう。
なお、AWS側がOSとして“Windows 7相当”と表記しているのは、利用しているのがWindows Server 2008 R2だからだ。ただし、サーバーOSをWindows 7と同じ状態(エクスペリエンス)にしてユーザーに提供しているため、Amazon WorkSpacesを利用するユーザーにとっては、違いはほとんどわからないという。
実際、多くのWindows 7用アプリケーションはWindows Server 2008 R2で動作する。それに、VDIを利用するユーザーの多くにとっては、15ドルを追加したプランで提供しているMicrosoft Officeが利用できれば、かなりの作業をカバーできるだろう。
また、このサービスのようなDaaSではなく、VDI環境をオンプレミスで構築するという選択肢はあるが、TCO全般を考えた場合は、Amazon Workspacesの方が有利になるという。一般にVDIはサイジングが非常に難しいとされているし、例えば期末などで一時的に人員を増強する場合なども考慮すると、システムへの投資をどの規模で行うかという決断はいっそう難しくなる。このようなケースでは、必要なときに必要なだけ月額料金で利用できる、クラウドのメリットが生きることになる。
アクセスソフトのプロトコルには、Teradici PCoIPが採用されている。PCoIPは、VMwareのVDIソフトであるHorizon Viewでも利用されているものだ。また、エンタープライズでの利用を考えて、オンプレミスのActive Directory(AD)との統合ができるようになっている。これにより、VDIのユーザー管理もオンプレミスのADで統合的に行える。
このほか、ストレージサービスのAmazon S3にAmazon WorkSpacesのデータを定期的にバックアップするため、何かトラブルがあったときにも、データのロスを最小限に抑えられるのもメリットだろう。
ただ、すでにVDIを提供しているクラウド事業者は数多くあり、Amazon WorkSpacesは後発となる。その差別化ポイントについて、玉川氏は「他社のVDIでは、クライアントOSだけで、実際に利用するには、登録後にさまざまなアプリケーションをユーザーもしくはIT管理者がインストールする必要がありました。しかしAmazon WorkSpacesでは、多くのユーザーが利用するアプリケーションをインストール済みでお渡しします。また、追加のコストを支払っていただければ、Microsoft Officeやセキュリティソフトも利用できます」と話した。
なお、Amazon WorkSpacesだけに限った話ではないが、ユーザーがすでに持っているアプリケーションを持ち込む場合は、個々のアプリケーションのライセンス条項が絡むため、注意が必要だ。