Windows Server 2012研究所
Hyper-Vがさらに進化するWindows Server 2012 R2
(2013/6/25 00:00)
システム全体でリモートデスクトップを利用
またネットワークやブート以外にも、Hyper-Vのエミュレーション層は大きく変化している。Windows Server 2012のHyper-Vでは、キーボード(i8042)、マウス、ビデオ(S3ビデオ)などのエミュレータが動作していた。しかしWindows Server 2012 R2のHyper-Vでは、これらのエミュレーション層をVMBus上で動作するリモートデスクトップに変更している。
リモートデスクトップを使用することで、キーボードやマウス、ビデオなどのエミュレーションが個々の仮想マシンごとに必要なくなった。システム全体でリモートデスクトップを利用することで、パフォーマンスが向上する。
さらに今までサポートされていなかった、クリップボードの共有、オーディオ機能のサポート、Remote FXでサポートされた仮想GPU機能などに対応したほか、セキュリティ性の高い拡張ログイン(パスワードと携帯電話によるワンタイムパスワードなど、2要素認証によるログイン)のサポート、ローカルUSBデバイスの仮想マシン上でのサポート、などが追加されている。
このように、今まで提供できなかった高度なエクスペリエンスを、Hyper-Vの下層にリモートデスクトップ層を入れることで提供しようとしている。
Live Migrationの性能アップ
Windows Server 2012 R2のHyper-Vでは、データを圧縮してLive Migrationを行う。これにより、今までLive Migrationにかかっていた1/2の時間で移行を行うことができる。この機能には追加のハードウェアが必要ないため、Windows Server 2012 R2に入れ替えるだけで、すぐにでも効果を得られる。
また新しくサポートされたのが、SMB Directを使ったLive Migrationだ。Windows Server 2012では、Hyper-Vの共有ストレージとして、高速なSMB Directを利用したファイル共有サーバー(Scale Out File Server)の利用を勧めていた。今回の強化は、このSMB DirectをLive Migrationに利用したものである。
SMB Directをサポートしたネットワークカードを利用することにより、Live Migrationを高速かつCPUに負荷をかけずに行うことができる。なおSMB Directは、RDMA(Remote Direct Memory Access)機能を搭載するネットワークアダプタを使うことで実現している。
Microsoftでは、10Gbps以下のネットワークでは、データ圧縮を利用し、10Gbps以上のネットワークではSMB Directを使ってLive Migrationを構成すべきという指針を出している。10Gbpsのイーサネットカード、InfiniBandカードなどではRDMAをサポートしているため、高い性能のネットワークを利用できるようになる。
現在、10Gigabit Ethernet(GbE)がサーバー間の基幹ネットワークとして利用されているが、データセンターなどでは40GbEなどが採用され始めている。また、次世代Ethernet規格として、400GbEもしくは1TbE(Terabit Ethernet)の規格策定も2015年までに行おうとしている。
このようにEthernetにおいても、将来的には、InfiniBandのような低レイテンシで高速なネットワークが実現する。5年後のプライベートクラウドやデータセンターでは、1Tbpsのバックエンドを使って、HDDよりも高速のネットワークを使ったストレージネットワークができあがっているかもしれない。Windows Server 2012 R2は、このような将来を見通した設計になっている。