クラウド&データセンター完全ガイド:プロダクトレビュー DCを支える黒子たち

ネットワークの状態を直観的で分かりやすい3Dで表示――AX-3D-VIEWER

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2020年秋号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2020年9月29日
定価:本体2000円+税

 複雑化するネットワークをいかに効率的に運用するかは、多くのネットワーク管理者にとって頭の痛い問題だ。近年では有線だけでなく無線LANの活用も進んでおり、ネットワークの運用に複数の管理ツールを要するケースも見受けられる。さらに、依然として高度化するサイバー攻撃に対してはネットワークレベルでの対応が求められており、管理者の負担は増す一方だ。

 アラクサラネットワークスが2020年8月に発表した「AX-3DVIEWER」は、ネットワークの通信状況や機器の障害、セキュリティインシデントの発生状況を直観的で分かりやすく3D表示するソフトウェアだ。同社が従来から提供してきたネットワークの可視化・異常検知ソリューション「AX-Network-Visualization」を拡充するもので、ネットワークセンサー装置「AXSensor」や、トラフィックデータの詳細分析を行う「AX-Collector」と組み合わせて利用する。

 従来のAX-Network-Visualizationはトラフィックの状況を時系列グラフで表示、フロー情報をリストで一覧表示することは可能だったが、ネットワーク機器の障害やセキュリティインシデント発生時にシステム全体を俯瞰した上での発生個所の直観的な把握は難しく、影響範囲の絞り込みに時間を要していた。こうした課題を解決するために、トラフィックの状況や障害の発生状況を直観的で分かりやすく3D表示するソフトウェアとして製品化されたのがAX-3D-VIEWERである。

AX-3D-VIEWER 3D 表示によるトラフィックの可視化

3D表示でネットワークの状態把握を容易に

 AX-3D-VIEWERの一番の特徴となるのがトラフィックフローの3D表示だ。ネットワークトポロジを3Dビューでグラフィカルに表示することで、システムの稼働状況やトラフィック流量などの通信状況をリアルタイムに、視覚的に把握することが可能だ。表示するトラフィックを宛先やプロトコル、サブネットなどでフィルタする機能を備えており、特定の通信のみに絞った状況確認もできる。そのため、輻輳や通信の途切れ、想定外の通信などのトラブル発生時に要因の特定作業が迅速かつ容易となる。

 ネットワーク機器の障害やセキュリティインシデントといったアラートの発生個所を画面上に表示することはもちろん、さらに発生個所をドリルダウン操作することで詳細の確認ができる。セキュリティインシデントの監視については、アラクサラ独自の検知技術により、DDoS攻撃や情報漏えいなども速やかに検知が可能になっているという。

 これらの機能により専門的な知識のない運用者でもアラートの発生と原因を迅速に把握できる。ブラウザ上に複数の画面を一括表示できるため、複数のネットワークを同時に確認することも可能で、別のツールを立ち上げるといった面倒な操作の必要はない。録画機能も備えており、過去に遡った確認もできる。

 AX-3D-VIEWERの導入は、ネットワークセンサー装置であるAXSensorを既存のネットワークに追加し、AX-3D-VIEWERをサーバーに導入することで完了する。さらに、AX-Collectorを組み合わせ、AX-3D-VIEWERでネットワークを直観的に把握した後にAX-Collectorで詳細分析を行うことで、一般的なしきい値の監視では検知できないサイレント故障の予兆をいち早く見つけ出すといったことなども可能だ。なお、AX-3D-VIEWER、AX-Sensor、AX-Collectorは、いずれも既存のネットワークに追加するだけで利用でき、現行ネットワークへ影響を与えることはないという。

 AX-3D-VIEWERは、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の開発した「NIRVANA改」を使用し、アラクサラが製品化したもの。通信トラフィックの3D表示機能は2020年7月にリリース済みで、アラートの可視化、Webベースのマルチ画面表示と録画機能は、順次対応予定だ。