クラウド&データセンター完全ガイド:イベントレポート

データセンターオペレーションの自動化に向けたポイントとは?――ServiceNow Japan・新谷氏

データセンター・イノベーション・フォーラム2021 講演レポート

インプレス主催で2021年12月8日・9日にオンライン開催された「データセンター・イノベーション・フォーラム2021」では、「データセンター: オンラインファーストとカーボンニュートラルからの挑戦」と題し、ポストコロナ社会の実現に向けて進化を続けるデータセンターに関する多くの講演が行われた。現在、データセンターから提供されているサービスは多岐にわたり、社会インフラとして機能している。このため、オペレーションにおけるミスや障害が、企業活動に多大な損害を与えるリスクがあり、品質向上のための自動化は喫緊の課題だ。9日に行われたセッションでは、データセンターオペレーション自動化のためのポイントについて、ServiceNow Japanの新谷卓也氏が解説した。 text:柏木恵子
ServiceNow Japan ソリューションコンサルティング事業統括 通信SC統括本部 統括本部長 新谷卓也氏

業務自動化は時代を生き抜くキーワード

 ServiceNowは、企業の業務プロセス全体を標準化・自動化するクラウドサービスである。その存在意義は、「仕事の環境を変革し生産性を高めることで、ユーザーエクスペリエンスやカスタマーエクスペリエンスを向上させる」ことだと新谷氏は言う。

ServiceNowのポートフォリオ

 現在、企業を取り巻く環境は大きく変わっている。自然災害やパンデミックなど、予想できないような環境変化もあり、「企業のあり方を再定義する時代に入っている」というのが新谷氏の見方だ。

 先の見通しや予測がつけられない、不確実性が増した時代を生き抜くために、企業がデータセンター事業者に期待することとして、新谷氏は以下の3つを挙げる。

  • 社会インフラとしての品質
  • ビジネスパートナーとして付加価値の提供
  • デジタル変革という新たな価値の提供

 これらを阻害する要因として考えられるのは、以下のような点だ。

①プロセスの課題
 ・個社ごとのオペレーション
 ・サービスごとに品質のばらつきがある

②システムの課題
 ・サイロ化したシステム
 ・巨大なレガシーシステムが残っている

③人材の課題
 ・DX人材の不足
 ・変革への抵抗勢力の存在

 これらを解決するのが、自動化だ。オペレーションの標準化や、共通のプラットフォーム上にワークフローをまとめること、エンジニアによる個別オペレーションを減らすことにより、「DXの取り組みが進む」と新谷氏は考えている。

ServiceNowのデータセンターオペレーション

 新谷氏は、ServiceNowでデータセンターオペレーションをどのように効率化できるかを、ServiceNow自身のデータセンターの事例で紹介した。ServiceNowは年率30%以上という高い成長率を継続しており、ビジネス規模の拡大とポートフォリオの拡大に追随することが求められている。また、顧客企業からは、サービス品質の向上やリスクの低減を強く求められているという状況だ。

 クラウドサービスとしては、マルチインスタンス方式、AHA(Advanced High Aailability)アーキテクチャという特徴を持つ。また、インスタンスを配置するデータセンターのロケーションは、異なる2カ所にペアで運用している。例えば日本であれば東京と大阪の拠点からサービスを提供しているが、このようなペアが13あるという。全体では、十数万インスタンスの運営といった規模感だ。これを限られた人員で運用している。これは、「徹底的に自動化を追求した結果」だと新谷氏は言う。

ServiceNowアーキテクチャと環境

 このServiceNow自身の取り組みから導き出したという、自動化のポイントは以下の3点だ。

ポイント1:自動化を前提としたオペレーションを構築する

 とりあえずの体制を組んで、おいおい自動化しようというような、暫定的なオペレーションを構築すると、結果的にそれが恒久的なものになって変更が難しくなることがよくある。このため、最初から自動化を前提として運用することがポイントだと新谷氏は言う。ServiceNowでは、「3回同じ作業をしたら自動化する」のがルールだという。

 そのために重要なのが、環境変化に柔軟に追従できる開発プラットフォームで、特にクラウドサービス(PaaS)として提供されているものがお勧めだ。

ポイント2:データの鮮度を保つ

 データに基づいてオートマチックに判断するため、データが正しくないと致命的なトラブルになる。クラウドという動的に変化する構成に対して、構成管理データベース(CMDB)の情報をリアルタイムで取得する、自動ディスカバリーの仕組みを導入することが重要となる。

