2021年10月15日 06:00
弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2021年秋号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2021年9月30日
定価:本体2000円+税
デジタルビジネスの中心は膨大な非構造化データ
現代企業は、膨大かつ多様なデータによって支えられている。また多くの企業がデジタルトランスフォーメーションに注力し、新しいデジタルビジネスを創出しようと積極的に投資している。その結果、大容量のグラフィックスや動画、アナリティクス・ゲノミクス・AIなどの取り組みを支える大規模なリポジトリ、半導体の電子設計自動化(Electronic Design Automation)、HPC(High Performance Computing)など、非構造化データを活用するワークロードが爆発的に増大した。
こうしたワークロードは、従来型のストレージシステムでは扱いが難しい。なぜなら、データの処理には非常に大きなCPUリソースやGPUリソースが必要であり、また変化の激しく将来を予測できないデジタルビジネスで活用するためには容量やパフォーマンスをシームレスにスケールアップできる能力が欠かせないためである。これまで以上にデータをビジネスに活用していくために、大容量かつ高速でシンプルに管理できるファイルストレージシステムが必要だ。
フラッシュストレージは、そうしたニーズを満たすのに必須の技術と認識されており、その性能を最大限に活用できるオールフラッシュデータレイクが注目されている。本稿で紹介するデル・テクノロジーズの新製品である「Dell EMC PowerScale F900」は、“モダン ハイパフォーマンス データレイク”を実現するオールフラッシュスケールアウトNASとしてデザインされているという。
オールNVMeが実現する超高性能クラウド連携でスモールスタートも
PowerScale F900は、デュアルソケットの「Cascade Lake Processor」、従来のSATA SSDと比べて非常に高速な「NVMe SSD」を採用したオールフラッシュ構成、および「NVIDIA GPUDirect」による連携によって、アクセス要件の厳しいデータ中心型ワークロードをサポートする。NVMe SSDによってこれまで以上に高い性能を実現するとともに、GPU高速化アプリケーションもサポートしており、単一クラスタで最大93PBという高い拡張性を実現している。
PowerScale F900はインテグレーションが容易なことも特徴で、既存のノードを容易に新しいPowerScaleノードへ置き換えることができる。「PowerScale OneFS」OSは、デル・テクノロジーズの「Isilon」ストレージとの互換性を有しており、シームレスに拡張することが可能とのことだ。
またPowerScaleは、オンプレミス環境とパブリッククラウド環境の両方のワークロードをサポートするオプションも用意されており、F900も同様である。アプライアンスとして利用するか、サービス(as-a-Service)として利用するかを自由に選択できるというのはユニークで、移り変わるニーズへ柔軟に応えられるストレージと言えるだろう。
PowerScaleは、Google Cloudユーザー向けのスケールアウトファイルサービス「Dell EMC PowerScale for Google Cloud」としても提供されている。F900の登場によって、Tier 1 Agile構成で利用できるようになった。つまり、従来よりも小さい容量かつ短い契約期間でオールフラッシュをスモールスタートできるというわけだ。本格導入前のテスト利用にも最適なオプションである。
上述したPowerScale OneFSも、最新のバージョン9.2がリリースされており、大幅なパフォーマンスアップが実現された。具体的には、エッジ/エントリー向けのF200では25%、オールNVMeながらコンパクトなF600では70%も、シーケンシャルリードの高速化が得られた。またRDMA(Remote Direct Memory Access)をサポートしたことで、NFSv3環境におけるGPU対応アプリケーションのスループットとレイテンシーが向上したという。