ポイント3:業務をエンドツーエンドで自動化する

 途中で人の判断や作業が入ると、品質が担保できない。このため、部分的な自動化ではなく、人の手を介さない自動化を目指す必要がある。すべての業務プロセスを標準化し、ひとつのプラットフォーム上に載せることが重要となる。

ServiceNowで自動化を実現する

 上記の自動化のポイントに対して、ServiceNowがどのような価値を提供しているかを、個別に紹介する。

特徴① ノーコード/ローコード

 ServiceNowでは、業務ワークフローをGUIの画面から簡単に作成できる。特別なプログラミングの知識などは不要なので、ビジネスや環境の変化などにも簡単に対応できる。「環境変化に柔軟に追従できる開発プラットフォーム」だと新谷氏は言う。

特徴② 包括的なCMDBと自動ディスカバリー

 ServiceNowは、CMDBのテンプレートを提供し、ディスカバリーとサービスマッピングという構成情報の収集を自動化するための仕組みを備えている。これにより、オンプレ環境、クラウド環境を問わず、鮮度の高いCMDB情報を取得できる。

 また、格納されたCMDB情報はマッピング情報として可視化され、自動処理のための基礎情報だけでなく障害時や問い合わせ時の根本原因の特定など、IT運用のさまざまな場面に利用できる。

包括的なCMDBと自動ディスカバリー

特徴③ シングルプラットフォーム

 問い合わせ、申請から実際の対応処理まで、すべてのタスクを一連のワークフローとして一気通貫で実現できる。

シングルプラットフォーム

 具体的なイメージは、例えば以下のようなものだ。

 サービスポータルを提供し、データセンターの入館申請やトラブル申請などのリクエスト、問題の報告を受け付ける。また、チャットボット機能も利用可能。

サービスポータル

 問い合わせや申請を受けたカスタマーサポートの画面では、判断に必要な情報がひとつの画面で見られる。また、チケットの対応履歴期等が全て保存され、引き継ぎ漏れなどがなくなる。

カスタマーサポートの画面

 フィールドサービスのエンジニアが見る画面では、対応先の場所や残作業の情報などを確認しながら対応可能。PCのモニターだけでなく、モバイルアプリからも確認できる。

フィールドサービス向けの画面

 シングルプラットフォームでインスタンス上に必要なデータが全て集まっているので、役割や約束に応じたダッシュボードを作れる。必要な時に必要なビジネス判断が可能になる。

ダッシュボード

 以下の図は、エンドツーエンドでサービスを提供するフローイメージだ。

エンドツーエンドのサービス提供フローイメージ

 新谷氏は、ServiceNowを導入することによって、「お客様から見た時に、リアクティブからプロアクティブなサポート運営になる」と言う。例えば、アラート情報などの連携がシームレスになるので、顧客企業側から知らされる前にプロアクティブに連絡し、対応できるようになる。これによって、以下のような効果が期待できる。

  • 問い合わせ対応時間が減る
  • SLA違反数が減る
  • 顧客企業側で対応可能なことが増えるので、問い合わせ自体が減る

 結果的に顧客満足度が向上し、収益性の向上も期待できると新谷氏は言う。

 セッションでは最後に、いくつかの導入事例が紹介された。

 例えば某大手通信会社では、サービスメニューが増えると手順や設備が増え、設備が増えると故障も増えるという悪循環になっていた。その結果、保守チームの監視エンジニアでは対応しきれない故障や障害が発生し、手作業に依存したオペレーションによる運用は限界となっていた。

 そこで、故障復旧対応プロセスに必要なすべてのデータとワークフローを同じ基盤上で稼働させるという方針のもと、ServiceNowを導入。ワークフロー全体をゼロタッチで自動化した。これにより、開発経験の少ない保守チームのメンバーでの内製化を推進しているという。

 ServiceNow導入の結果、従来は15~30分かかっていたサーバー故障時のプロセス復旧時間を、1分に短縮できた。さらに、保守チームでは、自動復旧対応オペレーションを自分たちの手でもっと拡充していこうというモチベーションが高まっているという。

 セッションのまとめとして新谷氏は、データセンターの業務自動化は、時代を生き抜くキーワードであり、ServiceNowのデータセンターオペレーションでは、徹底的な自動化を行い、提供サービスの品質向上・効率化を支援していると説明。ServiceNowは、データセンター業務の自動化を支援する業務プラットフォームを提供していると語り、講演を締めくくった。